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あなたは「男はつらいよ」の最終回を知っているか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:遠山 涼(ライティング・ゼミ)

あなたは、どれくらいの激しさで涙を流したことがあるだろうか?

学生の頃、近所のTSUTAYAで借りてきた「男はつらいよ-寅次郎夕焼け小焼け-」を観ていた。
部屋を暗くして、僕はたった一人で涙を流しながら観ていた。
当時の僕にとってはいつものことで、「寅さん」とその周りを取り巻く世界に溢れるやさしさと哀しさに、僕はいつも号泣させられた。
その日も、ぼろぼろと落ちる涙と鼻水を一緒に手で拭いながら観ていた。

しばらくすると、ふと妙な気がした。

涙がぬるぬるする。

映画を途中で中断することはしたくなかったのだが、どんどん、すっごいぬるぬるしてくる。
ティッシュで拭き取ってもぬるぬるが止まらない。なんだか怖くなってきた僕は部屋の電気を点けた。
手の甲が真っ赤だった。横になっていたソファベッドにも赤い血の跡が広範囲に付いている。
僕はいつのまにか鼻水ではなく、鼻血を流していた。
溢れ続ける涙とぐちゃぐちゃに混じって、僕の顔を伝って流れ落ちていたらしい。

鼻血が出るほど僕を泣かせた「男はつらいよ」の主人公である車寅次郎、通称・寅さんは、
やさしいのだが気性が荒く、美人にモテるのだが恋は実らず、定職につかずフラフラしているのに誰よりもまじめに生きている、不器用な男なのである。
そんな寅さんの生き様や周りの人々とのやりとりを見て、僕は憧れ、自分をぴったりと重ねた。

基本的には、「男はつらいよ」シリーズは恋愛映画である。
毎回、マドンナ役でその時代に活躍する旬な女優が出演する。そのマドンナに毎回寅さんは惚れて、その恋がうまくいくのか?? といった問題がストーリーの骨子になるのだが、寅さんの恋は決して報われない。いつもいいとこまで行くのに、その恋は必ず成就しない。家族や友人からのアドバイスを聞かず、自分の中の譲れない気持ちを貫いて、マドンナとの恋から身を引くことを選ぶ。「あの人が幸せならそれでいい」といった気持ちで、寅さんはまた旅に出てしまうのだ。

そんな不器用な男の恋愛観や、相手を想う気持ちに僕は共感し、憧れた。
どんなに悲しい失恋をしても、映画のエンディングでは旅先で青空の下、豪快な笑顔で元気に笑っている寅さんを見ていると、僕自身の不器用さやダメさも全て肯定されるような気持ちになるのだった。

しかし、それはぬるま湯である。

寅さんに憧れるのは、寅さんのような人なんて本当はこの世にいないからだ。
だって定職につかず、ふらふらしながらその日暮らしで全国を旅して生きるなんて、僕にはできない。
あんなに不器用で貧乏でいつも同じ服着ているのに、総勢48名の美人に惚れられるなんてあり得ない。
僕が生きている現代の日本で、寅さんのように生きることは不可能だ。

現実の社会を生きていくためには、少なからず器用さが必要だ。
定職について同じ場所に住み続ける生活の中では、ふらっと気ままに旅に出るのは難しいし、いつも同じ服で貧乏な男はモテない。そんな男が、誰もが振り向くような美人に惚れられるなんてあり得ないだろう。
だからこそ寅さんに憧れ、妹のさくらをはじめ寅さんを取り巻く人々のやさしさに涙を流す。

寅さん的な生き方に挑戦することすら、とても勇気がいることだ。リスクが大きすぎると感じてしまう。
いつまでも寅さんの生き方に憧れていては、僕はきっと幸せにはなれないし、望むものも手に入らない。

だから僕は、寅さんを討つことにした。
いつまでも寅さんの世界のぬるま湯に浸かっていてはいけない。
寅さんを反面教師として捉え、寅さんを乗り越えて、僕はこれまで生きてきた。

来年で社会人歴6年目になる僕は、そろそろ生命保険へ入ろうかと本気で悩んでいる。
実家の両親の老後を心配したり、学生時代から付き合っている恋人との結婚をかなり具体的に考えている。
自分や他人の年収のことが気になり、株式投資を勉強していかに不労所得を増やそうかと考えていたりもする。

「男はつらいよ」シリーズに最終回はない。
1作目から半世紀近くにわたって寅さんを演じ続けた渥美清が亡くなったため、次回作の構想もあったのだが、寅さんシリーズは終わることになった。

もしも「男はつらいよ」に最終回があったなら、それはきっと寅さんが誰かと結婚し、一人の立派な夫として、それまでの寅さんから大きく成長した姿で終わらなければいけないと僕は思う。第一作からの達成すべき目的である「愛する女性との恋の成就」が達成されなければ、全48作も続くシリーズの結末にはならないだろう。
しかし、結果として、そんな寅さんの姿は描かれず、きっと今でも寅さんは、どこかで旅をしているままだ。そしてまたふらっと柴又の実家に帰ってきては、美人に惚れたり惚れられたりして、失恋して、寂し気な背中を丸めながらどこかへ旅に出るのだろう。

描かれることがなかった寅さんの最終回を、僕は手本にして生きなければいけないと思う。
描かれた寅さんはあまりにやさし過ぎる。やさし過ぎて社会人として生きていくには頼りない。
寅さんに憧れていた頃の僕にはできなかったことを、今の僕はしなければいけない。
自分の気持ちを貫くだけでなく、時には自分を曲げ、誰かのために嘘をついたり、納得のいかないこともグッと飲み込んだりする、いわゆる一般的な社会人であり続ける必要があるのだ。

そんなことを思いながら日々生きている僕を見つけたら、寅さんはいつも通りのやさしい呑気な言葉で、僕を励ましてくれるだろうか?

僕は「男はつらいよ」に最終回が無くて、本当によかったと思う。
立派な社会人として生きる寅さんなんて、この世にいなくていいのだ。
その代わりに全ての「寅さん」ファンが、描かれなかった最終回を生きていかなくてはいけない。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-11-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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