メディアグランプリ

失恋は鏡のように


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記事:城裕介(ライティングゼミ)

「あなたが僕のことをどう思っていたとしても関係ない。僕はちぃちゃんを一生愛します」

あの日僕はそう口にした。でもあとで知ることになる。自分が発したその言葉の軽さを。結局僕は自分のことだけしか考えていなかったことを。

おかしくなったのは僕が転職活動を始めたときだった。連絡して会う約束を取り付けようとしても断られることが増えた。ラインの会話自体もなんだかよそよそしくなった。僕は最初何故なのか理由がわからなかった。

同じ職場で出会った彼女は、自我の強く理想を見ようとしている姿をみている人だった。その気持ちと嫌われたくないという気持ちが同じくらいかち合っていて、自分の中でいつも葛藤しているように見えた。その姿に心惹かれた。だから僕はあなたにとって心をさらけ出せる場所になれればいいなと思った。

大事にしているものが僕と近いものがあるって思った。僕も自分の想いを伝えるのが苦手で、でも寂しがりで理解してほしいと思っていたから。そして自分のやりたいことを模索して葛藤していたから。そこまで思って好きなんだと思う自分に気づいた。そこから付き合うまで時間はかからなかった。

少しずつだけど、付き合って半年かけて順調に関係を築けていると思っていた。でもそれは僕だけが思っていて、ちぃちゃんにとってはそうじゃなかったのかな。そうこう迷ううちに彼女の誕生日が近づいていた。

どうするか迷いながら、ネックレスを買った。彼女がネットで見ていいなと言っていたものだ。転職したばっかりで決してお金に余裕はない。でも喜ぶ顔が見たかった。喜んでくれると思いたかった。

現実は思うようにいかなかった。結局予定は調整できず誕生日の真夜中、どこも開いていなかったのでコンビニで落ち合って、僕は誕生日プレゼントを渡した。

「受け取れないよ」と彼女は言った。

笑顔は返ってこなかった。返ってきたのは戸惑いの表情だった。ああ、やっぱりなと思った。

「これは僕の気持ちだから受け取ってほしい。使いたくなかったら捨ててもらってもいいから」

かろうじてそう返した。やっぱり距離は開いていたのか。いつの間にこんなに離れてしまったんだろう。

じゃあ僕はどうしたいんだろう。

そして別れ話は向こうから来た。

「ゆうくんのことを今は友達としては見れても男性として見れない」

どうするか僕は自分の中でずっと考えていた言葉を口にした。

「だから付き合えないのなら友達としてで構わないから会いたい」

「あなたが僕のことをどう思っていたとしても関係ない。僕はちぃちゃんを一生愛します」

そこから少しラインでのやり取りをするようになった。以前のように恋人としてのやり取りはなくなってしまったし、会えなくなったけど、それでもいいと思っていた。

でもそんな日はあっけなく終わりを告げた。

SNSはときに知りたくない情報を無慈悲に持ってくる。別れて半年して彼女が結婚するということを知った。開かなければよかったと思ってももう遅い。彼女からはそんな話も結婚するという報告も聞かなかった。認めたくない。そう自分の思考をグルグルしていたけれど、事実は変わらなかった。

そして今動揺していることは、本来ありえないことだった。どうあっても愛するって言ったじゃないか。でも違ったんだと気づいた。僕は彼女を愛したかったんじゃない。彼女に愛されたかったんだ。

だから彼女にとって必要とされる存在であるはずだと信じたかった。自分が悩んで悩んで出したあの言葉は実はこんなに簡単に砕けてしまうとは想像もしていなかった。いつか戻ってくるって自分自身に信じ込もうとしていただけだった。

そして、彼女は僕を愛することは出来ないことに気づいていた。僕はいつの間にか彼氏でも元彼ですらなく、嫌われたくないその他大勢の一人として当たり障りなくやり過ごされる存在になっていた。

いつからこうなってしまったんだろう。初めから分かれていたのか、徐々に分かれていったのか。わからないけど、それが明らかになることはもう永遠にない。

結婚式でよく聞く言葉が耳を掠める。

「病めるときも、健やかなるときも愛をもって生涯支えあうことを誓いますか?」

何があっても愛するって簡単じゃない。それを誓うってものすごく難しい。本当に簡単に口に出せる言葉じゃない。そんな事実を突き付けられた。

正直祝うことは難しいけど、彼女には幸せでいてほしいと思った。そうであったほうが、あの日の想いが報われる気がするから。憎いという気持ちは湧いてこなかった。憎めばあの日に発した自分の気持ちまで嘘だと認めてしまう。言葉だけは撤回しても、そのときの自分の気持ちまで撤回したくなかった。

「結局今の僕は自分の幸せしか願えないんじゃんか」と苦笑した。それはもう相手から見透かされて当然だろうなと思った。

胸の痛みは簡単には消えそうにない。愛するなんて簡単に口には出来ないけれど、次に口にするときは2度と撤回しないでいれる自分でいたいと、一人部屋の中でそう誓った。

***

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2017-01-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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