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プロフェッショナル・ゼミ

僕は社会人にもかかわらず、土曜日のことが、一生来なければ良いと思うほど嫌いだ。《プロフェッショナル・ゼミ》


記事:稲生雅裕(ライティングゼミ・プロフェッショナル講座)

土曜日が嫌いな社会人なんて、どうかしているかもしれない。
不定休ではなく、平日出勤、週末休暇の仕事についている。
だけど、僕は一週間のうちで土曜日が一番嫌いだ。
その土曜日のせいで、残りの6日間も全部嫌になってくる。
金曜日の夜が憂鬱な社会人なんて、なるつもり全くなかったのに。

僕が土曜日を嫌いな理由、それは、とある本屋さんのせいに他ならない。
書店の名前は、天狼院書店。なんとも大仰な名前の本屋さんだ。
天狼院書店の魅力の一つに、「ゼミ」と呼ばれるシステムがある。
これは、特定のテーマについて、天狼院書店店長の三浦さんや、著名人の方を講師に迎え、個人のスキルを伸ばす場である。「マーケティング」、「法学」、「編集」など様々なテーマがあるが、その中でもとりわけ人気なのが「ライティング・ゼミ」と呼ばれる、その名の通り、ライティングスキルを伸ばすためのゼミだ。もともとプロのライターでもある店主三浦さんの秘伝術を教えてくれるゼミということで、回を重ねるごとに受講者の数が増えているらしい。「人生を変える」という謳い文句も秀逸だ。大学生から、経営者の方まで、さまざまな人がこのゼミを受けにくる。
実は、この「ライティング・ゼミ」には、もう一段階上のプロフェショナルコースが存在する。プロフェショナルコースに入るためには、一定の条件をクリアしなければならない。その条件の1つに、「2時間一本勝負、5,000字ライティング」と呼ばれるものがある。タイトルの通り、2時間で5,000字以上の価値のある文章を書き、それを店主三浦さんがOKと判断した場合のみ、プロフェッショナルコースに進むことができる。そんな過酷な合格条件に加え、お値段も一般公開されている「ライティング・ゼミ」よりも高い。だが、それを持って有り余るほどの魅力的なコースである。

僕はもともと「ライティング・ゼミ」の受講生の一員だった。文章を書くことには多少の自信があったのだが、このゼミでそんな自信は一気に崩されることとなる。とはいえ、開講中の3ヶ月間必死に食らいついてきた。「ライティング・ゼミ」では、1週間に1度、自由テーマで文章を提出し、店主三浦さんからのフィードバックをもらう。OKが出ると、天狼院書店のウェブサイトへの掲載権限を得ることができる。初めの3週間ほどは、コツがつかめずボロボロだったけれど、毎週なんとか書いていくうちに、OKが出る回数も増え、少しづつ新しい確固たる自信も徐々に積み上げられてきた。そんな折にプロフェッショナルコースの話が舞い込んできた。天狼院としても初めての試み。これまで5,000字以上書いたことはなかったけれど、まぁやるだけやってみようと思い、受験してみた。東大を記念受験するような心持ちだった。

テーマがたまたま書きやすいものだったから良かったのか、運よく入試をパスすることができた。思わず、合格のメッセージを二度見、いや三度見した上に保存した程嬉しかった。他のメンバーの方を見ても、これまでに素敵な文章を紡いできた方ばかりで、こんなすごいメンバーと一緒に切磋琢磨できるなんて、最高にワクワクすると、心が躍った。

プロフェッショナルコースの初日、会場は異様な熱気で包まれていた。受講生の誰もが、一つでも多くの技術や知見を手に入れてやろうとしているのが感じ取れた。1時間程の講義の後、入試で書いた誰かの文章を受講生の皆で講評する場が設けられた。アイウエオ順だったのか、保存順がたまたまそうだったのか覚えていないが、選ばれたのは自分の文章だった。高校の頃のちょっと小っ恥ずかしい恋愛の話だった。ここで、店主三浦さんのいたずらが入る。
「稲生さん、演劇部だったんですよね? ちょっと音読してもらえませんか?」
なんたる。自分の恋愛話を音読することになるなんて。告白のシーンとか、割と鮮明に書いたぞ。
そうは思いつつ、高校時代、演目が決まり、初めて渡された台本を読む時の昂りに似た気持ちを感じていた。音読が終わり、受講生の皆さん一人一人からのコメントをいただいた。

「自分は男子校で、共学の青春がわからなかったけど、これは羨ましい」
「男子の気持ちと、女子の気持ちの違いが会話に出てて良い」
「照明の熱さの描写とかが鮮明でわかりやすかったです」

