プロフェッショナル・ゼミ

28歳OLがもう一度手にした20分休みで見えてきたモノ《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:紗那(プロフェッショナルゼミ)

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴ると古びた教室という小さな箱を一斉に飛び出す。
下駄箱で慌てて靴紐を結んで走りだしたあの頃の私は、あの20分間を全力で遊び尽くしてやろうと必死だった。
そこには今しかなかった。今、遊ぶこと。今、楽しむこと。今、走り出すこと。今……。

「でさ、思い返すと小学校の20分休みの全力っぷりってやばくない?」
「確かに。20分って今考えると超短いよね? まず、教室から校庭まで出るのに3分、何をして遊ぶか決めるので2分。ここで既に5分経過じゃん。残り15分しかないのにその15分間で、全力で遊んでたもんね」 
「今、15分休んでいいよって言われてもトイレ行ってスマホチェックしかできない! コンビニ行くのも躊躇するもん!」
「そうそう! コーヒーは飲みたいけどコンビニ行くだけで休憩終わるという葛藤ね!」
「ついでに、最後の3分くらいは休憩後の仕事の山を思い出してうんざりタイムになるやつ!」
「わー、わかるわかる! 無駄にやりかけの仕事思い出しちゃうあれね! 昼休みの1時間でさえあっという間なのに20分休みなんて一瞬だよね!」
その日は大学時代からの女4人で集まっての定例女子会だった。

28歳女子会の本日の議題。1.結婚に煮え切らない友人の彼氏問題 2.今の仕事を続けるか転職するか問題 3.20分休みの思い出について(追加議題)

社会に染まり、埋もれていく不安と迷いの中にいる女子会のテーマでなぜか小学生の時、授業の合間にあった20分休み(中休み)が議題に上がった。

ここで一度、あなたにもあの輝かしき20分休みという全力の時代を是非思い出して欲しい。

私は決して運動神経がいい子ではなかったが、20分休みは一目散に校庭にでて、ドッジボールや大縄跳びをした。まだ自分が運動音痴であると認識する前の私は、必死にボールから逃げるあの時間が楽しくて、真っ直ぐに駆け出して全力で20分という時間を使い切っていた。
どうしてあんなに20分しかない時間を謳歌することができたのだろうか。
将来とか不安とか社会の難しいことがまだわからない小学生の私には、その一瞬が全てだったのだ。だから、その一瞬一瞬が大切で懸命に生きていたのかもしれない。もう二度と戻ることはできないであろう、あの瞬間が懐かしくて、恋しくて、いい大人であるはずの私達は、しばらくあの時代の奇跡について談議した。

「あー、いいなあ、20分休み。会社でも昼休みにプラスして導入してもらえないもんかね? みんなでドッジボールとか?」
「いやいや、もうあんなにはしゃげない。それになんで上司とドッジボールしなきゃいけないの!」
「確かに、日頃の鬱憤で本気で当てちゃいそうだわ」
「それはまずい! でも逆に気を使って当てられないかも? 『お気遣いドッジボール』みたいな。だけど、スーツでドッジボールを想像したらかなり笑える!」
「空気読んで年次順に当たっていかなきゃいけないんじゃない!」
「えー。それはつらすぎ。でもイケメンの先輩にボールかばってもらったら、キュンだよね!」
「やばい! それは、間違いなくキュンなやつ! 願わくば独身男性で!」
最後のキュン話にだけは、全員一致で大きく頷く迷える女たち。

私はその会話をしながら、ずっと考えていた。
確かにあの20分休みの感覚はもう失ってしまった。だけど、最近の私はどこかでこの感じに似たものを感じていたような気がするのだ。

