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ふるさとグランプリ

青春はいつでも取り戻すことができる《ふるさとグランプリ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:よめぞう(ライティング・ゼミ)

「もしいつか機会があるなら、今度は楽しくやりたいな」

って、泣きながらケースを閉じたことは、一生忘れないと思う。

中学校、高校と私は青春と呼ばれる時期を全て吹奏楽に費やした。特に、高校は「私立なら絶対にここしか受けないから」と親を説得してまで、全国大会の常連校として地元でも有名な学校へ通わせてもらっていた。

だけど……やはり全国常連校。

現実はやっぱり甘くないっていうか、厳しいっていうか、もう高校の時の記憶はほとんどない。コースの特色で「強化部」になっていたから、多分世間でいう「朝課外」とかの時間から楽器を吹いて、放課後はダッシュで部室まで行き夜遅くまで楽器を吹いて、夏休みとかの長期休みは盆と正月以外、ほぼ毎日朝から晩まで楽器を吹くというすごく贅沢な学生生活を送っていた。

入学した当初は、中学時代からやっていたサックスをしていた。
強豪校ならではなんだろうけど、県外から特待生も当たり前にくる学校だったので、とにかく周りのレベルが高かった。先輩たちはもちろん、同級生は「本当に同級生ですか?」って聞きたくなるくらい、大人顔負けの子なんかがわんさかいた。特にサックスは人数がすでに多かったから、入学して間もない頃から指揮の先生に

「メンバーにはなれないから、違う楽器やらない?」

「クラリネットならすぐにメンバーになれるよ」

と度々言われていた。そりゃあメンバーには憧れてたけど、やりたい楽器を諦めてまでやるものなのかな。下心丸出しの気持ちでクラリネット吹いたら、元々やってる人に失礼じゃないのかな。とか思うこともあったけど、やっぱりそう言われることがとにかく悔しくてがむしゃらにサックスにしがみついていた。

けれど、いよいよ自分たちの代に変わる時にクラリネットの同級生から

「今から頑張れば、みんなで全国立てるよ!」

って話をもらって、私はクラリネットに楽器を変わる決意をした。もちろん、先生からは

「早く変わってたらよかったのに……」

とは言われたけど、もちろん好きで変わったわけじゃない。 同級生に説得されてなかったらメンバーとか関係なくサックスを吹いていたと思う。ただ、話を聞いた時同じ同級生にも関わらず、自分がものすごく小さい人間だと思い知らされた。私はただ、自分の事だけでつまらない意地を張ってたのに、同級生は周りのことも考えながら行動できてたんだと思うと本当に惨めになった。

だから、最後にサックスのケースを閉じた時のことは一生忘れないと思う。

それからは、1年しか時間がないからクラリネットをそれは必死に練習した。
少しでも、みんなに近づきたい。 足を引っ張りたくないの一心だったように思う。

毎日がとにかく不安で、これでいいんだろうかの連続だった。
楽器もままならないのにメンバーになっていいのかな。私ここにいていいのかな。
おまけに友人付き合いでうまくいってなかったのもあって気持ちは相当滅入ってたと思う。

もう、この1年間は特に楽器を吹いた記憶がほとんどない。

そんな私が一つだけ記憶に残っているのが、演奏会のたびに食べていたお弁当だ。
それが商品名なのかも知らないけど「とりめし」と呼ばれるものだった。ご飯の上に、唐揚げを一口サイズにカットしたものが乗っていて甘辛いタレがかかっていたガッツリ系のお弁当だった、と思う。というのも流し込むように食べていたから味すらもほとんど覚えていなかった。

必ず弁当を食べる際は、楽器のパートごとに集まって食べるようになっていてその時だけは日頃の緊張感から少しだけ、解放されたような気持ちになった。別に何か特別なことではなかったと思うけど、私はその時間が好きだった。とにかく気持ちが滅入ることが多かった上に、楽器に対するコンプレックスも酷かったからいつもどこかで

「ここにいていいのかな」

という根拠のない不安はいつもつきまとっていた。だから、本番前のこの時間だけは少しだけでも前向きになれたし

「ここにいてもいいんだよ」

って言われたわけでもないけど、そう言われたような気さえした。
「とりめし」と一緒に本番前の緊張や日頃の不安を飲み込んで、お茶と一緒に流し込む。それを腹の中で消化して

「よし、やるぞ」

と本番に臨んでいたから、毎回本番ではあまり緊張はしなかった。
私にとって「とりめし」は栄養ドリンクみたいなものだったのかもしれない。だから、たまに「とりめし」じゃない時があると結構辛かった。

なんとか、努力も実を結んで全国大会では金賞という栄誉ももらえて私の青春ははたから見れば輝かしいものになった。 けれど、私の中では不完全燃焼だった。

「楽しく、気ままに楽器が吹きたい」

という思いが残っていたので、卒業後の進路も吹奏楽を続ければ「良い大学」に行けるからそっちに……っていう担任の話に一切魅力を感じず、やりたいことが出来る家から通えるところに通った。大学ではバイトに明け暮れて一切楽器に触れなかったけど、日に日に

「楽器吹きたい」

っていう気持ちがどんどん膨らんでいった。

そして今、私は当時の先輩たちや大先輩たちと吹奏楽をしている。もちろん、やりたかったサックスだ。思い切ってマイ楽器まで購入してしまった。なかなか仕事で行けなかったり、子供ができてからは子連れでたまにしか行けなかったりと、昔じゃ考えられないくらいの頻度で楽器を吹いているけど、昔じゃ考えられないくらい楽しんで楽器を吹いていると思う。 一緒にやっている人たちの懐の暖かさに

「あぁ、ここにいていいんだ」

って思えるくらい居心地の良さを感じている。
今、青春時代のやり残しを清算しているような気がする。

そういえば「とりめし」食べてないな。
今度買いに行ってみよう。 味わって食べてみたことなかったもんなぁ。

***

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