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メディアグランプリ

社会からはみ出した「壊れもの」たちの強さを知ったとき


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:菊地功祐(ライティング・ゼミ)

「お前は本当に何の特徴もないな」

毎日のように上司のディレクターに言われていた言葉だ。
私は「……はい、そうですね」と笑ってごまかしていた。

私は前職でテレビ番組制作会社に勤めていた。

そのときに、何度も上司に言われていた言葉が
「お前って何のキャラもない!」
だった。

テレビ業界は今も昔も過酷だ。
私が勤めていた時は、平気で一月以上休みがなかったりした。
忙しい時だと、1日の平均睡眠時間が約30分だ。

朝の4時30分までロケテープの取り込みをして、30分だけ仮眠をとり、
朝の6時にはまた新しいロケに出発する。
そんな毎日を送っていた。

働いていた時、私はヘロヘロだった。
同期はあっという間に辞めていった。

むしろ上司たちもこの業界の過酷さを嫌というほど知っているので、
辞めて当然という雰囲気はちょっとあったと思う。

そんな中でも、楽しそうに働いている同期の女の子がいた。

私はその女の子と同じ番組でアシスタントディレクターをやっていたが、
とにかく彼女の仕事の早さに驚いた。

何を言われても「はい!」と元気に答えて、テキパキと仕事をこなしていくのだ。
上司からもとても好かれていた。

あの子は将来、大物になるかもしれないと周囲から言われていた。
何をやっても仕事ができるのだ。
それに比べて、同じ番組スタッフだった私は、とにかく仕事ができなかった。
というか、何をやっても彼女と比べられ、劣等感を抱えていて、
仕事に全くやる気が起きなかったのだ。

「ふざけんな!」
と深夜、何度も上司に怒鳴られた。
働いていた当時の私は、深刻な睡眠不足で、常にめまいがしていたので、
上司が私に怒鳴っていても、全く頭に入ってこなかった。

正直、私より彼女の方が仕事できるんだから、彼女に仕事を振った方がいいじゃん! と心の底で思っていた。

過酷なスケジュールでロケが進み、土日などほとんど休みがなかった。
数週間ぶりに休みが取れる〜と思っていたら、昼過ぎに
「今すぐ、会社に来い!」

と電話で呼び出されるのも、当たり前のようにあった。

しかし、同期の彼女はとにかく周囲から期待され、仕事を任されていた。
それと同時に私は会社の隅に追いやられていった。

彼女が仕事を任されていた理由。
それは彼女自身、仕事が早いのもあるが、何よりも自分の「キャラ」を持っていたことが大きかったと思う。

テレビ業界は、その人の「キャラ」っていうものを大切にする。

「キャラ」が濃い人ほど生き残っているのだ。
会議の時でも、とにかく何でもいいから目立つ発言をする人。
周囲を笑わせてくれる人。

この人はこういう奴だなと思わせるような濃い「キャラ」を持った人が重宝される世界だ。
だから先輩にもよく
「お前はキャラが無いから悪いんだ。何かキャラを作れ」
と言われていた。

自分の「キャラ」って一体なんだんだ?

自分の特徴って一体何なんだ?

思い起こせば、私は中学の時から、何の特徴が無い自分に嫌気がさしていて、
軽く鬱になったりした時もあった。

特徴がないということが、私の特徴だった。

私は人見知りをする方で、クラスに馴染むのにも苦労した。
いつも教室の隅っこにいるような生徒だった。
学校の中に存在するカーストの中でも明らか最下層だ。
クラスの中で目立つような存在の人が羨ましかった。

しかし、私は心の底では
こいつらをいつか見返してやるという! と思っていた。

何も行動をしてないのにもかかわらず、どこか上から目線で周囲をバカにしている自分がいた。

そんな自分に気づいて、なおさら自分が嫌いになった。

限界だった。

大学では、何も持ってない自分に嫌気がさして、自主映画の世界に飛び込んだ。
浴びるように映画を見て、人一倍映画について勉強したら、何者かになれると思ったのだ。

年間350本は映画を見ていたと思う。
映画はもちろん好きだったが、それ以上に
どこか、「自分は他の人とは違う」と言われたかったのだ。
「君は他の人とは違う特別な才能を持っている」
と言われたかったのだ。
何の特徴がない自分が嫌で、もがいて、もがき苦しんでいた。

結局、縁があってテレビの世界に飛び込んだが、そこでも
「君は何の特徴がない!」
と言われた。

「何にもキャラがない」と言われても、自分の「キャラ」って一体なんなんだ?
自分は何者なんだよと思っていた。
結局、度重なる睡眠不足とストレスで私は頭がおかしくなっていたと思う。
ある日、気づいたら仕事を辞めることになっていた。

