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ライティングゼミがキセキのクラスである理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事 リコ(ライティングゼミ)

 

「これ、何に見えます?」

三浦先生は恐る恐る教室にきいた。

ホワイトボードには、丸が描かれ、その下に三角が描かれていた。

それは私には書きかけのおでんに見えた。

生徒の1人が、恐る恐る答えた。

「人、ですか?」

「人!?   そう!   正解!」

いやー、絵だけは本当にダメなんですよ。

三浦先生がそういうと、教室は温かい笑いに包まれた。

私にとって神のような文章力をもつ三浦さん。

でも、画力で勝負したら、案外勝てるかもしれなかった。

三浦先生が再び話を始めると、教室の生徒達が再び真剣に耳を傾けはじめる「気配」がした。

遡ること3ヶ月前。2016年10月。

天狼院ライティングゼミの初めての授業での一コマだ。

私は去年の10月、唐突にライティングゼミに入った。

天狼院書店を知ったのは申し込みの数日前。

きっかけは会ったこともない知り合いの、「いいね!」だ。

書くことに悩みを抱えていた私は、Facebook経由で天狼院書店のホームページにたどり着き、気が付いたら申し込みボタンを押していた。

4ヶ月、40,000円。

高い買い物だが、後悔はしていない。むしろ、それ以上の価値があった気さえしている。

そこまで天狼院書店に信頼を置いている私だが、お店に行ったことは一度もない。

実は天狼院書店の結構近くに住んでいるにも関わらず。

ライティングゼミが行われるのは平日の夜。

毎晩18時に帰宅してから、夕食、お風呂、寝かしつけとノンストップで家事・育児に奮闘するワーママの私にとって、平日の夜に1人で家を抜け出し池袋に向かうことは、おとぎ話のように遠い世界だ。

通信講座の恩恵を受けているのは地方在住者のみではない。

私が初めて授業に参加したのは、実際に池袋で授業が行われた日から数日後。家族がまだ寝ている早朝。場所は自宅のリビングだった。

ライティングゼミ全8回。ついに、お店に行くことも、ライブ動画をみることも叶わなかった。

そんな時間と空間のズレがありながらもなお、私はクラスの一員として一体感を感じていた。

そして、教室が温かい笑いに包まれた瞬間、懐かしさにきゅっと心をつかまれた。

クラス。

私にとってライティングゼミは、学生時代以来初めて経験する「クラス」だった。

そしてそれは「キセキのクラス」だった。

 

普通、私たちは大人になるまでに幼稚園、小学校、中学校といくつものクラスを経験する。

過去に所属していたクラスの中には、全く結束力がなく、文化祭の出し物がいつまでたっても決まらない「残念なクラス」もあったし、運動会に命をかけ、勝った負けたで涙を流す「アツいクラス」もあった。

私の人生でもっとも印象に残っているクラスは中学のときの2年1組だ。

2年1組は「アツいクラス」を超えた、「キセキのクラス」だった。

クラスが「残念なクラス」になるか、「キセキのクラス」になるか。

その別れ道はどこにあるのか。

再びクラスの一員となった私は、この4か月でその答えを得たような気がする。

 

「じゃあ、1組の合唱曲はミスチルの『cross road』に決定!」

議長の声に重なるように、わー! と歓声があがった。

ああ。

私と友人は崩れ落ちた。

「もう、みんな全然わかってないよねー」

「ほんと、あんな曲で優勝できっこないよ」

2年1組が合唱コンクールで歌う曲は、決戦投票の結果、ミスチルの『cross road』に決まった。

対抗馬の合唱曲に投票した私たちはがっくりうなだれた。

私たちは別にミスチルが嫌いな訳ではない。

むしろ好きだった。

カラオケ大会なら、ミスチルもよかろう。

でも今選んでいるのは合唱用の曲だ。

ミスチルの曲の高いキーは、櫻井さんだから出せるのであって、うちのクラスの男子には出せないだろう。

合唱には合唱の見せ方がある。私たちが投票した合唱曲はハモリの部分がとてもきれいな「合唱映え」する曲だった。

きちんと練習して完成度をあげれば、かなりの高評価が得られるだろう。

ちょっと面白みには欠けるかもしれないけど、優勝を狙うには固い選択だ。

ミスチルはどう考えても合唱コンクールには向いていない。

男子たちは何も考えず、好きな歌に投票しただけだ。自分たちが苦労するとも知らずに。

そう思った私は、ミスチルに決まったことに小躍りする男子に、冷たい視線を送っていた。

2か月後、自分の方こそ浅はかだったと思い知ることになるとも知らずに。

 