それは一体……どこだったか。

あ。

それは天狼院書店だ。

天狼院書店というのは、ちょっとおかしい。
いや、訂正しよう。
だいぶおかしい。
書店なのに、ライティングしたい人、本気でカメラを勉強したい人、落語が好きな人、劇団なんかもやっていて、そこにいる人は皆全力だ。
好きなことを本気でやりたいという人が集まっている。
そしてみんな面白い。悔しいくらいに面白い。本来、普通でありたいタイプの私が、自分の普通さに苛立ちを覚えるくらいみんな面白いのだ。

考えてみて欲しい。
大の大人が仕事でもなく、むしろお金を払って毎週5000字の記事を投稿する。そんなことは好きなことか、もしくは楽しい気持ちがなければ絶対にできない。私だって現在、こうして貴重な土曜日の時間をPCと睨めっこして締め切りと戦いながら過ごしているのである。そんなことができるのは楽しいからだ。
毎日、真面目にネタ探しをし、面白いものを書きたいとウズウズしているような大人は、普通の生活ではなかなかいない。
面白いものを面白いと大絶賛し、どうしたら面白いものが書けるようになるのか皆真剣に向きあって考えている。

また、カメラを学ぶためのフォト部では、貴重な週末を使ってカメラ片手に集団で撮影をする。遠目に見たら、ただの変な集団だ。初めてその光景を見た時、あまりの異様さに正直ギョッとしたが、気づいたらいつの間にか自分もその集団の一人になっていた。
最高の一枚を撮るために地面を這って撮影したり、草むらの中から覗き込んだり、後ろ姿を隠し撮りしたり。普段は不安定なハイヒールを履いている自分の足に、ペタンコブーツを装備して行った撮影の後は、ブーツにたくさんの葉っぱや土が付いていて、泥んこ遊びに夢中になった子供みたいな自分が心底可笑しくなる。
年齢も職業もカメラ暦も全く異なる人たちが
「あー、このアングルいいですね」
「光の使い方が上手いですね」
なんてこぞって言い合う。
前回なんて笑っちゃうことに土手で凧あげをしたのだ。
凧をあげるモデルさんを必死に追いかけながら、すかさずシャッターを切る。
その一瞬を捉えたくて、1秒も無駄にしたくないという気持ちで無心で走る。走る。大人になってあんなに全力で土手を走ることになろうとは想像もしていなかった。そうして走っているうちに、まるで子供に戻ったみたいな不思議な気持ちになるのだ。

そういう楽しいことに全力で取り組むのが天狼院書店であり、そこに集まる人々だ。

そこで感じる「全力で楽しむ」という感覚、「真っ直ぐな気持ち」は、間違いなくあの20分休みに感じていた、その一瞬を生きる高揚感にとても似ている。私はいい大人になった28歳の今でも、天狼院のおかげで20分休みの感覚をもう一度手に入れることができたのだ。

だけど、天狼院書店に通えば通うほど不思議な気持ちが湧き上がってくることに私は気がついた。

なんだろう、この気持ち?

うまく言葉にできない。謎の感情。少しだけ胸が「きゅっ」となる感覚。
「楽しい」だけど「苦しい?」

私は天狼院に通うようになってから、あることに気づいてしまったのだ。

それは自分が嘘つきだということだ。

面白くて熱烈で、好きなものを好きと言う天狼院の人と知り合えば知り合うほど、自分が大嘘つきだということに直面しなくてはいけなくなり、それが少し苦しかった。

大人という年齢になった私は、自分でも気付かぬうちに驚くほど嘘が上手くなっていた。社会性というものを身につければ身につけるほど、嘘だらけの自分になっていくのだ。

小さな違和感から目を背け、社会とはこういうものだから仕方ない。大人は我慢しなくちゃいけない。甘えたことは言っちゃいけない。あがいてもどうせ世の中は変わらないのだから、上手く丸く生きようとしてきた。

自信を持って好きとは言えない仕事を笑顔で引き受け、日々感じる小さな疑問を消しゴムで消して、本気で目指す自信もないのに「昇格したいです」と流されるままに口からこぼし、自分で自分に嘘の呪文をかけ続けていた。

