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就職活動と恋愛の、どこがどういうふうに似ているか教えてよ


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記事:あさいあきこ(ライティング・ゼミ)

「就職活動は、恋愛と似ている」
企業説明会で人事部の社員がその言葉を発した瞬間、私は数か月前の失恋を思い出していた。
男子とほぼ接する機会がないまま終わった思春期を過ごした私の、小学生以来の片思いだった。今思えば素直になれずに不気味でおかしなアプローチを繰り返していたと思う。当然少女漫画のような甘い結末を迎えることはなく、ようやくこぎつけたデートの帰り道、必死で伝えた思いに対する「あなたと付き合う気はないです」という一言の返事であっけなく恋は終わっていた。
ようやく立ち直って、恋愛がだめならば就職活動を頑張ろう、バリバリ働いてやると決意を固めていたところなのに、なぜ思い出させることを言うのだろう。そして、就職活動と恋愛が似ているのならば、私は就職できないのではなかろうか。企業に応募しても応募しても振られ続けてしまうではないか。なんて縁起でもないことを言うのだこの社員は。就職活動と恋愛は似ていない、このことを私が証明してやろうじゃないか。

そんな決意もむなしく、私は就職活動に惨敗した。
100社近くは受けたと思う。周りの友人が就職先を続々と決めていく中、私は最終面接にたどり着けないどころかほぼ1次面接で落ち続けていた。卒論の提出期限間近となった12月の中旬、とある企業の内定を得た。譲れない条件としていた正社員ではなく、契約社員としての内定だった。どこかの企業で人事の社員が言っていた、「就職活動は、恋愛と似ている」、あれは正しかったのかもしれないなと思った。

やりたい仕事でも興味がある仕事でもなかったが、入社してみると案外仕事は面白かった。
仕事内容は、顧客がどんな職業でどんな経歴を持っているのか、いつ結婚して家族構成はどうなのか、という個人情報を扱うものだった。職業も住まいも家族も、いろんな人がいた。大学を出て企業へそのまま就職する、その先に結婚があって家庭を持つという自分の中の「普通」はけっして普通ではなく、世間一般の大多数に当てはまっているだけなのだろう。
就職活動をしていたときにずっと感じていた、「卒業した後の居場所がない」恐怖は、恐怖でもなんでもなかったのかもしれない。あのとき、就職が決まらなかったらなにをしていただろう。とりあえず旅行にでも出てその先に住んでしまったりしたかもしれないし、とりあえずアルバイトをしてみた先で社員になっていたかもしれないし、とりあえず書いてみた小説がヒットしたかもしれない。空想が広がった。
そんなことを思いながらも仕事を続けて数年が経った。契約社員だった私は正社員に雇用形態が変わり、そののち働く会社を変えた。

就職という一大イベントが落ち着いた20代の女性に次に現れる一大イベント、それが結婚、もしくは結婚の前段階としての恋愛だ。正直、焦ってはいた。年々増えていく結婚報告に式への招待、少し前までは頻繁に開催されていた友人の集まりもだんだん減っていき、たまに催される集まりでも結婚や家庭の話題が比重を増していく。このままだと気づいたら本当に一人になってしまうのではないだろうか、手遅れになる前になんとかしたい……、そうだ恋人を作ろう。そう決意した私の行動力は凄まじかった。周りの友人知人に合コンがあれば声をかけてもらうよう頼み、多いときには週1回、合コンに参加した。休日には20代向けの婚活パーティーにも足を運び、インターネットを使ったマッチングアプリにも登録、通勤時間を使ってメッセージのやり取りを始めた。そんな生活を続けること約数ヶ月、恋人ができることはなく、私はただただ疲れ果てていた。私にも悪い点はたくさんあるだろう、分かってはいる。けれど、こんなにも自分は人から好かれることがないのだろうか。
そんなことを考えると同時に、数年前の就職活動の記憶がよみがえった。今の気持ちは、内定がもらえずに苦しんでいたときと同じだ。就職先が見つからなくて、結局契約社員にしかなれなくて、自分の人生はここで終わるのだと本気で思っていた。けれど、人生は終わっていない。不本意ながら入った会社は、案外楽しかったのだ。働くうちに、自分の考えていた「普通」はどれだけ狭い世界のものかを思い知ったのだった。結婚も、恋愛も、もしかしたら同じかもしれない。出来なければ人生終わりだと思っていたけれど、そんなことでは人生は終わってくれないし、結婚してもしなくても寂しさとか喜びとかいろんな感情を抱えたまま生きていかなくてはいけない。結婚するという「普通」は、世間一般の大多数に当てはまっているだけで、けっして普通ではないのだろう。

「就職活動は、恋愛と似ている」
数年前はこの言葉を認めたくなかったけれど、確かに似ている。でも、似ていると思うのは、囚われなくても好きなように生きていけるというところだ。私はこれから、どう生きていこうか。
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2017-02-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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