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女8人の色とりどりの人生模様は、シルエットクイズではわからない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:リコ(ライティングゼミ)

「じゃあリコちゃんは、ちょっとここで待っててね」
そういうと、レイちゃん、アカネちゃん、ショウコちゃんの3人は、大きなイチョウの木の向こう側に行ってしまった。
そのイチョウの木は大人3人を隠せるほどの幅があって、3人はこちら側からは全く見えなかった。
私たちは4年1組の仲良し4人組だ。
いや、正確にいうと、仲良し4人「だった」かもしれない。
ここ1、2週間、どうも様子がおかしい。
3人が何か私に隠し事をしているような気がするのだ。
もっというと、仲間はずれにされている感じがする。
昨日まではそんな気がしただけだった。
でも、今日のは決定的だ。
いくら鈍感な私だって、1人だけちょっと待ってて、なんていわれたらさすがにわかる。
仲間はずれにされている。
去年、3年2組の教室で、1人でお弁当を食べていたサトミちゃんの顔が頭をよぎる。
小学生女子のヒエラルキーで、1度転落した者はなかなかはいあがることができない。
これからどうしたらいいんだろう。
11月の小春日和の公園で、私は泣きそうになっていた。

レイちゃん、アカネちゃん、ショウコちゃんと私の4人は、4年生になったときのクラス替えで同じクラスになった。
元々仲が良かったレイちゃんとショウコちゃんを中心に、私たちは急速に仲良くなった。
当時、クラスでは、仲の良いグループの中で交換日記をするのが流行っていた。
それを見て、私たちも交換日記を始めた。
最初の一冊はみんなでお金を出し合って買った、サンリオのキャラクターのノートだった。
ウサギのキャラクターの表紙のそのノートは、4人の間をぐるぐるまわった。
でも、次第に私たちは1冊のノートがまわってくるのを待てなくなった。
するとレイちゃんがいいことを考えた。
ノートを4冊作ればいいんじゃない?
そこで、私たちは1人1冊お気に入りのノートを準備して、それを週に1度、「交換」することにした。
「交換」の儀式は毎週火曜日のお昼休みに行われた。
火曜日のお昼休み、私たちは空き教室に集まって、アカネちゃん、ショウコちゃん、レイちゃん、私の順に時計回りに輪になった。
輪になった状態で、それぞれが、左隣の人に自分が持って来たノートを渡し、右隣の人からノートを受け取るのだ。
受け取ったノートには、次の火曜日までに、みんなに話したいことを書いてくる。
そしてまた火曜日に、輪になってノートをまわす。
そんな感じで私たちの間を、4冊のノートがまわることになった。
ノートは1か月で4人を1周し、自分の元に自分のノートが返ってきた。
春に始めた交換日記は4人の間を何周もして、4冊のノートは夏が終わるころに同時に終わった。
それは、新しい4冊のノートがまわりはじめたばかりの、秋のことだった。
私は何か変だなと感じていた。
3人で話しているところに、あとから私が行くと、なんどか不自然に話題が変わる感じがするのだ。
なんとなく、「リコちゃんには内緒」の雰囲気を感じた。
なんだろう。何か悪い事したかな。
そんなことを思い始めた、ある週末。
私たちは公園で遊ぶためにイチョウの木の下で待ち合わせをした。
待ち合わせに付いたのは私が1番最後だった。
やはり私が着く前は、3人は何か別の話をしていたようだった。
で、私が着くや否や「ちょっと待ってて」と置き去りにされたのだった。
イチョウの木の向こう側に行った3人は、1分もしないうちに戻ってきた。
手には何かを持っている。
「じゃーん、リコちゃんお誕生日おめでとう!」
みんなが手にもっていたのは私へのプレゼントだった。
そう、次の月曜日は私の誕生日だったのだ。
学校にプレゼントを持っていくと先生にみつかるかもしれないから、3人はわざわざ休みの日に呼び出してくれたのだ。
3人がこそこそ話していたのは、私の誕生日のサプライズのための、打ち合わせだった。
泣きそうになっていた私は、すごく驚いた。
すごく驚いて、あんまりうれしい顔はできなかった。
誕生日に家族以外の人からプレゼントをもらうのは初めてだった。
私は心からそのプレゼントがうれしかった。
以来、私たちは4人のうちの誰かが誕生日を迎えると、プレゼントを渡すようになった。
その習慣は高校生になるまで続いた。
高校生になると、レイちゃんには彼氏ができ、アカネちゃんはバイトを始めた。
全く同じ人生を歩んでいた仲良し4人組の私たちの人生は、少しずつ違う色になっていった。
大学は4人それぞれ、別々のところにいった。
レイちゃんは歯医者さんになるために歯学部に、私は工学部に、ショウコちゃんとアカネちゃんは文系に進んだ。
大学生になると、みんなそれぞれに友達ができ、サークルに入り、バイトをし、彼氏ができ、私たちは少し疎遠になった。
それでも、地方の大学に行ったレイちゃんのところにみんなで泊まりに行ったりすることもあって、私たちの仲は続いていた。
就職すると、私たちはもっと疎遠になった。
少しばかり長く大学にいたレイちゃんと私が社会人になった25歳の夏。
ビアガーデンでビールを酌み交わした後、私たちほとんど連絡をとらなくなった。
あの、意外なニュースが届くときまでは。

