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五十八歳のわたしは、ナンパされ師を目指す、ことにした


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:西部直樹(ライティング・ゼミ)

「すみません、お嬢さん、ここら辺でわたしのペンギンを見かけませんでしたか」
新宿の雑踏の中、可憐な女性に声をかける。
「ええ~」
と彼女は驚くだろう。
ここだ、ここから腕の見せどころだ。
「こんなのですが」とスマホの画像を見せる。
思わず笑い出す女性。
「見かけなかったですか? そうですか、ちょっと探すのを手伝っていただけないですか? 
 ありがとうございます。探すための打ち合わせをしましょうか」
「ええ、え~」
と、まだ若干の戸惑いを残す女性と近くのカフェに入るのだ。

というのを夢想したことがある。
ナンパ師の授業に出たという人の記事を読んだ時のことだ。

わたしはアラ還おじさんだから、ナンパはまずいと思う。
いい年をして、そんなことをしたら、妻に何と言われるか。娘からの視線を思っただけで、恐ろしさに身も竦む。

ただ、ナンパが目的でなくても、人に声をかけるというのは、勇気のいることだ。
おじさんは、時々勇気を出すこともある。
お店に入ると、なかなか来ない店員さんに声をかけるとか。
これはナンパではないのだけれど。

この声かけをかけることは、相手の返答によって、素晴らしい思い出にもなる。
わたしは某書店で、ある人に声をかけたことがある。
初めてのお会いする人である。
気楽に、何気なく。
ナンパが目的ではもちろんなかったけれど、
その人は、後日素敵な文章で応えてくれた。
そんな出会いにもなるのが、声をかけるということだ。

彼女の返答が素晴らしかったので、
それ以来、親交を結ぶことになった。
声をかけるのも、それに応えるのも、工夫のいることなのだ。

声をかけるのは、大変なことだけれど、
声をかけられた側も、なかなか厄介なことだと思う。
返すなら、スマートに、鮮やかに、的確に、爽やかにしてみたいものだ。

例えば、こんな時にも。

夜、人気のない街を歩いていた。
仕事が遅くなり、深夜の食堂に寄った帰りだった。
ただ、街を歩いていた、それだけだった。
男性から、何気ない口調で声をかけられた。
「ああ、済みません、ちょっといいですか」
深夜にナンパか? 
しかもおじさんを男性が?
振り向くと、制服姿の二人の警官が立っていた。
なんだ、ナンパではなく
職質だった。
職務質問だ。

というのは、わたしではなく知り合いのK氏の話である。
K氏は、心優しい男なのだが、いかんせん外見が、どこぞの用心棒も裸足で逃げ出すような感じなのである。
そのような厳つい男性が深夜、人気のないところを徘徊していたら、まあ、声はかけたくなる。というのはわかる。

しかし、職質は、ナンパではない。業務だ。
しかも、職質されても、いい気持ちはしない。
そして、職質されて狼狽えているようでは、職質の続きをされてしまうことになる。
的確、確実に乗り切らなくてはならない。
応え方ひとつで、人生が変わるかもしれないのだ。

ということで、声をかけられても、それなりのスキルが必要なのだ。
ただ、呆然としいてはアラ還の名が廃るというか、情けない。

ナンパ師は、ナンパに成功するためのテクニック、スキル、技術を身に付けて励んでいる。
ならば、声をかけられた側も、それなりのテクニック、スキル、技術を身に付けておいた方がいいように思う。

ナンパじゃないけど、職質に慌てない勇気とか
ささやかな指摘に報いる、素敵な笑顔とか
偶然の出会いの幸いを祝するようなフォローの方法とか

こんなこともあった。

休日の午後だった。
読書会の帰り、JRから地下鉄への乗換駅で、下りの長いエスカレーターに乗っていた。
ぼんやりと下を向いていと、右肩を軽く触れられた。
うしろの人のカバンでも当たったのだろうか?
振り向くと、小学校高学年か中学生の女の子が「リュックのチャック空いていますよ」と小声で教えてくれた。
背負っていたリュックは、ファスナー式で、本を取り出した時に閉め忘れたようだ。
少女が、親切に教えてくれたのだ。
「え、あ、ありがとう」
アラ還のわたしは、なんのことかと戸惑い、開けたまま背負ってしまったことに恥じ入り、小声でしどろもどろに応えるだけだった。少女の親切にきちんと応えることができなかった。