そんな、もったいないくらいの言葉をもらった。店主三浦さんからも「君の名は。みたいな青春小説のようで良かったです」という講評をいただいた。「ありがとうございます」と照れながら言いつつも、悪い気持ちは全くしなかった。むしろ、「俺意外とできるじゃん! 本気でプロになれるんじゃないか!?」と、そんな慢心すら顔を覗かせていた。

ところが、その日積み上げられた自身は、砂場のお山のように、サラサラと簡単に崩れていった。プロフェッショナル・コースの課題は毎週5,000字の文章の提出。負荷が圧倒的に重い。だが、それは自分が選んだ道だ。文句はいえない。問題は別のところにあった。毎週毎週、受講生の方々が圧倒的に面白い文章を提出してくる。最初のうちはピラニアのごとく噛み付いて、良い文章を自分も作り出してやるんだと意気込んでいた。だが、そんな自分を横目に、受講生の方々は、それぞれの代名詞ともいうべくヒット作を生み出していった。すると、自然と月一回の講義の時に、ヒット作の話題が会話の端に登る。

「いや〜、あの”授乳”のやつ最高でした!」
「”てりやき”の話読んで、思わずマックまでいっちゃいましたよ!」
「やっぱり、エロを書かせたらうまいっすねぇ」
「私、Kさんの文章、あたたくて本当に好きです」
「Nさんのコンテンツは、いつもスッと突き抜けてて気持ちいです」

受講生の方々が、自分の得意分野を確立したり、絶賛される文章を生み出す中、僕は一人だけ自分の立場が確立されていないように感じた。周回遅れになっている気分だった。入試の時はあんなに意気揚々としていたのに、書くことは本当にやりたいことでは無いのかも、というネガティブな気持ちすら襲ってきた。他の受講生の方に負けないような、面白い記事、人の心を動かすような記事を書きたいと思って、ノートにネタを書き出して、ABCユニット(天狼院書店で教えている、文章を書くための秘伝の術)を駆使して、構成を考えても、いざパソコンに向かうと、なかなかキーボードを叩く手が進まない。

これは面白い記事なのかな。
この記事は誰かのためになるのかな。
周りの人はすごい記事を書いているのに、自分の記事とかまだまだだ。

そんな思いが出てきて、書くことを踏みとどまらせる。

それ以来毎週土曜日を迎えることが憂鬱でしょうがなくなった。
なんで土曜日なのか。

それは、プロフェッショナル・コースの課題提出日が土曜日だから。
特に、22時以降はパソコンを閉じて、ベッドに潜り込んでしまいたくなる。
ゼミの受講生は、自分の書いた記事を、facebookの特設ページにアップする。つまり、記事が投稿されるたび、パソコンの右上にポップアップがピコンと、表示されるのだ。
自分がしっかりと記事を投稿できていた日々はまだ良かった。一体どんな素敵な文章が上がってくるのだろうかとドキドキしていた。ポップアップが出るたびに、記事を速攻でダウンロードして、「おおおお、やっぱりレベル高いいいい。すごいいいい」と唸りながら記事を読んでいた。それと同時に、自分も頑張らないと!と気持ちが鼓舞されていた。
ところが、プロフェッショナル・コースを受講して2ヶ月が経った頃には、ポップアップが出るたびに、ズギュンと、銃弾を撃ち込まれたような気持ちになるようになっていた。

お願いだから、投稿しないでくれ。これ以上自分を引き離さないでくれ。

そんな卑屈な思いが生まれていた。
そして、普段面白い記事を書かれている方が投稿しないと、胸を撫で下ろしている自分がいた。

良かった。今日はあの人は投稿していない。

お互い切磋琢磨しあい、本気で書くことで食っていこうとしているグループの中ではあるまじき心理状態だった。だが、こんなことを思っているなんて口が裂けても言えない。月に一回のゼミで、受講生の方に会うときは、笑顔を顔に貼り付け、「あの記事感動しました! 僕もあんな文章書けるようになりたいです!」と言っている。本当は、これ以上自分に惨めな思いをさせないでくれと思っているくせに。

毎週土曜日を迎えることが憂鬱になっていくのと反比例するかのように、ワークライフは順調の一途を辿っていた。仕事がどんどんと面白くなり、もっともっと仕事で成果を出したい、面白いことをしていきたい思いが大きくなって言った。小説よりも、ビジネス書を読む時間が増え、仕事柄SEOの勉強(グーグルで検索した時にどうやって自分の作ったコンテンツを上位に表示させるかの戦略)やマーケティングの勉強にも力を入れ始めた。降ってくる仕事は全部引き受け、朝早起きして、夜も比較的遅くまで仕事に費やすようになってきた。帰ってからも、どうやれば今の仕事のクオリティを高めることができるのかノートに戦略を考えたりするようにもなった。

