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自己啓発本沼からの生還記 ーーージョン・キム著『生きているうちに。』を読んで


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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氏名:のんのん(ライティングゼミ)

 皆さんは、沼にはまったことがあるだろうか。

 わたしはある。
 何を隠そう、つい先頃まで、どっぷりはまっていた。

 「自己啓発本」という底なしの沼に……。

 昔から本を読むのが好きで、本屋には足繁く出入りしていたわたしだが、そこに並ぶ自己啓発本の類は、軽い軽蔑の対象だった。あんな胡散臭いものにすがりついて読んでいる時点で、人生終わっているでしょ? と思っていた。

 ところが、3年ほど前、人生にちょっとばかり行き詰まって、一度自分に解禁したが最後、あっという間に底なし沼に引き込まれてしまった。

 気がつくと、どんどん買い漁っていた。
 本屋に行けば、「自己啓発コーナー」に直進していた。

 ストイックにダイエットしてた人ほどリバウンドがひどいとか、まじめな主婦ほどホストにはまるとのめり込むとか、人が長く抑え込んでいたものの逆に振れた時の勢いは、兎角すさまじい。
 重たい古典や小説にではなく、2時間で読めて、先にアンダーラインまで引かれているようなビジネス書に、人生の答えを見つけようとすることを自分に許可した瞬間、一秒でも早く答えが欲しくて欲しくてたまらない欲望が溢れ出し、抑えきれなくなり、飲み込まれ、溺れてしまった。

 本を買うだけで、読むだけで、人生が劇的に変わることなど、あるわけないのだ。わかってはいる。わかってはいるのに買ってしまう。これが最後、これが最後が、延々続く。

 これって、中毒、ってやつです、よね……。はい。

 なにも完全に我を忘れたというわけではない。自分が今、溺れているという自覚はあった。できることなら抜け出したいとも思っていた。その点では冷静だと、自分のことを思っていた。
 それでも抜けられない。いや、抜け出すためのエネルギーを求めて、またいそいそと深みに潜っていった。

 ギャンブルにはまった人は、もう2度と危ない橋を渡らなくても大丈夫くらいの大当たりを求めて、大博打に出る。
 恋愛や不倫にはまった人は、もう2度と泣くことのない、ハッピーエンドを迎えると信じて、最後の恋を探し求める。

 きっとそういうことだろう。

 自己啓発本にはまったわたしは、次の本でこそ人生が変わる、次こそが運命の1冊だと思って本を買い続けた。この情けない毎日から自分を連れ出してくれる、白馬の王子様のような本を、ずっと夢見て追い求めていた。

 
 だけど、どんな本を読んでみても、そうそう現実は変わらない。
 そして悪いことに、一度王子様を夢見てしまったが故に、王子様がいない現実への失望感はより強くなり、まだ見ぬ王子様への恋は、ますます燃え上がる。

 だから、より一層刺激的なタイトルを求めてしまう。魅惑的な内容を求めてしまう。
 「お金も恋愛も思いのまま」とか「3日で変わる」とか、より強力で即効性のあるメソッドを求め、客観的にはより安っぽくより胡散臭い本に魂を奪われてしまう。

 完全なる悪循環。
 自己実現して、キラキラ輝く自分の幻影をチラつかせてくれる本ほど素晴らしい本であり、具体的なノウハウや現実の厳しさを記した「親切な」本ほどゲスだった……。

 ぜんぜん現れない王子様。
 どこまでも深みにはまる底なし沼。

 どうなる、わたし?? 一生、この沼の住人なのか??

 
 しかし、運命の日はあっけなく訪れた。
 ひょんなことから、1冊の本をプレゼントしてもらったのだ。

 『生きているうちに。』。ジョン・キム著。サンマーク出版。

 もし書店でこの本を見かけていても、わたしは手に取っていなかったかもしれない。目を留めることもなかったかもしれない。

 色のない表紙。煽らない帯。ちょっとした落書きのようなイラスト。
 わたしが求めている自己啓発本の範疇に入るものではない。
 
 実際、この本は他のどんな自己啓発書ともまったく違うものだった。

 まず刺激がない。情報がない。盛り上がらない。
 小説でもない、解説書でもない、よくわからない構成。強い主張、心強いリーダーシップのない内容。

 なんだこりゃ。大丈夫かいな??

 
 しかし、最後のページを読み終えたわたしは、間髪入れずに再び表紙をめくっていた。

 そして、2度目に読了した時、ついに自分が泥沼を抜け出たことを知った。
 自分で息が吸える、自分の手足を自分で自由に動かして動き回れる、という感覚を久々に感じていることに気づいたからだ。
 
 年齢も、国籍も、出自も不明なある男性が、ファンタジーな世界の中で、自分探しの旅をする物語。使われている言葉は平易で簡素。抽象的でぼんやりした世界観。

 だからこそ、自分の状況に合わせて好きなように解釈できた。だからこそ、あらゆる場面で、まるで自分が主人公として旅しているように思え、あらゆる文章に、自分が探していた答えのヒントを見つけることができた。

 子どもの頃に読んだ絵本を、大人になって読み返してみると、意外な奥深さがあったことに気づくように、そっけないほどに簡素な文章の向こうに、想像を超える広い世界を感じることができた。

 そう、この、自分で見つけ出す。感じる。というところが、この本が他の自己啓発書とは決定的に違うところなのだ。
 頭にではなく、心を刺激する自己啓発本なのだ。

 一般的な自己啓発本たちは、これでもかというほどに、新しい情報を与えてくれる。手取り足取り、人生を変えるための方法を具体的に伝授してくれる。
 どうやら与えることが豊かさへの第一歩だというのが、成功者たち、つまりは著者たちの共通した見解であるので、それはもうみんながこぞって、競うようにその奥義を実践してくれている。

 それはとてもありがたいことだ。
 それぞれの著者たちは、みんなほんとに大判振る舞いの精神で、出し惜しみなくその叡智を授けてくれているのだと思う。

 でも、与えられ過ぎると、与えられる一方だと、受け手の頭は麻痺してしまう。
 ただ受け入れるだけになり、そして、もっともっと欲しくなってしまう。

 他のどの言葉でもなくその言葉であることに感動しつつ、その言葉の向こう側に広がる世界の広大さに思いを馳せつつ、ニマニマしながら本を読む楽しみを、奪われてしまうのだ。

 沼にはまっている自覚はあったと先ほど書いたが、この楽しみを奪われていたという自覚は、それを取り戻して初めて気づいた。
 衝動的に本を買って、時間やお金を浪費している以上のものを、失っていたらしい。知らないうちに。

 
 この本に出会って、ようやく私はまた、自分で能動的に本を読むことを思い出した。
 同じ自己啓発本でも、ただただ情報のシャワーを浴びるだけではなく、自分で水を汲み上げて、味わって、体に染み込ませる読み方を思い出した。

 こうしてわたしは、自己啓発本の底なし沼から生還した。

 憧れ続けた白馬の王子様が、実はまったくタイプではない、平凡な幼馴染だった的な幕切れ。
 自己実現してキラキラする自分になることで卒業できなかったところは大変口惜しい。

 でも、まあ、よしとしよう。
 また、本を読む楽しみを味わえたのだから。

 生きているうちに、まだ人生がしばらく続きそうなうちに、また戻ってこれたのだから。

 

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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-12-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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