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メディアグランプリ

趣味という沼に沈んで


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記事:サイ・タクマ(ライティング・ゼミ)

 

「よし!! 買っちゃうか!」

「買っちゃおう!!」

先日、人生ではじめてレコードプレイヤーを買った。

かなり思い切って買った。

これまでもレコードプレイヤーへの憧れは強くあったのだが、あえて避けてきた。

今まで踏ん切りがつかなかったのは、僕にとってアナログ盤の世界が「じゃぶじゃぶとハマっていく自分がありありと想像できる底なし沼」に見えるからだ。

 

なにかを遡って辿るのが大好きな僕にとって、大衆音楽は掘れば掘るほど宝が出る鉱脈だ。

名盤と呼ばれる作品にひとたび感動してしまうと、そのミュージシャンのデビュー作は、とか、影響を受けた/与えたのがこの人で、だとか、プロデューサーが同時代に手掛けた別のグループの作品が、とか、信頼できるレーベルの、とか、ここで絶妙なソロプレイをしているミュージシャンのリーダー作、みたいにしてドンドン深みにハマっていく。

人間がハマるあまたの領域で同じことが言えると思うが、おそろしいことにゲージュツはどれだけ掘り下げても終わりがない。

知れば知るほど、自分が知らないことに気づく。

そういった体験をしている方は僕だけではないはずだ。

学生時代に一番お金を費やしたのはおそらくCDで、所有しているCDの数は数えたことがないけれど、数えるとちょっとキリがない枚数まで来ている。

これがアナログにまで手を出してしまったら、どうなってしまうのか。

思い浮かべたときに「いやあ、どうなっちまうんだろうなァ~」と頬に手をやりながらニヤつくのだから始末が悪い。

 

先日、実家を掃除していると、父と母が集めていたLPが段ボール1箱分見つかった。

1枚1枚めくっていると中には「おお! 名盤!」と声が出るようなものもあり、わが親ながら粋なチョイスが結構見つかったので、俄然聞きたくなってしまった。

 

買うまでは相当もじもじしたのに、買ってしまうと足取りが軽くなるくらい強烈に嬉しくなって、子供みたいに浮かれた気持ちでセッティングを行なった。

盤をセットして針が落とされるまでの緊張と胸の高鳴りは、久しく味わったことのない、実にワクワクに満ちたものだった。

ジョニ・ミッチェル自身の手による少女の横顔と植物が描かれた極彩色のレコードジャケット。

彼女のファーストアルバムらしい。聞いたことがなかった。

 

針が落ちると、うるおいに満ちたアコースティックギターの爪弾きと耳通りのよい歌声が聞こえてきた。一気に部屋の空気が変わった、と思った。

思わず目を閉じて聞き入ってしまったし、声にならない溜息が漏れた。

うまい肉の塊を頬張ったとき、その旨みに陶酔して目を閉じてしまうのと同じだ。

おいしいものを食べているときの恍惚とした体験に通じるものを、アナログレコードの鑑賞から感じた。

 

人はなにかに感じ入り、ウットリするとき、なぜ目を閉じてしまうのだろう。

きっとこれは、「味わう」という行為についてくるものだと思う。

CDで聞いたことのある音源でも比べてみたけれど、アナログで聞く音楽は伸びやかさがあって、まるで今そこでミュージシャンが演奏しているような、音楽を身体で感じる感覚が強くなった。

なるほどテイスト、とは言い得たものだ。

料理も芸術も、僕たちはテイストしているわけだ。

レコードジャケットの質感、手触りもまた様々で、その大きさが絵を鑑賞するときの目の動きと近くなるし、なんだかレコードの匂いも独特だ。

そんなところも身体的感覚に訴えかけてくるものがある。

 

両親のLPコレクションには、今まで自分が手を出してこなかった歌手やジャンルのものがあったけれど、CDなら聞いてみようとも思わないものも、なぜかLPなら「ちょっと聞いてみたい」と思えるのが不思議だ。

適度な時代の隔たりが些細なことでも新鮮に映って、好奇心をそそられるのかもしれない。

音楽のストリーミングサービスによって、これまで以上に音楽にアクセスしやすくなったし、再生ボタンへの抵抗は限りなく低くなった。

たしかにストリーミングもいいけれど……、というような言い方を僕はしたくない。

ついついデジタルとアナログを比べて優劣を決めたくなるけれど、そうではないと思う。

僕たちの時代は、両方の恩恵を受けられる時代だ。

両方の恩恵を受けられること、そのこと自体が素敵だ。

素晴らしいミュージシャンの演奏を録音していつでも聞ける夢のような装置。

そんな夢みたいな装置を夢見た人たちが具現化させてきた、その努力と成果の賜物だからだ。

デジタルとアナログの両方を使い分けるのも、きっと楽しい。

 

データでない記録媒体の利点は、状態次第でモノとして残り続けることだろう。

広島の祖母の家で発掘したっきり行き場のなかったEPがあることを思い出し、再生してみた。

「ババン・バ・バン・バン・バン♪」ザ・ドリフターズのビバノンロックが僕は大好きだ。

「入試問題・英語」と書かれた真っ赤なソノシートもあって、アナウンサーの声が時代を感じさせた。

レコードプレイヤーが家庭で活躍していたころの昭和の暮らし、アナログ盤の向こう側の、父母の少年時代に思いを馳せる。今はもういない爺ちゃん婆ちゃんも、そこでは若い男女の姿だ。

口には出さないけれど、こんな風に、双方向じゃない、一方通行のコミュニケーションの仕方もあるのだ。

こうして僕はレコード沼の1丁目に足を踏み入れてしまった。

3丁目で夕陽を見るころには、後ろでいくつの山が積み重なっているのやら……

 
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2016-12-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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