案の定、『cross road』は合唱用に編曲しても、男子には苦しい曲だった。

中学2年生。

変声期を終えたばかりの男子にとって、高いキーを出すのは大変だ。

無難な合唱曲を選択した隣のクラスからは、早々にきれいにハモった歌声が聞こえ始めた。

一方の私たちのクラスの歌声は、ハモっている感じがしなかった。

特に男子のパートがひどくて、もはや悲鳴のようだった。

やっぱり合唱用の曲にしておけばよかったのに。他のクラスの前を通り、漏れ聞こえる歌声を聞く度に、そんな思いが頭をよぎった。

 

様相が変わり始めたのは合唱コンクールがあと2週間に迫った2月だった。

合唱コンクールの成否を分けるポイントのひとつ。

それはいかに男子を練習に参加させるか。

はじめのころこそ、物珍しさも手伝い放課後の練習にも参加していた男子たちだったが、ちょっと経つと、「合唱なんかしてられっか」と、戦線離脱が始まった。

男子の脱走は例年のことだった。

しかしここで意外なことが起こった。

2年1組の男子たちは脱走しなかったのだ。

正直にいって、2年1組は今のところ、ビリになりそうだった。

でも、2年1組の男子たちは、自分たちがその曲を選んだこと、自分たちのパートがひどいこと、そしてそのせいで自分たちのクラスがビリになりそうなことが、よくわかっていた。

打算なしに自分たちが本当に歌いたい歌を選んだことが、彼らの脱走を引き留めるのに役に立ったのだ。

2年1組の男子たちはかなり真剣に歌っていた。

たぶん、思春期の男子にとって、高音部を真剣に大きな声で出すということは、かなり恥ずかしいことだ。

そして『cross road』は高いだけでなく、高いところでキーがポンポンとぶ難しい曲だった。だから、一生懸命だした声が外れてしまうこともあった。

全力でやって、外す。

これ以上に恥ずかしいことはない。

でも、誰も笑わなかった。

それを見て、自分もただ練習するだけだった。

本番が近づくにつれ、学校の空気が張り詰めて行った。

 

合唱コンクール当日。

私たちの『cross road』はやはり悲鳴のようだった。

でも、その悲鳴の真剣さは、全校生徒の心をうった。

2年1組は、全校投票で1位を勝ち取ったのだ。

尾木ママによく似た当時の担任は号泣した。

「尾木ママ」は音楽の先生で、全クラスの合唱の面倒を見る立場にあった。

担任をしている2年1組だけをひいきすることはできない、とあえて一歩引いた立場で見守ってくれていたのだ。

音楽の先生だった「尾木ママ」は、合唱曲の選択があまりよくなかったことも、私たちの合唱が音楽的に優れていないことも承知していて、でも絶対君たちが1番だと、本当はずっとそう思っていた、といいながら眼鏡をはずし、涙を拭いた。

あんなに全員がど真剣になれるキセキのクラスには、もう二度と出会えないだろう。

そう思っていた私の期待は20年以上経って、裏切られた。

 

ライティングゼミに参加した私は、この4ヶ月、ど真剣に文章を書いて投稿した。

全力で面白いと思った文章を書いてクラスで発表する。

この時点で、すでに結構恥ずかしい。

そして、それがクラスで公開ダメ出しされるのである。

大人になった今、これ以上恥ずかしいことは、なかなかない。

でも、ライティングゼミでは、落とされても、誰も笑わない。

三浦先生も「落とされないと、勿体無い」とすら言ってくれる。

だから、何回も落とされた私は悶えながらもまた投稿した。

周りの人が掲載されても、落とされても、それを見ながらただ、自分が一生懸命書くだけだ。

みんなが全力であること。

そして、滑っても認められること。

この暗黙の了解が、キセキのクラスの要件で、だからライティングゼミもキセキのクラスだったと私は思う。

 

そんなキセキのクラスも、先週で終わってしまった。

卒業だ。

卒業式で、同窓会で会おう、は合言葉だ。

別れの寂しさを紛らわすために人はそう言う。

けれど、本当にクラスの全員が集まることはもう二度とないことは、大人になれば誰もが知っている。

「クラス」は授業が終わってしまえば、もう二度と再現できないのだ。

 

それでも生活の中でクラスが蘇る瞬間がある。

同級生の活躍を耳にしたときだ。

〇〇ちゃん、今はダンスの先生なんだって。

〇〇さん、もう、3人目だって。

生活の中で耳にする同級生のうわさ話は、小説の後日談のようだ。

聞く度心にクラスが蘇り、ほっこりする。

 

三浦さん、川代さん、受講生のみなさん。

4ヶ月間ありがとうございました。

ライティングゼミのFacebookグループはこのまま開かれているのでしょうか?

許されるのであれば、ここを通じて今後の皆さまのご活躍を知れたら素敵だな、と思います。

私、皆さんの後日談、本気で楽しみにしています。ライターになる方がいればその記事を読むし、小説家になる方がいれば、その小説を買います。

はい。もちろん天狼院書店で。

*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。 *この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2017-01-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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