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なぜか泥棒に感謝している自分が幸せ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小野勝秋(ライティング・ゼミ)

「あっ、いない!」
いつからいないんだ?
今朝はいたはずなんだが、もしかして気づいていないだけかもしれない。

でも、確かにいつものところにいるはずのヤツがいないのだ。いったい何が起こったのか。
周辺を探し歩いてみたが、見つからない。あきらめて自宅にいた妻に聞いてみたが、妻はいないことさえも知らなかった。

いったいどこへ……。

僕の住むマンションは三階建てで、僕の部屋は三階だ。各階には三世帯、合計九世帯が住める構造になっている。

駐車場はとなりの空き地だ。舗装もされていないし、もちろん屋根もない。オーナーの所有する畑を、駐車場に見えるように変えたものだと思う。その分料金は割安だ。

一階には屋根がついた駐輪場がある。新築の頃の住民の要望だったのか、オーナーの優しさだったのか、駐輪場には屋根がある。だから一応は雨露をしのげる状態になっている。
しかし駐輪場には壁がない。代わりになるフェンスもない。だからいつでも誰でも出入りすることができる。

ヤツはいつもそこにいた。このマンションに越して来た時からずっと、1年365日約12年間、真夏の酷暑の時も、真冬の豪雪の時も、じっとそこにいた。

それがいま、ヤツはいなくなってしまった。なんの挨拶もなく。

僕がヤツとはじめて会ったのは、前のマンションにいた時だから、かれこれ15年くらい前のことだ。あるイベントキャンペーンに応募した僕は、運よく抽選で選出されたのだ。その頃は仕事も遊びもノリノリで、家庭を省みずに夜な夜な繁華街を浮遊していた頃だった。いま一番戻りたくない時代だ。

その当選でいただいたのはヤツではない。見た目はもっと黒が似合いそうなスタイリッシュな感じで、細くて華奢なイメージがあった。ただ、どうやら肉体になんらかの欠陥があったらしく、わずか2か月の付き合いで別れることになってしまった。

そして、その代わりにやって来たのがヤツだったのだ。

見た目はまったく対照的で見るからに骨太な感じ、だけどどこか親しみのある愛嬌を持ったタイプだった。

それからの僕とヤツは出かけるときは、いつも一緒だった。ヤツは雨が苦手だったので、それ以外の休日は必ずどこかに出かけた。近くで買い物をするときも、遠くに遊びに行くときも、夜な夜な遊び呆けていた僕は新たな楽しみを手にいれたのだ。

しかし、そんな楽しかった日々のことを忘れ、いまのマンションに越してからはまったくヤツと出かけなくなってしまった。あんなにいつも一緒だったのに、たった一つ坂が多いという理由でヤツを放置してしまったのだ。

埃にまみれ錆びついて、タイヤの空気は完全に抜けきってしまっている状態で、マンションの自転車置き場でいつも寂しげに佇んでいた僕の自転車。
本当はまた以前のように、遊びに出かけたりしたかったのだけど、ついつい自動車を使ってしまい乗らないようになってしまった。

一か月ほど前に、あまりにも埃まみれだったので、かんたんに掃除してあげて、キレイになったばかりだったのに。返ってそれがいけなかったのかもしれない。

目的はよくわからないが、おそらく泥棒さんに持って行かれてしまったのだろう。

僕がその自転車を入手したときは、本当に滅茶苦茶な生活をしていた。仕事は営業職だったので接待と称して、キャバクラや外国人パブに通い続けた。帰りはいつも会社のタクシーチケットを使った。

親しくなったホステスと休日に遊びに行くこともあった。銀座や浅草にいき、プレゼントを買わされ、何十万円も使ったりした。

そんな生活を続けていれば、当然妻も気づき始め、家の中はいつも冷戦状態の日々だった。
一緒に食事することも減り、会話もなくなり、妻は仕事のため自室に籠もることが多くなった。
妻も僕もそんな生活に疲れていて、一度は僕が家を出てウィークリーマンションで過ごしたことさえもあったほどだ。

そんなとき、アイスクリームの懸賞で当選した自転車で、僕の生活は少し変わり始めることになったのだ。自転車に乗りただひたすら漕いでいると、日頃のストレスは予想以上に解消された。休日はどこまで行けるかチャレンジすることが、とても楽しくて待ちどうしかった。

それと同時にこれまでの生活が、無性に無駄でバカバカしく思えてきた。
無駄に体力とお金を使い、いっ時の快楽のために寝不足をしてまで、なんの価値があったのか。
妻には本当に申し訳ないことをしたと、それはいまでも時々思い出してはそう思う。

それからの僕は、周囲から見るとつまらない男になったように見えてたかもしれない。夜の遊びは全て断り、飲み会の時も2次回には行かずに、電車で帰宅する。
そして休日の、ヤツとの楽しいツーリングを励みに、日中は真面目に仕事する。
そんな普通の生活を取り戻したのだ。
全てそれはヤツとの出会いのおかげだったことを、僕は忘れてしまっていた。

ヤツとの楽しかった日々は、もう取り戻すことはできないが、こうしていなくなってしまったことで、15年前のことを思い出すきっかけになった。あまり思い出したくない記憶ではあるが、その経験の上にいまの僕の人生があることは否定しようがないのだから、これからの人生ヤツに見られて恥ずかしくないように、しっかりと歩んでいきたい。

泥棒さんに、感謝します。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-11-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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