必然的にライティングに割くことのできる時間の割合が減っていった。
頭の中で、そんなことは単なる言い訳であることはわかっていた。受講生の方だって、一週間の大半をライティングに費やしているわけではない。各々の生活があって、仕事もあって、その中で時間を捻出して書いている。5,000字という高いハードルに物怖じせず、毎週しっかりと出している方もいる。

気付いた時には、3週連続で記事を投稿していない現実があった。
気付いた時には、というのはおこがましいかもしれない。結局それは仕事を言い訳にして、自分を正当化しているだけなのだから。言い訳というのは面白いもので、考えれば考えるほどいくらでも出てくる。自分を守るための張りぼての鎧がいくつも量産される。

自分よりも人生経験が長いから、書くことがいっぱいあるんだ。
大学生だから、書くことに費やせる時間が僕とは違うんだ。
自分の得意分野があるから、困ったらそれを軸に書けるんだ。
小説家養成ゼミに通ってるんだから、そりゃあ書くの得意だよ。

そんな風に、自分の都合のいいように現実を捉え始めていた。
それはまるで、ライティングゼミを受講する前の自分に戻ったかのようだった。
嫌なことを周りのせいにして、逃げ続けている自分に逆行していた。
そんな自分が嫌で、ちゃんと世の中の当事者になりたくて、「人生を変える」ライティング・ゼミに飛び込んだのに。

昔からそうだった。
自分が特定の集団でのうまくポジショニングができないと、何かと言い訳を作って、そこでもがくことをせずに、すっと身を引いて観察者の立場に行って、傷つくことを回避しようとする。環境のせい、その人の経験のせいにして、本当の原因から目を背ける。

自分が足掻こうともせずに、頑張ったと自分に言い聞かせ、これでいいやと納得し、立ち止まっているだけに過ぎないのに。自分の都合のいいように物事を解釈するのは簡単だ。僕が書かないことで、誰かが悲しい気持ちになるとか、誰かに迷惑を書けるとかなら問題だが、幸か不幸かそんなことはない。

ライティングは、つまるところ、自分のとの戦いだ。
毎週コンテンツを作り続けるためには、自分の中を深く深く掘り下げないといけない。
どうして楽しいと思ったんだろう、どうして悲しいと思ったんだろう。
あの人と自分の見方が違うのはなんでなんだろう。
周りに目を向けて、世の中とちゃんと関わる当事者になって、小さな変化にも目を向けるように鳥肌総立ちで日々を生きる。

当事者になることは、いろんな感情に敏感にならないといけない。時にはそれが自分にとって苦しいことになるとしても。自分の嫌な部分とも対面して、受け入れないといけない。そうすることで、ちょっとずつ目に見えないゆっくりとした速度で、自分が変わっていく。きっと、受講生の方も、毎週のプレッシャーから逃げようとする自分と対峙して、そいつを倒して、ひねり出して文字を紡いでいる。言い訳をしないで、努力を積み重ねているからこそ、自分の得意分野がわかったり、ヒット作が生み出せたりするのだ。それが、やがて自分の自信へと繋がる。

死ぬ気で毎回挑んでいないのに、自信があったなんて、可笑しいにもほどがある。
だいたい、死ぬ気で挑んでも死にはしないのだ。そして、自分と他人を比べるのも、本当のところ馬鹿馬鹿しい話だ。僕には、僕の1.5倍以上生きている人より知識はない。僕には、妖艶なエロスはまだ描けない。僕はまだ結婚もしていないので親の当事者としての気持ちはわからない。でもその代わり、世の中を斜に構えて捉えて、傷つかない位置から批判しづけて、文句を言い続けていた自分のことなら誰よりも知っている。承認欲求が強くて、上昇志向で、人と比べるのが馬鹿馬鹿しいとわかっていても、レースで一番になりたい自分のことなら誰よりも知っている。周りの人に置いていかれるのが怖くて、もう一度観察者に戻ろうとしていた自分を知っている。捨てることができたら本当は楽になれる自分の一部も、切り離せない自分だと受けいれないと、きっと同じフィールドで戦っている人には追いつけない。

その上で、自分が読者に対して提供できる最上のコンテンツとは一体なんのか自問自答を繰り返す。そうすることで、ようやくお金や時間をかけても良いものが生み出される。

レースはすでに3周分も遅れている。
まだ、土曜日は好きになれそうにない。
でも、立ち止まることはもうやめた。
観客席から腰を上げよう。運転席に乗り込んで、アクセルを踏み込もう。
コースアウトするかもしれないし、ガードレールにぶつかるかもしれない。
けれど、踏み出さないとゴールもしない。

この記事をきっかけに、僕はもう一度スタートを切ろう。そう思うんだ。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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