プロフェッショナル・ゼミ

オンナ30代、タイムリミットに怯え凍っている暇はなし《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:土田ひとみ(プロフェッショナル・ゼミ)

【女盛り】
「女の、いちばん美しい年ごろ。女の肉体が機能的にもっとも盛んになっている年ごろ」

ほほう。
じゃあ、今の私は「女盛り」だよね。 だって、母乳がでるんだよ。女の肉体、これ以上ないってくらい盛んに機能しているんじゃないのかい?

……だよねぇ!? 鏡さん!(お願いだから、そうだと言ってくれ!)

私は朝のメイクの途中、スマホを手に取り、「女盛り」の意味を調べていた。なぜなら、鏡の中の自分が「女盛り」に見えなかったからだ。

元々の顔の作りはどうしようもないとして、何だかお肌がくすんでいるし、クマも出てるし、乾燥もしている。

「ああ、そうか。昨日のお風呂上がりに、化粧水すらつけずに寝ちゃったもんなぁ」

0歳児の育児に奮闘している私は、お風呂上がりにぷりぷりお肌の我が子にベビーローションは塗るが、自分のカサカサお肌に化粧水をつけることを忘れる。最優先事項が子育てになった今、つい、自分のことはおろそかになる。(ついでに家事も手抜きになる)

おろそかにしているなー、と自覚はしていても、鏡があまりにも現実を見せてくれると、がっくりとしてしまうのだ。

「もっと、仕事も、子育ても、妻としても、オンナとしても盛んでいたい!」

こんなことを望むのは、欲張りなのかな?
でも、叶うのなら、全部欲しい。

けれど、いつだってオンナにはタイムリミットがある。
「若くて綺麗」と言われるタイムリミット。
「結婚」のタイムリミット。
「出産」のタイムリミット。
これらを踏まえた上での「キャリアップ」のタイムリミット。

このタイムリミットは、人それぞれで、結局は自分自身が決めているものなのだけど、オンナ独特の悩みであることは共通しているんじゃないかな、と思う。
だって男性は、この、いくつになっても付いて回るオンナの悩みを、ほとんど考えていないだろう。

私はいつもひがんでいた。
男性はただがむしゃらに、自分の夢だの、仕事の成果だのをひたすら追い求められるけれど、オンナにはタイムリミットがあるんだから。
結婚や出産の時期をプランニングした上で、自分のキャリアをどうしていくか、常に考えなくちゃいけないんだから。

「僕の仕事がひと段落するまで、結婚は待ってくれ」

なんてセリフを簡単に言うけれど、こちらとしては時限爆弾を抱えている気持ちだから、ひたすら焦ってしまう。

男性は成功してから、若い妻をもらえばいいのかもしれないけれど、女性はそうはいかない。
「女盛り」のうちに、すべてを叶えていなければならないんだから。

20代が終わろうとした頃、

「結婚や出産は人それぞれ。人と比べるものじゃない」

と、結婚を焦る私に、誰かが言ってくれた。誰かは忘れたけれど、たしか、結婚も出産もしていた人だったと思う。
通り過ぎれば、本当にそう思うのかもしれないけれど、「30歳までに結婚!」と必死になっていた私には分からなかった。

32歳で第一子を出産した私は、全国平均の30.6歳よりも、ちょっぴり遅い。周りの友人たちに比べても、やはり遅めだ。

「いつ、結婚できるのだろう? いつ、出産できるのだろう?」

と思っている時期は、本当に不安だった。
結婚も出産をするのも、個人の自由だし、何が正解というわけではないと思うけれど、私は人一倍願望が強かった。

どうしても、「お嫁さん」や「お母さん」になりたかったのだ。そして、おしゃれして仕事もして、元気ハツラツなワーキングマザーを夢見ていたのだ。

こんな夢を描くようになったのは、目の前に憧れの人が現れたからだ。
社会人1年目になり、同年代の友達だけでなく、“大人”と接する機会も増えた。

“大人のオンナ”は色んな人がいた。
美しくて色気もあって、不倫している人。
仕事ができて、どんどん出世して独身を貫いている人。
まんまるのボディと顔を持ち、子供を育てている人。

