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メディアグランプリ

「面接=同窓会」説


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:遠山 涼(ライティング・ゼミ)

「まずは自己紹介と志望動機を教えてください」

緊張で体が硬くなり、今にも小刻みに震えてしまいそうだ。
僕は拳を固く握り、その場から動き出さないようにぐっと力を入れた。

「学生の頃に一番頑張ったことは何ですか?」

なんとか目の前の相手と言葉を交わせているが、僕の声は簡単に裏返ってしまいそうだ。
相手の話す言葉なんてほとんど耳に入ってこない。
僕は悲しくなる。この4年間、僕は何をやってきたんだろう。
つくづく何も成長してない。これでは目の前の大学生と、何も変わらないじゃないか。
どうしてこんな僕が、こうやって面接官をやっているのだろう?

社員数30名弱の小さな我が社には「人事部」という部署は無い。
意外に思う人もいるかもしれないが、そういう会社は割と多いし、そういう状況も案外普通にあるのだ。そもそも我が社では人事に関する業務、例えば新卒・中途採用を定期的に行っている訳でもなく、部署異動が起こるほど部署の数が多くない。社員が全員営業部に所属している、みたいな会社は割と本当に多い。

そんな我が社で数年ぶりに、新卒採用を行うことになった。
新卒採用チームの一員になった僕は、面接官として面接に参加することになった。
その話を上司からされた時、僕は思わず吹き出しそうになった。
かつて残り物を拾われるように、なんとか今の会社に入れた程度のこの僕が、新卒採用の面接官をやるだと?
自分自身の出世やキャリアアップもままならない僕が、わずかな時間で、短いいくつかの質問だけで、その人が将来有望な人材かどうかを判断するというのか? おこがましいにも程がある。

そんなことを考えているうちに、だんだん笑ってばかりもいられなくなってきた。
僕は面接官として学生と相対するほどの、立派な社会人にはまだなれていない気がする。
僕は恐怖を感じた。その恐怖は、もし学生の前で、社会人としてイマイチな言動や失敗をしてしまったら、その学生はきっと僕をナメるだろう、優越感を含んだ嘲笑すら浮かべる奴もいるかもしれない、といった恐怖だった。まだ見ぬ就活生を恐れると同時に、勝手にだんだん腹が立ってきさえもした。

そもそもどんな質問をして、学生のどんなところを見ればいいのだろうか?
僕は自分自身が学生だった頃のことを思い出してみた。

1.面接では、質問に対する答えの内容よりも、その場での受け答えや柔軟性が問われる。
2.会話の中身よりも、相手とのコミュニケーション力を見られるので、いかにも用意してきたような答えにならないように気を付ける。
3.ボソボソと話すより、相手の目を見てワントーン高い声で堂々とした態度で臨もう。

確かこんな具合で、僕は幾多の面接を繰り返し、とっくに内定をもらった友人たちが卒業旅行の計画を立て始めた頃、ようやく今の会社に内定をもらえたのだった。

ということは、僕も相手のコミュニケーション力やその場での柔軟性、堂々とした態度や第一印象などをチェックして、それを材料に、どの学生が優れているか判断すればいい、ということだろうか?

しかし、正直言って僕にはそれはできない。

なぜなら、そもそもコミュニケーション力なんていう曖昧な能力があるか無いかなんて、どうやったら判断できるというのだろうか? と僕は思ってしまう。そもそも僕は、うわべだけで会話が上手いように見せかけることが嫌いだ。それがビジネスにおいて少なからず求められるスキルだとしても、好きか嫌いかで言えば僕は圧倒的に嫌いなのだ。
そんなことが得意なやつなんて、できれば一緒に働きたくない。でも就活生だってきっと本気で来るだろうから、面接官である僕を全力でダマしにくるに違いない。うわべだけじゃないですよー、なんていう純粋無垢を巧妙に装って、社会人としてイマイチな僕から内定をしたたかに勝ち取ってしまうかもしれない。
そんな狡猾な就活生を相手にして、僕はその嘘を見破れるだろうか?

最初の面接の日、僕はやっと面接というものを理解できた気がした。

面接官として学生と対面しながら僕は、かつての自分を見ているような気持ちになった。
いかにも作ってきたような質問の受け答えや、自信に満ちた声で繰り広げられる中身のない話。
それらを目の当たりにしたとき、僕は彼らと何ら変わらない人間なのだと感じた。
本当に強く強く、鳥肌が立ってビリビリと痺れるくらいにそう感じたのだった。

人によっては、そんな就活生たちの未熟さを目の当たりにして、優越感を感じたりするのだろう。
幸いなことに僕はそうならなかった。就活生に優越感を感じられるほどに僕がまだ成熟していないからかもしれない。

たどたどしく話す学生の自己PRを聞きながら、僕はふと、学生の頃の気持ちに戻ったような気がした。
それはまるで同窓会で起きる、あの現象のようだった。
もうずいぶん会っていないかつての同級生が集まると、普段はそれぞれが立派な大人として暮らしているはずなのに、その同窓会の間だけは、当時の気持ちに戻ってしまうあの現象だ。
いい歳をした大人たちが、子どものようにはしゃぎ、笑いながら、ふとした瞬間にひどく懐かしいような、切ないような気持ちを静かに味わったりする、あの感じだ。

僕は素直に知りたいと思って、目の前で少し緊張気味の学生に聞いてみた。
「今までの人生の中で、一番がんばってきたことは何ですか?」
本当に知りたかった。なんなら僕が一番頑張ったことも話して、学生に聞いてほしいくらいだった。

緊張して何も言葉が出てこなくなってしまう学生。四苦八苦しながらめちゃくちゃな文脈の話を続ける学生。妙に慣れた感じで自信満々に自らをアピールする学生。その全員と僕は、本音で話がしたいと思った。妙な見栄の張り合いやごまかし、探り合いや駆け引きは要らない。面接に合格しようとする君も、面接官として君を見定める僕も、もともとは同じような、お互い大して変わらない人間じゃないか。

そんなことを考えながら面接を続けた僕は、面接官失格だろうか?
仮にそうだとしても、湧き上がってしまった気持ちは、そもそも止めることができない。
それに、もしかするとこんな面接官もけっこう多いのでは? とも僕は思う。

***

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2017-01-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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