「あ、ありがとう、気がついて声をかけてくれて、おじさんは助かったよ。恥ずかしいし、何か落としたらことだった。お嬢さんありがとう」
と、このくらいのことはいいたかった。
現実は、ぼそぼそと呟き、あたふたとリュックのチャックを閉めるだけだった。

なんだかな。
声をかけられ、うろたえるのは見苦しい。
スマートに対処する、ウィットに富んだひと言を返す、とか。
ナントカできなかったのか。忸怩たる思いがよぎる。

こんなこともあった。

仕事を終えた夕刻。いささか大変な研修で、疲れていた。
JR御茶ノ水駅聖橋改札を出て、千代田線に乗り換える前に、古書店と丸善でも覗いていこうかと、歩き出した時だった。
うしろから「にしべさん!」と声が聞こえてきた。
え、わたしの名前を呼ばれたようだけれど、
ここら辺に知り合いはいないし、
聞き間違えか、
でもわたしの名前だったら、
無視したら申し訳ないし、
と瞬きの間ほどの時間で思いが駆け巡った。

振り返ると、綺麗な女性がいた。

え、どうして綺麗な人がわたしの名前を知っているのだ、
わたしはそれほどに有名なのか、
まさか、って、
○○さんではないか、
なぜ彼女がここにいるのだ、
どう返せばいいのだ、
と瞬きの間ほどの時間で思いが渦巻いた。

「あああ、どうしたの?」
つまらない、工夫も苦心も細工もなにもない、平凡で、面白みのない応答だ。
「仕事場がこの近くで、帰るところだったんです。そうしたら、西部さんがいたから、びっくりして」
彼女は頬を上気させながら話してくれた。
赤みを帯びた頬が美しい。

わたしを見かけたので、思わず声をかけてくれたのだ。
わたしはめんどくさがり屋だから、街中で知人を見つけたら、遠回りして避けたり、スマホを見ているふりをして通り過ぎたりするのに。

「あああ、仕事の帰りで、乗り換えだから、ちょっと古本屋さんと丸善を覗いていこうかなと……」
つまらない、工夫も苦心も細工もない、声をかけてくれた人の配慮もない、愚劣な応えだ。
「西部さん、今度のあのイベントに行きます?」
彼女はわたしのぼんやりした応えに笑顔でうなずき、話をつないでくる。
「ええ、でますよ」
ただ、応えるわたし。
「じゃあ、その時にまた」
彼女は一礼をすると、手を振り改札口に向かっていった。
わたしも一礼をして、手を振る。

知人同士の偶然の出会いだから、これでいいのだろう。
しかし、アラ還の男性としては、いささか情けないではないか。

声をかけてくれたら
「え、びっくりしたなあ、こんな所で会えるなんて、ちょっと嬉しいですね。
帰りですか、わたしもあとは帰るだけ、少しお茶でもしていきませんか?」
くらいのことは言えなかったのか。
忸怩たる思いが残る。
偶然の出会いの喜びを素直に伝えられなかったのか。
知り合いとちょっと出会うのは、嬉しいことだ。
まして、美しい人なのだから、ヒャッホーと思っていたのに!
礼儀として、お茶くらい誘っても良かった。
断られるだろうけど、
「あなたと出会えたのは、望外の喜びです」
ということを伝えることができだろうに。

声をかけられた時、どのように返すのか、その心構え、スキル、テクニックがあれば、
こんな後悔することはなかったはずだ。

今さら、ナンパ師を目指すわけにはいかない。
いいかもしれないけれど、公にはできない。
しかし、その逆は良いのではないか。

声をかけられたら、的確に返す。
どんな声かけにも、確実に返す。
笑顔とウィットで、気の利いたひと言を添えて返す、そのような技術を習得するのだ。

ナンパの逆だから、ナンパされ師とでもいうのだろうか。

ナンパのテクニック、スキル、そしてそれらを身に付けるためには修行が必要だ。
うまく返すためには、立派なナンパされ師になるためには
返しのテクニック、スキル、そして修行が必要だ。

もちろん、ナンパされ師の前途は険しい。
ナンパされ師になるには、問題が多々あるのである。

ナンパ師には、需要はある。
ナンパには動機や目的がある。
そして、成功すれば、素敵な女性と仲良くなれる、という実利がある。

ナンパされ師に、需要はあるのか。
ナンパされ師を目指す動機は?
いやそもそも目的はなんだ?