仕方ないじゃん。だって世の中はそういうものでしょう? 
上手く生きるにはそうするしかないんだから。
そうやってなんとか自分を納得させてきた。

私は社会という四角い箱の中にきっちり収まるように上手く生きなきゃとスライムみたいに形状をコロコロ変えて生きていたのだ。
そんな中で天狼院の全力で楽しむ真っ直ぐな人々と向き合うと、嘘つきスライム野郎な自分を痛烈に認識せずにはいられなかった。

さらにスライム状態の私は、できてしまった小さな違和感という、ささくれさえも必死で見逃して、「気のせい気のせい」と言い聞かせてきた。だけど、見逃した小さな違和感は、また形を変えて新たなささくれとなって出てくるのだ。
「あれ? おかしいな、治ったはずなのに」
そして、イタチごっこのようにくりかえしていたささくれは、いつの間にか、バイ菌が入って膨れ上がるようになり、私に問う。

「おい、お前、嘘ついてないか?」
そう、私は嘘をついていた。

天狼院書店で楽しいことや面白いことに全力で向き合った時、初めて私は嘘をついていた自分に気づいたのだ。
20分休みと同じような気持ちを28歳になってもう一度経験することができた私は、やっと自分がスライム人間になっていたことや、ささくれから目をそらしていたことに気づいたのだ。

本当のことを言うと、こんなこと気づきたくもなかった。
気づかない方がよかった。
何も気づかずに、ずっとスライムでいられたらよかったんじゃないかと思う。
何も考えず、何も望まず、疑問すら持たずスライムのままでいられたら、それはそれで平和だ。
ささくれだって、何度できたって見逃してあげればいいだけだ。
そういうもんだって言い聞かせて適当に対処して生きていればよかった。
だけど、そいつの問いに気づいてしまった私はもう見過ごすことができそうにない。

「お前、嘘ついてるだろ?」
そうやってささくれに聞かれた私は、もう参りましたと手をあげるしかできない。

そうです。嘘つきでした。

気づいたからといって何か大きなことが変わるわけではない。
大人の世界では、そういうものは少なからず仕方ない。
だけど、私たちは考えることをやめてしまったらおしまいな気がする。
だから、私はできてしまったささくれの主張を逆に聞いてやろう。

「お前は何で、できちゃったんだ? どこが違和感なんだ? お前の言い分も聞いてやるよ!」
と、じっくりささくれと話し合ってやろうじゃないか。

「私たちの悩みもずいぶん大人になったもんだよね」
女子会の終わりで友人がしんみりとそう言う。
「大学生の頃は飲み会して、好きな人の話とかサークルのこと話して、お笑い見てばっかりだったのにね」
「確かに。みんなで大学のパソコンでひたすらお笑い動画見てたね!」
「でも、あの頃はあの頃でなんか悩んでたよね?」
「あー。よく思い出してみるとそうだね。悩みあったわ! きっとおばあちゃんになっても何かしらで悩んでるんだろうね」
「老人会での三角関係とかかね?」
「えー! なにそれ!」
私たちはいくつになっても悩みがつきない。
仕事をして、恋愛をして、好きなことをして、何が自分にとっての正解か、どの道が安泰かなんてわからないけれど、その一瞬を楽しむことがその先を明るくするためのひとつのコツかもしれない。

「そういえば、思い出したんだけど、大人のための20分休みあったよ!」
そう口を開いた私の顔を友人3人が目を丸くして見る。
「池袋にね!」
私たちはもう目を輝かせて、校庭でドッジボールを精一杯楽しむ子供には戻れないけれど、大人なりの20分休みが池袋にはあるのだ。

だから、そこで私は一瞬を楽しむことにしよう。
そして、あなたもその一瞬を味わいたいなら、一度来てみたらどうだろう。
嘘つきの自分に気づくという痛みがあったとしてもそれ以上の効果は、あると思う。

***

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