「あれ? 俺会社辞めるの?」
と思った。

辞めると言った記憶がないのだ。
気づいたら、周囲にそう言われていて、辞めることになったんだということに気づいたのだ。

上司に「辞めます」と言った記憶がないほど、私は精神的におかしくなっていたのだと思う。

結局、2ヶ月足らずで会社を辞めてしまった。

仕事を辞める最終日、最後の編集に立ち会い、上司とタクシーに乗って会社へと向かった。

今日さえ乗り切れば、自由だ。
そう思って、苦手だった上司とタクシーを共にした。

いつも怒鳴り散らしていた上司は唐突に私に声をかけてくる。

「お前、会社辞めるんだってな」

「……はい」

「若いうちは遊ぶのが一番だ! 俺なんて30歳まで遊び暮らしてたからな」

その上司はテレビ業界に入ったのが30歳の時だったという。
私はそのことを知って驚いた。
明らかに20代からバリバリテレビの世界で働いている雰囲気を醸し出していたからだ。
「俺が20代の頃は、いろんなバカなことをやって、人に迷惑をかけっぱなしだった。30歳までずっとブラブラほっつき歩いていた。
お前も何度、失敗しても大丈夫だ。きっとテレビの世界に入るのが早かっただけだ」

タクシーの中で、上司はそう言っていた。

私の上司が「お前は何の特徴もない!」「キャラを作れ!」
と怒鳴り散らしていた理由が、今ならわかる。
私に会社での居場所を作ってあげようとしてくれていたのだ。
怒鳴り散らしていたのも、私に向けての愛情だったのだ。

そのことに気づいた時、私は激しく後悔した。

こんなにいい人たちに囲まれて仕事をしていたのに、自分は何をやってたんだ!
何のやる気も見せず、ただ突っ立ってるだけで、一生懸命にテレビを作ってる人たちに申し訳なく思った。

自分の「弱さ」を知って、情けなくなったのだ。

結局、私は会社を辞めてしまった。
たった2ヶ月だ。
2ヶ月で仕事の何がわかると多くの人が思うかもしれない。

その通りだと思う。
汗水垂らして、寝る間を惜しんでテレビを作っている大勢の人たちに申し訳なくなった。
2ヶ月で会社を辞めて人間なんて、この社会で生きる価値がないように思えて仕方がなかった。
仕事を辞めてから2週間ぐらい、家から動けなくなった。
今まで、死ぬほど働いていたせいで、仕事を辞めた次の日から、何をしたらいいかわからなくなってしまったのだ。

大学の同級生は仕事の悪口を言いながらも、毎日、文句も言わず会社に通っていた。
月に2回ぐらい集まって仕事の悪口を言いながらも、ストレスを発散している同級生の姿がツイッターで流れてきた。

そんな姿を見て、心のそこから羨ましく思えた。

みんな、文句も言わずに会社に通っていて、自分は一体何をやっているんだ?
と思った。
毎日、やることものなく、ボ〜と天井を見上げるだけだ。

そんな日々を過ごしている時に、あるライターの記事と出会った。
もともと、そのライターが書く文書が好きで、SNSで更新されたブログなどは、隙間時間に読んでいた。

どこか自分の腹に抱えた劣等感やエロチックな部分を、
残酷なまでに生々しい人間の感情を、文章に落とし込んでいく人で、
本当に文才があってすごい人だなと思っていた。

その方も20代の前半は悩み、苦しんでいたという。
世界一周をして、大手の会社にインターンも受け、最強のエントリーシートを持って、就活に挑むも惨敗。

結局、無内定のまま大学を卒業した。
2年近くアルバイトなどをして世の中をさまよったらしい。

仕事をしては、クビになり、
「なんで私は何もできないのか?」

「自分はこんなにも弱い存在なのか?」
と私のようにもがき苦しんでいたという。
そんな時に出会ったのが、知の巨人と呼ばれる編集者が書いた、ある本だった。
世界中にある人間の「弱さ」についてまとめた思想的な本だ。

私はそのライターが書いた本の紹介文のある部分が気になった。

ある部分が、とてもとても気になったのだ。

その部分とは……
「強さ一色で塗りつぶした社会の何が面白いんだ!」
私はその文を読んだ時、ハッとした。
涙が溢れてきた。
自分の「弱さ」を隠して生きてきた自分が情けなくなった。