人生は多難だ。
誰も考えなかったことを、仕事にしようとするのは、難しい。
マーケットイン、需要を読み、需要に応えるのか、
プロダクトアウト、新しいものを生み出し、新しい需要を創出するのか。
需要がないところに、需要を生み出せ。
誰も知らないから、需要が生まれる。と思うのだけれどもね。

誰しも、うまく返したいという思いは、少なからずあると思う、思いたい。

例えば、街角で、こんな風に声をかけられたら、
「こんにちは、済みません、ちょっとお時間ありますか? 私は手相を勉強しているんです、ちょっと手を見せていただけませんか?」と、声をかけられたら、どうする?

「結構です」とか
「間に合っています」
「時間がないので」
なんて返答は、凡庸だ。

「いま、お腹いっぱいですから」とシュールに返すとか
「え、奇遇ですね、わたしも修行中なんです。まずは、あなたの手を見せてください」と逆襲するとか、
「残念ですが、今月は手相を見せてはいけないと、八代前の祖先様からの家訓なのです。ご承知ください」と、生真面目にそして残念そうな顔で返すとか。
これぞ、ナンパされ師の本領発揮ではないか。
ウィットに富んだ返答をするのには、ちょっと練習が必要かもしれない。

あるいは、こんな風に声をかけられたら
「こんにちは、素敵な装いですね。少し、お時間あるかしら、そこで、素晴らしい絵、絵画の展示会をしているんです、ご覧になりません?」

「結構です」とか
「絵には興味がありません」とか
「時間がないので」というのは、あまりに芸が無い。

「今、さっきトンカツを食べたところで、お腹いっぱいなので、今は遠慮しておきます」と、ちょっと斜めから返すとか
「え、奇遇ですね、わたしも絵をやっていて、近くで展示会をしているんです。まずは、わたしの絵を見てもらえますか」と、逆提案するとか
「絵ですか、我が家では絵画は禁忌なのです。話せば長いことながら、なぜ、我が家では絵が禁忌なのか、どんな因縁があるのか、九代前のご先祖様の話から始めますが、聞いてくれますか。九代前は五百十二人のご先祖様がいるのですが、一人一人が……」と恐怖に陥れるとか、
楽しい返答をしたい。
このような返しができてこそナンパされ師だ。
咄嗟にできるようになるためには、ある程度の修行が必要かもしれない。

素敵な返答、返し技を身に付けて、立派なナンパされ師になろう。
ナンパ術の先生はいる。
しかし、
いまだ誰もなったことのない「ナンパされ師」には、先生はいない。
先達も、先輩も、案内人もいない。
わたしがなるしかない。
誰もなったことのないことだから、どうやったら成れるのかもわからない。

さまざまなスキル、テクニックを身に付けるためには、
まずは、修行だ。
経験値を積み重ねていこう。
どこぞの団体みたいだけれど、修練を積まずして、「師」にはなれないだろう。

ということなので、修行のために、わたしを街で見かけたら、声をかけてください。
ついでにお茶とかに誘っていただくと嬉しい。

さて、原稿も書き終えたから、出かけます。
日本で唯一の、ナンパされ師をめざして、声をかけられることを目指して。

※参考にした記事

「ナンパのパーソナルレッスンを受けてみた。」
記事:岸★正龍さま(ライティング・ゼミ)

「5度目の初恋が破れることを確信してこのお手紙を差し上げます。 ジョディ・フォスターではないわたしより。」
記事:安達美和さま(ライティング・ゼミ)

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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2016-11-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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