プロフェッショナル・ゼミ

天狼院はトキワ荘じゃなくて、ここなんだ! と、この本を読んで気がついた。《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:和智弘子(プロフェッショナル・ゼミ)

あーあ。
なんて、私はバカなんだろう。
あれほど、注意しなきゃダメだよって、言われていたのに。
うかつに手を出しちゃいけないよって、言われていたのに。

何にも考えないで、気軽に手に取ってしまった。
すぐに、終わるだろうと、読み始めてしまった。

だけど。
それは、簡単になんて終わらない。
何をしていても気になって、気になって仕方がない。
課題になっている本もあったし、読みたい本も、他にいくつもあるのに。
どうしても読むのを、やめられない。
いっそ、読み始めなければよかったのかな……? 

ことの始まりは、2016年10月だった。
私は大学時代の友人のミサキと久しぶりに会ってランチをしていた。
久しぶりに会うと、お互いに話したいことが山のようにあって、話題があっちこっち、とりとめもなく変わっていく。夫に対するちょっとした愚痴や、仕事の悩み、健康への不安……。
それぞれ、話したいことが終わってしまうと、ふたりの共通の趣味について、どちらからともなく話し始めた。
ミサキもわたしも本を読むことが大好きだった。会うたびに「ねえ、有川浩の新しいの、読んだ?」とか、「池井戸潤の新刊、おもしろいよね」など話していた。「これ、おすすめだよ!」と、読み終わった本を、お互いに貸し借りしてもいた。
ミサキが、思い出したように「そういえば、おもしろいけど、あんまりおススメできない本がある」と言ってきた。
わたしはめちゃくちゃ興味がわいて「えー? なになに? めっちゃ気になる!」といってその本のタイトル聞き出そうとした。けれど、ミサキはちょっと渋っていた。「うーん。弘子は絶対にハマると思うけど。結構大変だからなあ……。まあ、興味があるなら、ヒマなときに読んでみたら? わたしは仕事辞めて時間があったときに読んだから。うかつに手を出すと、絶対に後戻りできないよ」そういって、本のタイトルを教えてくれた。

……なんだ、その本か。
その本なら、前にも他の人から勧められたことがある。
でも、正直なところ、前に勧められたとき、興味が湧かなかった。
手に取ろうともしなかった。
これまでに、ミサキがおすすめしてくれた本は、だいたい私の好みにぴたりとあっている。
けれど、この本は読んでみたい! と、すぐには思えなかった。

なぜなら、その本は歴史小説だった。
わたしは歴史小説が大の苦手なのだ。ぴくりとも触手が動かない。
本屋さんに行っても、歴史小説の棚は、ちらりとも見ずに通り過ぎてしまう。
日本史や世界史の授業が苦手だったわけでもない。どちらかと言えば好きだったと思う。けれど、どうしても歴史小説は読んでみようとは思えなかったのだ。歴史小説は男の人、どちらかと言えば年配の人が読むものだという固定観念が、わたしには、あった。
たぶんそれは親戚のおじさんのせいだと思う。
そのおじさんは、やたらと小難しいことばかり言って、わたしの両親や、まわりの人達を困らせていた。おじさんは歴史小説が大好きだった。まだ小学校低学年の私にまで「歴史の勉強になるから」といっては、しつこく勧めてきた、嫌な思い出が頭のなかに、こびりついている。

うーん、歴史小説か……。
なんとなく、堅苦しい感じがして、あんまり興味ないけどな……。
だけど、ミサキと別れて帰宅している途中にも、教えてもらった本のタイトルが頭から離れない。まっすぐ家に帰るつもりだったけれど、ふらりと本屋へ立ち寄った。
「だまされたと思って、読んでみようかな?」
これまでミサキがすすめてくれた本はだいたい読んできていたし、読まず嫌いでいるのも、もったいないのかも。わたしだって30代後半だし、教養として歴史小説を読んでみてもいいのかもしれない。文庫本だし、たいした金額じゃないしね。そう思って、購入することにした。

