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記事:けだもん(ライティング・ゼミ)

「どうぞ、遠慮なくお飲みください」
打ち合わせで訪問した客先にて、机の上に飲み物が差し出される。
そこに注がれていたのは無色透明の液体。
なんだ水か。などとは言わない。すべての飲み物の原点にして含有水分量の頂点。正真正銘ノンカロリー。物足りないという人はいても飲めないという人はまずいない。ある意味絶対に外すことのない飲み物。
今は客先との打ち合わせで緊張と会話により喉がカラカラ。ありがたくいただくことにする。

……が、本当に水なのか? これは。
カップを口元に持っていくと水にあるまじきふくよかな香りが鼻をつく。
笑顔でカップの中身を飲んで見せる相手。私もここまでカップを持ち上げてしまったからにはもう手遅れだ。さすがに口もつけずに机に戻すわけにはいかない。
なめる程度、ほんの少しだけその透明な液体を口につける。

空前絶後の、超絶怒涛の風味が広がる。私が恐れ、私に嫌われた存在。めまい、吐き気、頭痛、あらゆる不快感をもたらす元凶。そう、それこそは……
日・本・酒!

なぜだ。なぜここで日本酒が出てくるのか。
水みたいなものと言う人はいるが、「みたいな」という言葉がつく時点でもう水とは別物ではないか。
しかもこれはお手軽にほろ酔い気分の味わえる高濃度アルコールの味。これが地酒とか、客先の会社とゆかりのある代物であれば相手との話題にもなるかもしれないが、苦手な私からすれば味もなにもわかったものではないし、相手を見る限りそんな雰囲気でもない。
いやそれ以前に今日は車で来てしまっているし。更にこの後にも別の客先との打ち合わせが残っているし。これからの仕事に支障がありすぎる。

もしや相手は私を貶めようとしているのか? まずここで私を酔わせて自分に有利になるように話を進め、その後飲酒運転で私を警察に突き出すというのか。
いや待て、今回はそこまで込み入った話はないはず。会社間のトラブルも起きていないし、そこまでする意味は一体なんだというのか。

そうして考えている間にも冷や汗が噴き出す。机に置き忘れたカップが私の手元で震える。そこに張られた水面は、乱れに乱れて何も映らず。明鏡止水ってなんですか?
目の前にいる相手の顔が歪んで見えるのは、酔いの影響だけなのだろうか……。

「……あの、大丈夫ですか?飲み物でも飲んで一息つかれてはいかがですか?」

心配そうな顔をする相手。手元には日本酒とは似ても似つかぬ漆黒の液体。
それはごく普通のインスタントコーヒー。もちろんアルコールは入っていない。どうやらさっきのはあまりのショックによる私の妄想だったようだ。

……でも、日本酒のほうがまだよかったのかもしれない。

私はコーヒーが苦手だ。味はもちろんのこと体質的にも合わないようで、飲むと吐き気やめまい、軽い頭痛を引き起こし、ひきはじめの風邪のような症状に陥ってしまう。更に飲んだ後に喉からむせあがってくる香りも苦手で、息をするのすら嫌になってしまう。
更にそこへくる猫舌というダブルパンチ。
私にとってコーヒーとは、お酒が飲めない人にとっての日本酒のようなものだ。
少し飲むだけでも一苦労。コップ一杯飲み干したなら、すぐにもベッドに倒れたい。
できることならもう二度と口にしたくはない。

とはいえ、仕事の都合上、コーヒーをまったく飲まないわけにもいかない。
会社であればお茶を出してくれる可能性もあるのでまだ救われるが、一番困るのが喫茶店での打ち合わせ。さすがに客先との打ち合わせでキャラメルフラペチーノを頼む勇気はなく、半ば恐怖心にかられるようにコーヒーを頼んでしまう。

そういった経緯でコーヒーを飲まざるを得ない場合には、口の感覚をシャットアウトして一気に流し込む。そして打ち合わせ後に大量の水とスイーツで「口直し」をすることになる。そうでもしないと、数分間ではあるが後で本当に寝込むことになる。

お酒であれば、「アルハラ」という言葉が浸透しているように、飲めない人に対する配慮は出来上がってきているとは思う。少なくとも私の周りでは。
お酒が飲めない人に対し残念がる人はいるが、それでも無理やり飲ませる人は見たことがない。
ただ、「とりあえずビール」という考えは場所によっては根強く残っており、飲み会の注文で真っ先に聞かれるのはビールの数。ビールが飲めない人はその後に追加するという風景はよく見かける。私はビールも好きではないが、飲めないわけではないので、そのように聞かれてしまうと周囲に流されてビールを頼んでしまうことが多い。

そうやって「普通」が優先されることについて文句を言うのは簡単だが、なんだかんだ従ってしまう私もそれを消極的に肯定しているのと何ら変わらない。
いじめっ子だけでなくそれを見て見ぬふりをする人によっていじめがなくならないように。

「普通なら飲む」という概念を破るのは今の私にはまだ難しく、アルコールやアレルギー物質といった確固たる根拠がないと、ただの好き嫌いと一緒に考えてしまう。
「いい大人が好き嫌いなんて恥ずかしい」という気持ちもあるので、仕事に直接影響が出ない程度の不快感なら、我慢してしまおうという考えが勝ってしまうことも多い。結局その度に体調不良と後悔に苦しむことになるのだが。

きっとその「普通は飲む」という固定概念を誰よりも強く持ってしまっているのは、他ならぬ自分自身なのだろう。
だから客先にコーヒーが飲めないことを伝えられないし、アルコールの席では好きでもないビールを頼むことになってしまう。

今は個性と多様性の世の中だもの。そんな臆病な考えはいずれ時代遅れになるはず。頼めば意外とすんなり受け入れてくれるかもしれない。むしろそこで拒むくらいなら私でも飲めるコーヒーを作ってもらいたいものだ。

よし、今度の打ち合わせでは正直に言ってみよう。

おねがいします。お水をください。
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2017-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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