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プロフェッショナル・ゼミ

【オカマが説く】男をヒモに育てたのはアンタよ! 〜ヒモ男に貢いだ女〜《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:市岡弥恵(プロフェッショナル・ゼミ)

「きー! あーもう、痒い痒い! アレルギーよ! あんたのせいでアレルギーよ!」

あぁ、出た出た。
ママの得意技。なんでもかんでも、とりあえず人のせいにする。だいたい、今ママが痒がってるのだって、アレルギーなんかじゃない。
歳のせいだ。歳で肌が乾燥しているからだ。
まぁでも、こんだけ威勢がいいから元気であることは分かる。

あなたの街にも、こんなオカマバーあります? 
女の前では、めちゃくちゃ口の悪いママが居るオカマバー。
もう、私は最初ママに出会った時は、二度とこんな店に来るものかと思った。とにかく、女に対して毒を吐きまくるのだ。

まぁ、でも、そりゃそうだよな、と次第に思うようになった。だって、オカマにとって女は敵なんだから。
私の前と、男を前にしている時のママの顔は全然違う。見ているこちらがビックリする。もう、あの流し目とか真似できない。グラスを持つ、あの指の色気なんか、女の私でさえ真似できない。それぐらい、彼女達は女以上に色気を出す。
正直私は、女子力という点では彼女には勝てない。胸のデカさでも勝てない。私が勝っているのなんて、「子宮がある」という事ぐらいだ。

あっ、毎度のことながら説明しておくと、ママの胸にはシリコンが入っている。でも、下の工事はやってないらしい。

私は、なんだかんだ、このママとは仲良くやっているつもりでいるのだが、誰かにママを紹介しようとは思わない。なぜなら、毒舌すぎるのだこの女は。正直、「ブス」とか面と向かって言われることないから、流せない人は結構傷つく。
私だって、毎回「ブス」だの「頭が悪い」だの「貧乳」だのと罵られ、たまに本気で凹んだりする。

それなのに、なぜかこのママの所には、女の子達が相談に来る。
よく分からないんだが、もしかすると人って、容赦なくスパッと切ってもらった方が諦めがつくのかもしれない。

あっ、ほらね。
また来ましたよ、オカマバーに女性のお一人様が。

***

「ママー!!」

すげぇ……。
すげぇ、この巻き髪……。いや、それお尻はみ出てるし……!

私の、サオりん(仮名)に対する第一印象はこれだ。グリングリンの金髪巻き髪。ホットパンツは短すぎて、お尻が少しはみ出ていた。
私はカウンターで一人パソコンをカチャカチャやっていたのだが、突然この金髪グリングリンが半ケツで入ってきたもんだから、思わず彼女の股間を見てしまった。いや、他意はないのだ。ただ、ここに居ると、本当に脳みその理解が追いつかない事が多いので、とりあえず顔を見ずに目線を下に下げてしまうのだ。

「げっ! 出た、妖怪!」

そんで、ママがサオりんに言った最初の一言がこれだ……。

——ママ?! 妖怪?! そんなん、レディーに対して言う言葉じゃ……!!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

——え?! 泣く?! 泣くの?! いや、だから下からもお尻出てるし、そんなカウンターに突っ伏すと、あなたウエストラインからもお尻の割れ目が……!!

あぁ、もうダメ……。ほんと、ここに居ると脳みそがついてこない。そうだ、いつも通り無になろう。無だよ、無の境地よ……。

私は、パソコンの方に向き直り、コーラをじゅじゅじゅっと吸った。

「あっ、次何にします? また、コーラ?」

——はっ、この声は!
私は、恐る恐る顔を上げる……。

「……!!」

出た……。このオカマバーの中で、一番正体不明なオカマ!
ある時は、フリフリメルヘンなスカートにウィッグ、ある時はウィッグ無しで完全に男の顔をしてスカート着用(すね毛は生えている)、そして今日は……。

セーラー服に、ウィッグ……。化粧なし……。

「せ、聖子ちゃんみたいですね、今日は……」
「えっ、ほんと? あらやだー、嬉しいっ!」
「あの、でもそのウィッグ、90度ズレてます……」
「きゃっ! やだもー、早く言って!」

そう言いながら、全くウィッグをズラすことはせず、両手で髪を撫でつけているだけだ……。このオカマさん、声を高くしない。地の男の声で、しゃべり方が女の子。でも、仕草は可愛かったりする。さっき、「きゃっ」って言った時も、両手を頬っぺたに当ててた。
「無理に何かを理解する必要はない」と、私に覚えさせたのが、このオカマさんだ。私が無の境地になろうとするのは、このオカマさんの為だ。

「あの、いつから居ました?」
私が店に入った時は、居なかったはずだ……。

「ついさっき、サオりんと一緒に入ってきたわよー。急いで着替えたの!」

あっ……。そう言えば、さっきサオりんの後ろにサラリーマンの姿があったな……。ん? ちょっと待って、もしかしてこの人、日中は普通にサラリーマンやってんの?!
なんて日だ……。いつものママに、妖怪が一人、正体不明なのが一人。なに、この三段構え……。ひっちゃかめっちゃかにも、程がある。
帰ろう、今日は帰ろう……。嫌な予感しかしない……。
私は、そそくさとパソコンを閉じ、オカマさんまた来ますねと言っ……。