ちょっぴり期待しながら、ページをめくる。
けれど、期待していた分、はじめっから、がっくりしてしまった。

登場人物が、あまりにも多すぎる……。
ページを開くと、登場人物の名前がびっしりと並んでいる。
こんなに大勢出てくるのは反則じゃないの?
あーあ、これは、失敗したかも……。
読めないかもしれない……。
本屋さんで、最初のページだけでも、立ち読みすれば良かった。
わたしは登場人物が多すぎると、誰が誰だかわからなくなってしまう。
「あれ? この人誰だっけ? こんな人出てきてたっけ?」と振り返ってばかりいて、だんだんストーリーについていけなくなってしまう……。
最終的には「もう、諦めよう……。わたしには、ついていけない」と挫折することも、ある。
うーん、これは、はじめから厳しそうだな。
まあでも、いいか。
ちょっとだけ、読んでみよう。
だめなら、べつに「わたしはおもしろくなかったよ」って、言えばいいだけだし。

ぺらりぺらりと、斜め読みの気持ちでページをめくっていたけれど、いつの間にか目をそらせずにいる。ほんの数ページ読んだだけなのに、一行たりとも気が抜けない展開なのだ。
冒頭から、こんなにも目まぐるしくお話が進んでいくなんて、予想外だった。
ふとんにくるまりながら寝転んで読んでいたのに、いつしか正座をしながら、食い入るように読み始めていた。

なんなの? 
なんでこんな急展開になるの?
ひどすぎる。
ここまでする必要ないんじゃないの?
悔しい。このまま引き下がるわけにはいかない……!

いつのまにか、物語のなかにどっぷりと引き込まれてしまった私は、ずぶずぶと底なし沼にはまってしまい、まんまと抜け出せなくなっていた。
むしろ、みずから進んで底なし沼にはまりたいと思うほどに、惹き付けられていく。

歴史小説に対してぼんやりと抱いていた、かた苦しさは、みずうみにかかっていた霧がすっきりと晴れるように、消えていった。
多すぎて分からなくなると思っていた登場人物に対しても、それぞれに魅力を感じ始めていた。
裏切られ、苦しみながら逃げる人。
嫉妬にかられ、自分の胸をやけ焦がす人。
ひどい仕打ちに合い、再起不能なんじゃないかと思うほどに痛めつけられる人……。
登場人物が抱える悩みや苦しさは、わたしがかかえている悩みと、なにひとつ変わらない。どれも一度は味わったことのある感情ばかりで、一人ひとりに共感すら覚え始めていた。
厳しい現実の中でも、立ち上がり、しっかりと前を見据えて歩んでいこうとする人たち。
誰ひとりとして、欠けてはいけない大切な仲間になっていた。
いつのまにか、わたし自身も登場人物の一員であるかのような錯覚をおこしている。

だけど、この物語は、なんだか、とても心当たりがあるのだ。

ああ、そうか。
なんだか似ていると思ったら。
この物語に出てくる場所は、天狼院書店に似ているんだ。
読みすすめていくうちに、そう、気付いたのだった。

天狼院書店は、池袋に本店がある一風変わった本屋さんだ。
本屋さんと言いつつも、様々なイベントも行っている。
プロのカメラマンさんを講師にむかえて行われるフォト部。
観光地へ遊びにいく旅部、プロの落語家を臨場感いっぱいに体験できる落語部、TOICEゼミ、そして、文章を書きたい人のためのライティング・ゼミや小説家養成ゼミなど、書店という枠組みを超えて本当にいろんな人達が集まってくる場所になっているのだ。
そして、その中心にいるのが、天狼院書店店主の三浦祟典さんだ。
三浦さんは新たな発想をどんどん思いつき、おもしろいことに忠実で、行動力にも溢れている。三浦さん自身に魅力があるからこそ、まわりに人が集まってくるのだろう。三浦さんを中心として、おどろくほど有能な店舗スタッフ、店舗に訪れるお客さま。みんな、三浦さんの考え方や行動に共鳴して、ひとり、またひとりと集まってくる。
この物語の場所も、まさに天狼院書店と同じように、共鳴した人々が次々と集まってくるのだ。