色んなオンナの中に、私の憧れの人はいた。
スタイルが良くて、いつも髪をきちんとまとめていて、きびきびと仕事をする人だった。ユーモアもあって、可愛らしくて、センスも抜群だ。
休憩時間に、この女性の横顔に見とれていると

「うちの子がさ〜」

と話し始めたから、私は驚いてお茶をひっくり返しそうになった。

「こ、こんなに綺麗で仕事も完璧で、子供まで育てているんですかー!?」

私は憧れの眼差しで女性を見つめた。
すごいなあ……。
私は、職場と家の往復だけでヘトヘトで、家に帰ったら自分の世話すらもままならないというのに。
ご飯も作る気になれず、買ってきたもので済ませたり、メイクも落とさずにベッドにダイブすることもしょっちゅうあるというのに。

それなのにこの女性は、仕事の後、家族のためにご飯を作り、子供の世話をし、そして自分のお肌のお手入れもしているんだろう。(20代前半の私のお肌よりも、ずーっと綺麗に見えるんだもの!)

「すごいなー! 私もこんな風になりたいなぁ!」

あの日から、私の目指すところは「おしゃれで綺麗で仕事もできるワーキングマザー」に決まったのだ。

だけど、どうだろう。
結婚も、出産もしてみたけれど、憧れの女性とは大きくかけ離れている気がする。
その証拠に、今、目の前の鏡は私に現実をぶつけてくる。

ボサボサの髪の毛に、ガサガサのお肌。くすんでいてクマもある。
自分の外見だけじゃない。
家を見渡せば、洗濯物の山。ご飯の支度はできていない。二階の掃除はいつするんだろう、空き巣にでも入られたような状態のまま何ヶ月も放置されている。
夫のお客様にお茶を出せば、薄かったり濃かったり、いつも上手に入れられない。
最優先事項と思っている子育てでも、行き詰ることばかりだ。

「ああ、理想と全然違う!」

いい妻でありたい。
いい母でありたい。
いい仕事人でありたい。
いいオンナでありたい。

私は一体、何を目指してきたんだろう。
何もかもが中途半端だ。
高望みしすぎなのかなあ……。

本業の仕事の他に夢も描き、今は文章も書くようになった。
楽しい時間ではあるけれど、「もっと上手くなりたい」と思えば思うほど苦しい時間でもある。
しかも、オンナとしてのタイムリミットがあると思えば思うほど、気持ちばかり焦る。

「早く理想の自分になりたい」

考えれば考えるほど、私は凍りついてしまった。
しかし、現実にやらなければ行けないことはどんどん積み重なってくる。

まだ0歳の子供は、泣いたらあやさなくてはいけないし、授乳やオムツ交換もある。
毎日ご飯は食べなくてはいけないし、洗濯だってしなくてはいけない。
あれしなきゃ、これしなきゃ、と思っているうちにあっという間に日が暮れる。

完全に日々に流されている。

「こんなのでいいのかな。本当の自分は、これでいいのかな」

気づくと、歯をギリギリと食いしばっている自分がいた。
ああ、20代の頃から何も変わっていない。

20代の頃の私も「30歳までに」と自分が決めたタイムリミットに苦しんでいた。
30歳までに、自分のやりたい道を見つけるぞ。
30歳までに、結婚するぞ。できれば出産もするぞ。
こんな風に目標を立てたはいいが、実際は日々の生活に流されていたように思う。

