fbpx
メディアグランプリ

愛をたくさん詰め込んで


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講申込みページ/東京・福岡・京都・全国通信】人生を変える!「天狼院ライティング・ゼミ」《平日コース》〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
【東京・福岡・京都・全国通信対応】《平日コース》

記事:かおり(ライティング・ゼミ)

「一人暮らしなのに、毎日お弁当作って来ててえらいね」
お弁当を持って出社していると、今の会社でも、前の会社でもそう言われる。
お弁当箱の中身は見た目が茶色一色になってしまうこともあるし、それを通り越してご飯のタッパーとおかずのタッパー(しかもおかずは一品)の2つを持っていくこともあるので、あまり人様に見せられるようなものではないし、褒められるとやや気まずい。

お弁当というと母のお弁当を思い出す。
幼稚園、高校、さらには高校生の弟のお弁当に便乗する形で大学でも母の作ってくれるお弁当にお世話になった。
母のお弁当はいつもおいしかった。
唐揚げと卵焼きとブロッコリーやハンバーグとひじきの煮ものとほうれん草のおひたしなど、冷凍食品も入っていたし、たまには全体的に茶色っぽいこともあるなんてことないお弁当だった。
そのころも今のキャラ弁のように、見た目にこだわったお弁当を持ってきている子がいたような気がするが、母はそんなお弁当を作ってくれたことは一度もなかった。
母曰く、「そんな風に食べ物をいらいくちゃにしたら傷むから」だそうだ。

私が思うに、母の作ってくれるお弁当の最大の特徴は「隙間」にある。
正確には隙間がないことである。
母はお弁当に隙間があくことを極端に嫌うので、いつもきちきちにおかずが詰まっていた。
朝、お弁当を作りながら「あー。この隙間が気になる」とよく言っていた。
そんな時、お昼にお弁当箱を開けると、隙間に枝豆が半ば無理やり突き刺さされていたり、プルーンが押しつぶされるように詰められたりしていた。通学途中のかばんの中で、お弁当箱が真横になっていてもびくともしないようなそんなお弁当だ。

社会人4年目に私は一人暮らしを始めた。
家賃や水道光熱費など、思っていた以上にお金がかかったので、節約のためにお弁当づくりをはじめた。初めてお弁当を作った時、時間ばかりかかったわりに、隙間だらけのすかすかのお弁当が出来上がった。お昼にあけたお弁当は見事に片側に寄ってしまっていた。
「こんなにうまくできないとは思わなかった」
私はお弁当を食べながら一人ため息をついた。

一人暮らしを始めてからも、私はしょっちゅう母と会っている。2人ともミュージカルを観に行くのが好きで、よく一緒に劇場に行くからだ。
そんな時、開演前に一緒にご飯を食べることが多い。お店で食べることも多いが、最近はデパ地下で買ったちょっといいお弁当を食べることにはまっている。お弁当にしてはちょっとお高めでも外食するよりはリーズナブルなのだが、ちょっと贅沢な気分が味わえる。

ある日、仕事で帰りが遅くなったのでコンビニでご飯を買って帰ろうとした。並んでいるお弁当を見ているうちに、ふとあることに気付いた。
「あれ? コンビニのお弁当って隙間が多い?」
何度かデパ地下でお弁当を買っていたからかも知れない。容器の大きさが違うのもあるが何となくすかすかした印象を持ってしまった。買って帰ったコンビニののり弁を食べながら、やっぱりちょっと高めのお弁当のほうが隙間が少ないような気がするなと思っていた。
「……あれ? 隙間がないってお母さんのお弁当じゃん。高いお弁当のほうが隙間が少ないってことは、お母さんのお弁当は最高級ってことか」
私はにやりとした。私の発見した理論によると「お弁当の隙間が少ない=高級」である。
その理論でいえば、母のお弁当はかなりの高級品ということになる。

先日、その理論を母にぶつけてみた。
「最近気づいたんだけど、ちょっと高めのお弁当って隙間なくみっちり詰まってるよね」
デパートで買ったお弁当をつつきながら、隣に座る母にそう言った。
「言われてみれば、そうね」
「その理屈でいけばお母さんのお弁当のほうが隙間ないから、高級だよね」
「あんた何言ってんの? そんなの当たり前でしょ。隙間あける余裕がないわよ。その分愛情詰めてあるんだから。高いよ~」
あはははと笑いながらそう言ってのける母を見て、この人すごいなと私は心から思った。
母の作るお弁当が真横にしてもかたよらないのは、どうやら愛情がきちきちに詰まっているからのようだ。
母の作るお弁当がいつもおいしい理由はどうやらそこにあったようだ。

一人暮らしも5年目を迎えた私のお弁当は、少し傾けたくらいではもうかたよらない。
「あ~。この隙間気になる……」
お弁当箱を前に一人つぶやきながら、枝豆を刺したりプルーンをいれたり、母と同じようなことをしている。

お弁当の隙間に愛を詰める。
なんだかちょっと恥ずかしいけれど、ちょっと幸せな気になる。
いつか誰かにお弁当を作るようになったらきちきちに愛を詰めてやろうと決めている。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講申込みページ/東京・福岡・京都・全国通信】人生を変える!「天狼院ライティング・ゼミ」《平日コース》〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
【東京・福岡・京都・全国通信対応】《平日コース》

天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F

TEL 03-6914-3618 FAX 03-6914-3619

東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021
福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

TEL 092-518-7435 FAX 092-518-4941

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN

〒605-0805
京都府京都市東山区博多町112-5

TEL 075-708-3930 FAX 075-708-3931
kyotomap

【天狼院書店へのお問い合わせ】

〔TEL〕
東京天狼院:03-6914-3618
福岡天狼院:092-518-7435
京都天狼院:075-708-3930

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。

【天狼院のメルマガのご登録はこちらから】

メルマガ購読・解除

【有料メルマガのご登録はこちらから】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



【天狼院のメルマガのご登録はこちらから】

メルマガ購読・解除

【有料メルマガのご登録はこちらから】


2017-01-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事