私が小さい頃、私の母は、よく女友達をうちに呼んでいた。
来るのは決まって3人だった。
その3人と母は、小学校のころ仲良し4人組だったそうだ。
母と母の友達3人は、よく似ていた。
全員専業主婦であるところも、全員同じ年頃のこどもが2人ずついるところも、判をおしたように一緒だった。
母たち4人はそれぞれこどもを連れて集まった。
だから、母たち4人が集まると、同じ年頃のこどもが8人集まることになった。
私はこどもたち同士で遊びながら、お母さんたちが仲良し4人組に戻るのを見て思っていた。
いつか、私たち仲良し4人組も、あんな風になるのかな。
お母さんになって、こどもを連れて集まるのかな。
しかし、私たちは誰一人として、子どもが2人いる専業主婦にはなっていない。

それは、私たちが最後に集まってから3年たった、28歳の夏だった。
20台半ばで全員が結婚した母たち4人組とは違って、私たちは誰1人として結婚していなかった。
突然、ショウコちゃんからメールがあった。
なんか、よくわからないけど、あかねちゃんが子供産んだらしい。お祝いに行こう。
は?
と私は思った。
こども?
歯医者さんになったレイちゃん、SEになったショウコちゃん、そして私の3人はデパートで待ち合わせをし、アカネちゃんの希望のお祝いを買って、よくわからないままにアカネちゃんの実家に駆けつけた。
久々に訪れたアカネちゃんの実家で、アカネちゃんは生後2ヶ月の赤ちゃんを抱いていた。
話をきくと、一年前まで付き合っていた、彼との間にできた赤ちゃんとのことだった。
別れて、相当たってから、妊娠が発覚したらしい。
アカネちゃんは意外な形で、4人組初の、お母さんになった。
それを機に、私たちはまた、1年に1回くらい集まるようになった。
20年前、私たちの中で1番最初に結婚するのはショウコちゃん、というのが私の予想だった。
ショウコちゃんは色白で優しい性格で、とても綺麗な字で日記をかいた。
私たち4人の中で、1番女性らしかった。
ところが、35歳を超えた今、ショウコちゃんは相変わらず独身だ。
そして、私たち4人の中で一番の働きものであり、大手IT企業でバリバリと管理職の道を歩んでいる。
20年前、小学校4年生の女の子という、同じシルエットをまとっていたはずの私たちは全く違う人生を歩んでいる。
先日、子どもと影絵遊びをした。
スクリーンの向こう側にあるモノの名前を、シルエットで当てるのだ。
ハサミみたいに特徴があるモノの場合、その名前をシルエットから当てるのは簡単だ。
でも想像してほしい。
スクリーンに丸いシルエットが映ったとしよう。
それはなんのシルエットだろう。
ボール?みかん?コップ?おちゃわん?
スクリーンには○にしか映らないけれど、本当は形も違うし、色も違うのだ。
私たちは小学生だったとき、全く同じシルエットの4人だった。
でも本当は、4人の色と形は全然違っていて、20年の間にそのシルエットも全く違うものになった。
そして、同じく20年前、私の母を含むお母さんたち4人組は、全く同じシルエットに見えた。
私の目には、とても幸せな4人に見えた。
そこが幸せな女性の、人生のゴールに見えた。
ところが、20年たった今、その4人のシルエットもまた、全く違うものになった。
1人は還暦を前に劇団員になり、1人はガンと闘っている。
今になって私は思う。
あの4人の女性は一見同じシルエットだったけど、色も形も全然違ったのだ。
たまたま、ある角度から見たときのシルエットが同じだっただけなのだ、と。
ちょっと角度を変えてみれば、きっと、心踊る趣味を追求するシルエットがあったり、地獄を抱えたシルエットがあったりしたのだ。

私たちは人を知るとき、職業とか年齢とか、わかりやすいシルエットを追い求めがちだ。
会社員。システムエンジニア。30台。
うん、なるほど。
その一面で、その人を捉えられた気がしてしまう。
でも、きっと面白いのはそこではない。
人のエピソードを書くことは、その時のその人のシルエットを捉える作業だ。
私はこうして、自分や周りの人について書くことで、その人の一面をスクリーンに映しだしている。
書き始めて初めて見えた、自分の過去のシルエットもある。
文章を書き始めた今、私は人を1つのシルエットではなく、三次元で知ることができる人になりたいと思っている。

今は朝だ。
私は通勤電車の中でこれを書いている。
今日、私がこれから会うのは会社の同じ職場のメンバーだ。
変わり映えのしない、いつものメンバーだ。
でも、話しをするとき、ちょっと違う角度から、いつものメンバーを見てみようと思う。
その角度からは、見たことがない、新しいシルエットが見えるかもしれないから。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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