もうひとつ、この物語と天狼院書店には共通点があることにも気付いた。
それは「志」という言葉だ。
この物語は、「志」が大きなテーマになっている。
「志」がなければ、物語が成り立たないと言ってもいいくらいだと思う。
天狼院書店に集まる人達は、はじめは「なんとなくおもしろそう」というだけで集まってきているのかもしれない。
わたしだって、そのひとりだった。
だけど、さまざまなイベントに参加していくうちに、心のなかで、みんな小さく希望を抱くようになるのだ。
「わたしにも、できるようになるかもしれない」と。

ライティング・ゼミに参加したわたしは、少しずつ書くことに対しての意識が変わってきたことは事実だ。
なんとなく始めてみたことだった。
仕事に生かせればいいな、単純に、そう思っていただけだった。
はじめは、志なんて、もっていなかった。
むしろ、志を持つなんて、恥ずかしいとすら、思っていた。

けれど。

いま、わたしは学び始めたばかりのころとは全く違う意識を持って、文章を書いている。
それは、わたしの中にひとつの志が生まれたからなんだろう。
「文章を書く、プロになる」
この志を、一緒に学んでいるゼミの人達は、心の中で熱くたぎらせている。
ほんの少しずつでもいいから、文章を上手く書けるようになりたいという想い。
ただ単に、志を振りかざすだけではなくて、みんな、しっかりと足下をかためて、一流になると決めたのだ。
これはライティング・ゼミを受講している人たちだけの話じゃない。
フォト部にはいっている人達は「プロのカメラマンとして、食っていけるようになるんだ」という熱い想いを胸に抱いているに違いないし、小説家養成ゼミであれば、「絶対に、小説家としてデビューしてやるんだ」と考えているだろう。

それぞれの思いを、それぞれの志を持ちながら、天狼院書店に集まる人々はお互いを刺激し合い、お互いを尊敬し合いながら成長していくのだ。

この物語は、天狼院書店を取り巻く現状に、あまりにも、似ていることに気付いてしまった。
三浦さんは天狼院を「現代版のトキワ荘のようにしたい」と話していた。
トキワ荘については説明するまでもないかと思うけれど、手塚治虫や石ノ森章太郎をはじめとした日本を代表する漫画家を大勢生み出すきっかけとなったアパートのことだ。才能のある漫画家を同じアパートに集めて、その場所から大いなる刺激を受けた若手の漫画家が大きくはばたいた場所だ。
けれど、このトキワ荘にしてみても、やっぱりひとつの「志」のもとに集まっている人達なのだ。
誰よりもおもしろい、マンガを描きたい。
この思いだけが彼らを突き動かしていたし、お互いをリスペクトし合っていたのも事実だろう。

志をもった仲間とともに切磋琢磨していく場所であることは、天狼院もトキワ荘も、そしてこの物語のこの場所も全く同じなんだ。

ああ、だからか。
わたしはこの物語に共鳴して、巻き込まれてしまうのだ。
どうしても目が離せないし、まるで自分がこの物語の中にいるかのように感じてしまうんだ。

うかつに手を出さなければ良かったのかもしれない。
いつのまにか、この物語から、一瞬も目が離せなくなってしまった。
まだ物語は続いていて、いつ終わりを迎えるのか、分からないのに。
いっそ、読まなければ良かったのか……?

いや、そんなことはない。
この物語に共鳴したからこそ、いま、こうして前を向いていられるんだ。
どれほど困難な道のりであるか、分かっていたとしても。
その道のりを歩むと決めたからこそ、立ち向かう勇気を、与えてもらっていたんだ。

梁山泊。
この物語に出てくる、多くの猛者が集まる、みずうみのなかにある島の名前。
この場所が巻き起こす歴史から、目をそらすわけにはいかない。
北方謙三が紡いだ「水滸伝」という物語から、勇気を受け取ることができるだろう。

***

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