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僕に「一生の宝物」の在処を教えてくれた地図は、一通の不合格通知だった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:口中大輔(ライティング・ゼミ)

失意の3月だった。
第一志望の大学に落ちて故郷を離れることが確定した。浪人までして受けたのに。
毎週のように受けていた模試の数々も「まぁいけるんじゃない?」って言ってくれていたじゃないか。嘘つき。
いや、しかしこれは嘘じゃない。現実だ。

これまでの僕がすがっていたのは、勉強が得意だっていうプライド。けれど、勉強できるって言っても、実際はそんなにたいしたことはなく、高校だって下から数えたほうが早かったし、授業も睡眠学習と称してしばしば居眠りしていたし。本当は、小さな小さな、しかも屈折したプライドに過ぎなかったのだ。

そんな僕が受けた地元から遠い「抑え」の大学。こんな僕だったから、正直、名前だけで選んでしまった部分も否定はできない。「博多は日本の三大都市のひとつだ」と本気で思うくらい地元が好きなくせに、見栄も入った二番手として選んだのは博多から遠く離れた学校だった。だから、実際に通うなんてこれっぽちも想像していなかった。
でも、そこにお世話になることになった。
2年越しの本命への片思いが実らなかった失意と、これから過ごす学舎への失礼極まりない気まずさが混じる複雑な心模様。そんなことは無関係に、入学式までの残された時間はただ淡々と減っていった。
「来月の今頃は、僕はもうこの街にいないんだ。」
そんな確かな現実さえ実感がなかった。

これからの時間を過ごしていくのは、京都。

こんな具合で始まった新生活。
4年間我慢して博多に帰ってやろうと心に誓っていた。忘れるものか、博多っ子の魂。関西弁になんか毒されないぞ! 成績も上位で一目置かれてやる! そしてちょっとばかし良い地元の会社に就職して凱旋帰郷だ!

ところが、である。
結論から言えば、京都での生活は、自分の人生を大きく狂わせるものとなった。しかも、予想できる想定外を上回る想定外な具合で。

4年で終わるはずだった学生生活は、院まで含めて7年に及んだ。生涯年俸で言えば、典型的な人生を送る人と比べて、僕はすでに数千万円単位で損しているはずだ。その長い年月の間に、深い付き合いの友人知人も爆発的に増えた。でもそのせいで、結婚式によく呼ばれ、ご祝儀貧乏が半端ないし、なにより今でも飲み会だけのために京都に呼ばれることもある。というか、こちらから行かなくても、勝手に博多に旅行に来ては、やれあそこへ連れてけだの、やれ旨い飲み屋に連れてけだの、時間も出費もなかなかだ。

こんなことになってしまった元凶はなんだったんだろう。
冷静に学生時代を省みてみる。
あぁ、振り返れば思い当たるものばかりだ……

まずは、7年間住むことになった男子寮、その住人がそれはもう破天荒だった。

筋の通らぬことは嫌いで、ぶっきらぼうなところはあるけれど、いざとなると頼りになる先輩。ところが、留年しまくっていて、いったい何回生なんだかよくわからない。
ロビーの一角にあった小部屋にある麻雀卓。その部屋にいつも入り浸っていては「お前、これは云々だから上がれないんだよ。こうやるべきなんだよ」とさっきの勝負の敗因を、論理的に解説してくれる「真の勝負師」の香りがする先輩。しかし、ちっともキャンパスでは見かけないものだから、いったいどこの学部生なのかわからず、僕らは密かに「きっと麻雀学部麻雀学科なんだろう」と噂していた。
思い立ったら吉日、テレビで見ていたラーメン屋が気になるからと、深夜2時に僕を叩き起こしては自分のバイクの後ろに乗せ、街中のラーメン屋まで、暗闇の都大路を走り飛ばす同期。行動力が羨ましいほど素晴らしい! ちなみにそのラーメンはとてもまずかった。とても。

ここの住人はみんなアホだった。しかし、アホをアホと笑わず、全力でアホを貫く住人たち。尊敬に値する純粋さがあった。

さらにとどめは、アカペラサークルとの出会いだ。

ここは凄まじくクリエイティブな人たちが集う場所だった。当時はみな学生だけど、最近では知る人ぞ知る作曲家や歌手になった仲間もいるし、音楽に限らず、いろんな分野で活動している仲間が多い。OB集めれば一通りの職業が揃いそうだし、もしかしたら小さな国だって作れちゃうとさえ思えるほどだ。とにかく、物事をカタチにする能力の高い人たちばかりだった。

僕は、たまたま見かけたここのストリートライブに一目惚れして、門を叩き、仲間となったわけだが、このサークル、入会届はあれど退会届はない。練習だって、アドバイスはくれるけれど、手取り足取り面倒見てくれるのとは違う。しかも、アドバイスと言えば、みんな文字通り率直な意見をぶつけるもんから、傍目から見るとかなり辛辣。でもそこには本音だからこその愛情があった。
「音楽が好き」「アカペラが好き」という共通項を大切に、情熱に素直に、自分が好きでやりたいならやればいい、ただそれだけなんだということを教えてくれた。自由に思いのままにやるのって、大変だけど、熱くて楽しい。
そんなわけで、この集団はとても能動的で創造的で、街中ライブすれば、歩道が人で埋まることもしばしばだったし、それがきっかけでお祭りなどのゲストにお呼ばれすることもあった。
僕は、ここで長いこと過ごす中で「自分で表現することの楽しさ」「見て聴いてもらうことの快感」を知ってしまった。最初に7年間も学生をしてしまったと書いたが、大学院にまで行くことにした裏志望動機は「まだここで歌いたい!」という願望が捨てきれなかったからだというのは、今だから明かすことにしよう。

大学寮だって、アカペラサークルだって、随分と公共の場を巻き込んで好き勝手やったものだ。京都と言えば、伝統の街なので堅いところだとか、実は陰湿なんでしょとか、言われることもあるけれど、そんなことはない、あかんものはあかんと叱りつつも、こんな無邪気な学生を抱擁してくれる温かい街だ。

僕は、思う存分この京都を楽しんで、京都という街に育てられた。
ここにいたから、かけがえない一生の友人もたくさん出来たし、音楽という「墓場までのライフワーク」も見つけられた。これはお金では買えない、一生の宝物であり、プライスレスの財産だと確信している。これを僕に与えてくれた京都の街。今では、正真正銘、第二の故郷だ。京都を離れてもなお、京都時代の縁が切れないのは、僕と同じく、相手にとってもそれぞれの「京都時間」がかけがえのないものだったからなんだろうと思っている。

あの時、第一志望に受かっていたらどうなっていたんだろう。
下手に受かってしまっていたら、今よりも見える景色は狭かったに違いない。なにより、未だにつまらぬ屈折した小さなプライドも捨てられず、縛られた人生を送っていたんじゃないかとさえ思う。
あの時、入学試験に落ちていて本当に良かった。

そういえば、人生って結局うまくいくように出来ているんだよって、誰かが言っていた。
あの時は非情な不合格通知に見えたけれど、本当はちょっぴりいたずらな神様だか仏様だかが送ってくれた「希望溢れる宝の地図」だったに違いない。
そして嬉しいことに、この宝物は一生輝きを失いそうにない。

***

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2017-02-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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