「ちょっとアンタ! なーに、逃げようとしてんのよ!!」
「えっ?! 逃げるんじゃなくて、帰るんだよ! ほら、夜更かしは美容の大敵!」
「うるさい! ほら、そこ座んなさい! だいたい、既に顔枯れてんだから、今更遅いわよ!」

……。

私は、観念してサオりんから席を一個空けて座った。

「まったく、なんなの、貧乳バカに妖怪。何この組み合わせ」
「いやだから、妖怪はないでしょう……つーか、まだ泣いてんの?」

私は、横に座っている金髪グリングリンに話しかけた。
のそーっと上体を起こし、ゆっくり私に顔を向けるサオりん。

「おねーさん、男って何?!」
「えっ?! 知らんよ! つーか、ツケマやばいよ……半分剥がれてるよ……」
「いいの、こんなの!!」

ビシっと音がするかと思うぐらい、サオりんは思いっきり、左目の付けマツゲを剥がした。

うっ。妖怪……。分からないでもないな……。

「えーっと、サオりん。男がどうかした? 変なのに引っかかった?」
私は、取り敢えず聞いてみる事にした。

「変なのに引っかかてるんじゃないのよ。そういう男が好きなのよ」
サオりんに聞いたのに、ママが答える。

「ん? なんかそれ、私の事かしら……」
何を隠そう、私こそ男には失敗しまくっている。浮気されるとか、付き合い始めた男には最初から別の女が居たとか。もう、そんなんばかりだ。しかし、しょうがない。こういう事する男って女慣れしてて、なんか格好良く見えるんだもの。

「いや、でもアンタのタイプとは、また違うわね、サオりんのは」
「と言いますと……?」
「まぁ、聞いてみようじゃないのよ、どんなのか」
ママは、セブンスターに火を付けながら言った。やはり、タバコを挟む指に色気が宿っている。私は自分の指と、ママの指を見比べる。私だってネイルはしているし、カサカサしないようにハンドクリーム持ち歩いてるんだけどなぁ。多分、指の一つ一つの使い方に気を遣っているんだママは。

「サオりん、今日はどうしたのよ。一応聞いてあげるわよ」
「あいつ、また私の財布から3万持ってたのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「げっ。また、あのヒモ男か。別れなさいよ」
「別れられないの!」
「なんで?」
「好きなんだもん!」

ふむぅ。なるほど。
サオりんは、ヒモ男が好みらしい。しかも結構厄介そう……。

年齢を聞いて驚いたが、サオりんはまだ21歳だった。
今の彼氏と出会ったのは、サオりんが大学にも行かずに夜な夜なクラブに行っていた時のことらしい。ひょっこり出会い、ひょっこり体の関係を持ち、そしていつの間にか、サオりんの部屋に男は居座るようになった。
彼氏は25歳らしいのだが、定職にもつかずに、その日暮らし。居酒屋で働いたり、風俗の客引きをやったり、店とトラブルを起こしては、また職を無くす。大学生のサオりんが、そんな男の食い扶持を稼ぐなんて、夜の世界しかない。大学生がやるようなバイトだと、どう頑張っても月10万ぐらいだ。そのくせ、男は湯水のように諭吉さんを使っていく。男は、あの手この手を使って、サオりんから金を巻き上げてきたそうだ。その度に、もう別れよう。もう別れようと思う。しかし、別れ話をする度に、突如男は優しくなる。

「サオりん、聞いていいか分かんないんだけど、これまでどれぐらい渡したの?」
「……」
サオりんは、何も答えなかった。代わりに、ママが私に視線を送る。
ママのタバコは、もうフィルターまで灰になっていて、正体不明のオカマさんが、それを受け止めるように、ママの手の下で灰皿を構えている。ママは、右手で灰皿にタバコを押し付けながら、左手の指を3本立てた。

ウソ?! 3本?!

「軽く超えてるかもね」
ママは、そう付け加えた。
中洲で働いているとは言え、さすがに21歳で300万男に貢ぐって結構な金額だ……。

「サオりん……。別れようか……」
私はやはり、ママと同じ事しか言えなかった。

「無理だよぉ。だって、私あの人居なくなったらどうしていいか、分からないよぉ」
「サオりん。まだ21歳だよ? そんな男と別れても、他に男はいっぱいいるって……」
「そうそう、この貧乳バカみたいに、30超えたら、選ぶ事も出来ないけどね。サオりんはまだ、選びたい放題よ」
「は?! ママどゆこと?!」
「そういう事よ、バカ。いつまでも選んでんじゃないわよ」
「はぁ?! ママだって選んでんじゃん!」
「私はいいのよ、美しいから」

むかつく! あー! ホント、むかつく!