仕事はやりがいが増してきても、ヘトヘトにくたびれていた。キャリアアップを考えても「何を目指すか」が決まっていなかったので、いつもフラフラと迷いながら進んでいた。
恋愛も、上手くいかないことだらけで、結婚なんて夢のまた夢だった。
「このニキビが治ったら、デートの約束をするぞ!」
なんて思っていても、日々の仕事の疲れで、メイクも落とさずに寝てしまうことも度々あった。
失敗をして、恥もかいて、30歳というタイムリミットが過ぎても何も掴めなかった。

「20代の頃も、今も、ただ流されているだけなのかな」

「おしゃれで綺麗で仕事もできるワーキングマザー」を目指して突っ走ってきたけれど、私の目指すところには届かずに、このままタイムリミットを迎えてしまうのではないのかと不安になった。
今の私は、理想の姿なのだろうか……。

鏡に映った自分があまりにも情けなくて、悲しくて、私は家事を中途半端にしたまま外へと出た。
娘を抱っこ紐に入れ、ブラブラとあてもなく歩き始めた。

春の日のような気温と天気予報では言っていたけれど、日が傾いたこの時間は少し肌寒かった。
旧家が並ぶ細い道を抜け、図書館まで歩いた。何か本でも読んで気晴らししようかと思ったけれど、もう閉館時間が近かったので辞めた。
近所に歩いて行けるところといえば、あとはコンビニくらいしか思いつかなかった。
だけど、お腹も空いていないし、何も欲しくないし、寄る気にはならなかった。
夕方5時になると、サイレンが鳴った。
さすがに風も冷たくなってきたし、家に帰ろう。
私は、何も答えが出ないまま、トボトボと元来た道を戻った。
旧家が並ぶ細い道までやって来た。

「あ」

私は立ち止まった。
旧家の間に、小さなお寺があったのだ。そういえば、あった、という感じだ。
お寺の門の脇には、宅配牛乳のポストと、ピアノ教室の案内のポスターが貼ってある。
そして、その横に、大きな半紙に俳句が書いてあった。

「精出せば 凍る間もなし 水車」

繰り返し、ボソボソと声を出して読んでみた。

くるくると回り続ける水車を想像した。極寒の地で、周りは真っ白な雪に囲まれ、ぴゅうぴゅうと北風が吹いている。近くにある小屋の屋根には大きなつららがぶら下がっている。吹雪で扉が叩きつけられ、扉のレールが凍りついている。窓も、壁も、全部が凍りついている。
だけど、くるくると水車は回り続けている……。

「ああー……」

私は一人、うなだれた。
自分自身が、すっかり凍り付いていたことに気がついたからだ。そしてそれは、精を出して動き続けていないからだと気付かされたのだ。
日々、やらなければならないことに流されて、ただぼうっと生きていいる毎日だと気付かされた。
精を出して「こうなるぞ!」と意気込んでいるのとは違う。

もしかしたら水車も、ただ水の流れに任せて動かされているだけかもしれない。
だけど、私は人間だ。
しかも、勝手にタイムリミットを決めつけるオンナだ。
自分が望む姿の方へと、自分の足で歩いていけるはずだ。
くるくるとその場を回る水車でさえ、凍りついていないのに、オンナである私が凍りついてどうするのだ。

私は想像の中の水車が回る雪景色を、オンナの象徴である口紅で真っ赤に染めてやった。
そしたら、ぼうぼうと炎が立ち上り、あたり一面の凍りついていたものがなくなった。

タイムリミットに怯えて凍りつかせていたのは自分自身だった。
自分が精を出して、一生懸命に動き続けていたら、周りがどんなに寒かろうが凍りつくはずがない。
落ち込むことがあるのは当たり前だ。チャレンジしてたら失敗することもあるのは当たり前だ。
周りがどんなに寒かろうが、動き続けてたらいいのだ。
タイムリミットだって、考えようによっては味方なのだ。それまでに達成しようという力がみなぎって来るからだ。

「やってやろう。オンナ特有のタイムリミットを味方につけて、動き続けよう」

私の想像の中の水車は、水を抜け出し、草原を自由に走り始めた。
どこまでも、どこまでも。

***

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