自分が抱え込んでいる「弱さ」と戦って、今ライターとして活躍している人がここにいると思った。

数人の「強者」が「弱者」の上に立つ社会だ。
その中でも、自分の弱さを抱えながら、もがき苦しみながら文章を書いている人がいるのだ。

私はそのライターに影響を与えたという本を読んでみた。

結構厚い本だったが、面白い。
実に面白いのだ。
心が洗われるかのように透き通った文章だった。
この本の著者はなんて優しい人なんだろうと思った。

自分の中に弱点や弱さを抱え込んでいる人は、新たな強さに変わる契機にもなりうることを文章で書かれてあった。
弱さを抱え込んだ人に、真摯になって寄り添ってくれる本だった。

私は涙した。

たった2ヶ月で社会人をドロップアウトして、劣等感を抱えていたが、
気持ちが楽になった。

自分の中にある「弱さ」こそ、「強さ」に変わる契機になる。
その一節が私の心にぐさっと突き刺さったのだ。

そこから心を入れ替えて、転職活動をして、多くの企業を受けた。
ま〜、案の定、社会人をわずか2ヶ月でドロップアウトした人間を雇ってくれる会社はなかなか見つからない。

新卒の時は、会社の面接官をどこか柔らかい口調で面接をしていたのに、
転職となると一変して、強い口調になる。

「なんであなたは会社を辞めたんですか?」

「あなたは何ができるんですか?」

なんどもくじけそうになっても私は黙って耐えた。

辛い時は、あのライターが書いた記事を読んだ。

「強さ一色で塗りつぶした社会の何が面白いんだ!」
という一節を何度も読んだ。

なんとか転職活動を乗り越えて、4月から働けるようになった。
そんな時、ひょんなことから天狼院と出会い、私は今ライティング・ゼミに通っている。

毎週、月曜日の締め切りに記事を書いては、もがいているのだが、自分の記事を見直してみると、ある部分が気になった。

その部分とは……
自分の弱さをさらけ出してある文章だ。

締め切りに追われて、ネタがなくて、もがいてた時に
「もうどうにでもなれ!」
と思って自分が抱えていた弱さを文章に書いてしまった日があったのだ。
正直、恥ずかしかった。
こんな文章を誰も読まないと思っていた。

しかし、年末に行われた天狼院の忘年会に出席した時に、驚いた。
なんと私のその記事を読んでいてくれた人がいたのだ。

「あの記事読みましたよ」
「この記事感動しました」

と言ってくれる人がいたのだ。

自分みたいな人間が書いた文章なのに、ちょっとでも読んでくれていた人がいたとは……

ありがたいと思った。
とても、とてもありがたいと思った。

ちょっとでも、自分の文章に時を費やしてくれたことがすごく嬉しく思えた。
自分みたいな怠け者は人一倍努力しなきゃダメだ! と思い、
私は今、「メディアグランプリ」や「ふるさとグランプリ」だけでなく、
「リーディング・ハイ」の方にも記事を投稿している。

記事を見る川代さんの容赦ないコメントに怯えながら、必死に記事を書く毎日だ。
会社に勤めながら週に5000字の文章を書いているプロフェッショナルコースの人たちの記事を見ていたら、自分みたいな4月までフリーターのプー太郎の奴が、週に2000字の記事を書いてヒーヒー言っているのが情けなくなってしまったのだ。
会社勤めしながらきちんと5000字書く人に比べたら自分なんて……
だから、倍の量を書かなければと思い、週に3回の締め切りを設けることにした。
自分で決めたルールだ。

「お前は一体何がしたいの?」

と言われたら、正直自分にもよくわからない。
プロのライターになりたい!
小説家になりたい!

と大きな夢を語るほどのものを私は持っていない。
その道のプロになれる自信もない。
自分も一体何がしたのか正直、まだわからない。
そのことが不安で不安で仕方がない。

もう24にもなって不安で不安で仕方がないのだ。
だけど、昔の自分のように、世の中にどこか生きづらさを抱える人に寄り添うような文章を書きたいと思っている。
あの無内定のまま、大学を卒業して、もがき苦しみながらも自分の道を見つけたライターのように、自分の考えていることをきちんと文章にして、書く技術を身に付けたいのだ。

昔の自分のように生きづらさを抱え、人目を怖がって自分の世界に閉じこもっている人たちに、「外の世界もそんなに悪くないよ」と伝えたいのだ。

私は天狼院の三浦さんや川代さんのように、多くの人を魅了する文章を書く
技術やセンスを持っていない。

だけど、自分にしか書けないものがきっとあるはずと信じて、
今日も私はライティングに励んでいる。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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2017-01-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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