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あいつは運び屋だったのかもしれない。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:しげる(ライティング・ゼミ)

 

「あ! 豚!?」

思わず大声で、そう叫んでいた。

 

確かに、ほんの一瞬僕の左側の視界の下の方に白いブタが見えた。

「え? 何で??」

 

なんでこんなところに豚が?

正直そう思った。

こんな時間に、こんな日に、こんな場所で、普通に考えたらありない事だった。

今までも仕事で九州の山奥や、中国地方の山間部を散々営業車でうろつき回ったけれど、野生の動物、まあ家畜でもいいけれど、とにかく動物に出くわす事はなかった。

 

しかも、ここは福岡だ。もう直ぐ自宅に着くはずだった。

自宅に戻ってから、実家に顔を出す予定だった。

早く行かないと。親戚も集まっているはずだった。

 

なのに今、目の前に豚がいた。いや、いたような気がする。

確かに白かったと思う。絶対にいた。間違いない。

悪い方に間違いなかった。

 

妻と5歳の娘は後部座席で休んでいる。大きな声を出したので目が覚めたかもしれない。

 

一瞬、間が空いて、大きな衝撃がやってきた。

「ドーン!」

 

衝撃のあった車の左側にキラキラしたものが広がった。

飛び散った車の破片が、夜間だったのでヘッドライトに照らされてキラキラと綺麗に輝いたのかもしれない。

もしかしたら轢いてしまった豚の血だったのかもしれない。

 

「キャー!」

 

うしろで妻か娘かが叫んだようだったが、僕は意外に冷静だった。

 

ガクガクと衝撃が来たが、とにかくハンドルはしっかり握っていた。

急ハンドルを切らないように。

幸いハンドルは普通に切れたので、ゆっくりと路肩に寄せる。

左手でハザードランプのスイッチも押した。

 

ここは九州自動車道。高速道路だ。

しかも元旦の夜9時前。

交通量もかなりあったので、他の車が絡む事故にならなかっただけでも不幸中の幸いだった。

もう直ぐインターチェンジだったので速度を落としていたのもあったけれど、うまく車をコントロールできたなと、ちょっと自画自賛してみた。

「グッジョブ! 俺。」

 

 

ロードサービスと高速道路の運営会社(NEXCO西日本)にそれぞれ電話して、事故の処理を待った。

落ち着いていたつもりだったけれど、やはり動揺していたのだろう。

どのように処理を進めたかはあまり覚えていない。

 

事故の処理後に聞いたのだが、奴は豚ではなかった。

1mを超える大きなイノシシだったようだ。

 

「イヤァ、大きかったですよ。」

 

レッカー車のお兄さんがそんな風に言っていた。

衝突してからしばらく止まれずゆっくり走ったし、ここは高速だったので現場には戻らなかった。

そのイノシシは絶命していたらしい。

 

イノシシって料理屋に持ち込んだら、いいお金になるって聞いたことがあったけど。あのイノシシどうなるんだろう。

ぼんやりとそんなことを考えていた。

 

 

その後、少し大変だった。

ちょうど年末に自動車保険の切り替えをしたのだけれど、車両保険を無条件から条件付きに変えてしまっていたのだ。

少しでもと節約のためというか、ほとんど使ったことが無かったので無駄だと思っていた。

 

当然保険が効くと思っていたのだが、道路上の動物は落下物と同じ扱いらしく、車両保険が効かなかった。ようは、修理は自腹だ。

車は大破していた。思っていたよりひどく壊れていた。

とりあえず車屋に預け、正月明けに見積もりを出してもらったものの3桁に届きそうな勢いだった。

 

うちの母がよくこう言っていた。

「保険はやめた時とか、かけてない時に限ってなんか何かあるんよね。」

あとの祭りだった。

 

直接NEXCO西日本にも確認してみた。

電話に出た窓口のおじさんには、やはり自腹で修理してね。っていうかうちは責任ないんだよねって、少し申し訳なさそうな声色を加えながらもきっぱりと断られた。

 

「高速道路って、侵入してくる動物に対しての管理責任ないのかよ?」

 

インターネットなどでいろいろ調べた。

裁判所にも行ってみた。

いろいろ話は聞いてみたが、時間もかかりそうだった。

「お相手も大手企業様ですし。」

暗に無駄だからやめとけって聞こえた。

(もちろんそうは言ってない。そう聞こえただけだ。)

 

道路上で発生するクルマが関係する野生動物の死亡事故を「ロードキル」というらしい。

一般道を含め年間2万件近い「ロードキル」が発生するらしい。

小さな鳥とか、タヌキとかの小動物だったら

「かわいそうなことしたな。」

となんとなく動物の立場に立って思いやれるのだけれど。

 

多大な経済的負担を目の前にして、被害者面モードに入ってしまいそうになっていた。

その後、春くらいまで車は修理から帰ってこなかったし、修理代も全額払った。

 

裁判でNEXCO西日本から修理代の一部でも、と考えたけれど。

でも、それはやめた。後ろ向きの事に時間をかけても勿体無いし、幸い車以外に僕を含め家族には怪我一つなかった。

 

おまけに、思いがけずプレゼントもあった。

 

この事故はちょっと不思議な出来事だった。

イノシシとぶつかる事故があったのは平成20年の元旦だった。

その年は十二支の最初の年、子年(ねずみ)だった。

つまり、前日までは亥年(いのしし)だったのだ。

 

不幸にも僕の車と接触した(いのしし)は、年越しを仕損なって慌てて高速道路を横断していたのかもしれない。

 

もしくは、その年の干支である(ねずみ)に何か引き継ぎの書類を渡すために急いでいたのかもしれない。

 

それとも、僕たち家族に何か用事があって……

 

そういえば、うちの次女はその年の9月29日生まれの子年だ。

もしかしたら、うちの家族に次女の「たましい」を運んできてくれたのだろうか?

 

うちの次女は幸い、いまのところ、とてもガーリーな性格だ。

あの(いのしし)は「たましい」だけの運び屋だったのだろうか?

 

彼女ももう8歳。小学2年生だ。

もう少し様子をみていこう。じつは、猪突猛進な性格かもしれない。(笑)

 

 

 

 

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2016-12-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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