「まっ、でも別れたところで、同じでしょうね」
「だから、別れたくないの! 私は、彼が変わってくれるって思ってるの!」

突然、サオりんが言葉を発した。

「私は、彼が好きなの! それに、彼は変わってくれる! 今まで、そりゃ裏切られてきたけど、それでも、私は信じてるの!」

あぁ、サオりん……。そりゃね、私もそう思ってたさ、若い頃は。でもね、男って変わらない。人ってなかなか変わらない。浮気する男は、結婚したって不倫してる。私は、自分が発してはいけない言葉を発しそうになり、ママに視線を送る。

ねぇ、ママ。
なんでだろうね? なんで私たちって、こんなんなんだろうね?

幸せになりたい、幸せになりたい、と言いながら、真剣に自分の幸せなんて考えてない。愛して欲しい、愛して欲しいなんて言いながら、本気で愛してくれる男よりも、私を傷つける男を選んでしまう。

ねぇ、ママ。
なんでだろう……。

ママは、ため息をつきながら、またセブンスターに火を付けた。

「あんた達は、自分の人生を他人に委ねすぎよ」
「そんなこと、ないよ! 私こんなに必死で働いてるし、必死で幸せになろうとしてるよ!」
サオりんは、泣きながら訴える。
「なんで男って分かってくれないの?! こんなに私が頑張ってるのに! こんなに私がお金渡してるのに! なんで、分かってくれないの?! こんなに私、彼のこと思ってるのに!」
なんでよぉ……! サオりんは、カウンターに突っ伏す事もなく、わんわん泣いている。

「だったら、そのままでいなさい。サオりんが今の状況が好きなら、そのままでいなさい」
ママは、そう続けた。
「嫌に決まってるじゃん、こんなの! ヤダよ、ヤダー!」
「だったら、別れなさい。そして、自分の幸せを考えなさい」
「自分の幸せぇ……?」
「そう、そうよ。あんたね、男が分かってくれないって? そうじゃないわよ。あんたが男をそんな風にしてるのよ。あんたが男にそう望むから、男はヒモになってんのよ。分かる?」
「分かんない……」

そりゃそうだ……。
私だって、20代の頃は、そんな事言われたって、てんで分からなかった。
ただ、今ならなんとなく分かる。
結局、男を選んだのは、私だ。こんな男を選んで来たのは私なんだ。

「あんたね、本当は、どういう自分が好きなの? そんな風に、男に貢いでいる自分が好きなの? それとも、お姫様みたいに男に扱われるのがいいの? どっちが、アンタの幸せなのよ」

「お姫様……」
サオりんは、少し悩んだ末、そう答えた。

「いい? サオりん。人に幸せにしてもらおうなんて、考えないの。自分を幸せにできるのは、自分しかいないということを知りなさい」
「自分しかいない?」
「そうよ。結局、あんた自身が自分を幸せにするしかないのよ。自分の人生に責任を持ちなさい。自分を幸せに出来るのは、自分しかいない。それを肝に銘じて、全てを選びなさい。人生、選択の連続なんだから」

少しぼぅっとしているサオりん。考えているのか、理解できていないのか、傍目にはどちらなのか分からない。カウンターに置いている、サオりんのファーカバーに包まれたスマホが音を出した。

「あっ、彼氏だ」
「なんだって?」
ママは、またセブンスターに火を点けた。

「パチンコで勝ったから、メシ食いに行こうって」
サオりんは、パタパタと荷物をまとめ出し、カウンターから席を立った。
店の扉の前で、一言だけ言って、帰って行った。

「ママありがとう」

私は、コーラをじゅじゅじゅっと吸いながら、サオりんの少しはみ出しているお尻を眺めた。
サオりんが、どこまでママが言ったことを理解したかは分からない。それでも、「ありがとう」と言って帰っていったサオりんは、ちょっと笑顔になっていた。

セーラー服のオカマさんが、また髪を両手で撫でつけながら、「コーラ?」と聞いてくれる。

「ねぇ、ママ」
私は、やっとママに話しかけた。
「何よ、貧乳」
「今日の、カッコよかったね」
「今更気づいたわけ?」
「うん。男だったら惚れてるわ」
「ふんっ。あんたみたいなバカはこっちから願いさげよ」
ママが、私に初めて流し目をした。

***

私は店を出て、中洲本通りを歩いた。
すごい街だな。こうして毎晩全国から男がやってくる。出張なんてただの理由付けで、本来の目的は中洲に来ることだ。
ワラワラと通りに広がる男たち。

「ねぇちゃん、一緒どっか行こうや〜」
「お姉さん、一人? 俺らと飲まない?」

私は、酔っ払い達を避けながら、ママの言葉を反芻した。

『あんた達は、自分の人生を他人に委ねすぎよ』

私の幸せってなんだろう。私が本当に欲しいものってなんだろう。こうして差し出される手。私はどんな男の手を握ってきただろう。私は真剣に自分の幸せを考えてきただろうか。私は自分が幸せになることを、自分に許してきただろうか。

手に握っていたスマホが震える。

『つーか、あんたやっぱりなんか持ってきたでしょ?! 痒いわよ!』

ママからのメッセージだ。

まったく。ほんと世話がやける。
今度、ボディークリーム買っていくか。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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