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大嫌いな母親とそっくり同じことをして、私は大切な人を失った


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記事 : 鼓星(ライティング・ゼミ)
 
大学に進学しようと心に決めたのは小学校4年生の時だった。
成績は中の中ぐらい。勉強が好きだったわけでもなければ、学校の先生になりたいとか、薬剤師になりたいとか具体的な夢があったわけでもない。
ただ、女が結婚しないで生きて行くためには、学歴があった方が良いだろうと、子どもなりに考えていた。1970年代、多様性とかダイバーシティなどという概念はなく、まだ、女は結婚して子どもを生むのが当たり前と考えられていた時代だった。

でも、私には、どうしても子どもがいる人生を想像できなかった。というよりも、私は母のような人生を歩みたくなかったのだ。

当時としては一般的なことだったが、母親は専業主婦だった。父親は給料を全て母親に渡し、母親が家計をやりくりしていた。財布を握っているお蔭で、母は家庭内の絶対権力者だった。
父親が職場の旅行に参加するかどうか決めるのは母だった。修学旅行に着ていく新しい服を買いたい時も、仲良しグループでお揃いの文房具を揃えようという話が持ち上がった時も、全て、母の了解を取り付けなければならなかった。

大学進学の時も、前途に立ち塞がったのは母だった。
「女が4年制の大学になんて行ったら、嫁に行けなくなる。そこそこ名の通った短大に行って、いい会社に就職すれば、いいところにお嫁に行けるんだから。あなたの幸せのために言っているのよ」と、4年制の大学の受験料は出さないとまで言われた。
そもそも、私はお嫁に行かなくても生きていけるように大学に行こうとしているのに……。私の思いをまるで理解してくれない母が本当に嫌いだった。でも、私にとってはどうしても譲れないところだった。高校の担任、叔父や叔母まで動員して母を説得して4年制大学の受験料を獲得し、進学の夢をかなえた。

大学卒業後は、花嫁修業には全く縁遠い会社に就職。男性9割の職場で、埋没しないように必死で働いた。学生時代から付き合っていた彼とは26歳で一緒に暮らし始めた。入籍はせず、子どもを産む選択もしなかった。「いいお嫁さんになってほしい」という母の期待のことごとく裏を歩いた。社会人となった私は、自分で稼ぎ、経済的に縛り付けられることはない。私は母とは違う人生を手に入れた! と確信した。

なのに、なのに……私は大嫌いな母とそっくり同じことをしてしまった。そして、大切な人を失った。

最初は一緒に暮らし始めた若いカップルの他愛のない会話からスタートした。「小さくてもいいから友だちを呼べるマンションを買いたいね」「ボロボロの車、来年は買い替えられるかな?」「年に1度は2人で旅行に行こう」。
小さな夢をかなえるために頑張って貯金をすることにした。給料が振り込まれる通帳は私が管理して、2人ともお小遣い制にして無駄遣いを抑えることにしたのだ。

彼から「会社の人からゴルフ誘われたんだよ。付き合いだから、ゴルフクラブ一式揃えたい」と言われた時、思わず渋い顔をしてしまった。理解あるパートナーと思われたいから、通帳を彼に渡したものの「できるだけ安いのにしてね」とクギを刺すのを忘れなかった。「ゴルフに行くのは月1回までね」と、勝手にルールを作った。
「夏物のスーツ、もう一着ほしいな」と言われても、「セールが始まるまで待った方が節約できるよ」と、時期を延ばした。
「来週、会社の野球大会なんだ。その後、打ち上げで遅くなる」と言われると、「打ち上げはどこでやるの?会費はいくら?」と確認して、お金を渡した。
無駄遣いを減らすためのお小遣い制は、いつの間にか、私が彼を管理するための手段になっていた。財布を握っていることで、会社の付き合いも、着たい服も、週末の外出も全て掌握できることに優越感を持っていた。

15年近く一緒に暮らして、同居生活は終わりを迎えた。もちろん、別れる理由はたった一言で説明できるものではない。けれど、彼が自由を制限され、管理される暮らしに辟易していたことも理由の1つだったのだろう、と今の私には理解できる。

今、私は、新しいパートナーと暮らしている。
お小遣い制はやめた。家賃の半分と食費相当額を貰う以外のお金の使い道は関知しない。パートナーが多少なりとも預金をして老後に備えているのか、私は知らないし、聞きもしない。「全く気にならない」と言えばウソになるが、「管理される」ことがいかに窮屈かということは、私自身が一番よく知っている。そして、管理される窮屈さを押し付けることで、大切な人を失う痛みも経験した。

80歳に近くなった母は、あれだけこだわっていた「家計の財布」を手放し、父に全てを託すようになった。年をとり、病気になり、権力をふりかざすことにくたびれただけなのかもしれないが、管理者であることを辞めた母は、心なしか少し、丸くなったような気がする。
そして、あんなに嫌いだった母を、最近、「かわいい」と思えることがある。

どんなに管理しても、人の心までは縛ることはできない。でも、人間は80歳になっても変われる。そして、管理することをやめると、人と人との関係も変わる。

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2017-01-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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