メディアグランプリ

スターバックスの「さくら」シリーズを飲むと、ほろ苦い気持ちになる


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記事:土田ひとみ(ライティング・ゼミ)

 

 

また今年もやって来た。

スターバックスの店内が、ピンク色に見える季節。「さくら」シリーズの広告でいっぱいだからだ。

 

桜をイメージした商品が並び、思わず注文したくなる。スターバックスの狙い通り、私は「さくら」シリーズのラテを注文した。

 

混み合った店内に、ようやく一人分の席を見つける。椅子の背もたれに沿わせてバッグを置くと、窮屈になった残りの部分に浅く腰をかける。両ひじを小さなテーブルにつき、両手でさくらのラテを持つ。

まだ熱いかな?

プラスチックの蓋を開けてみると、桜の香りが舞った。

 

「あ……」

 

店内は混み合っていた。両側にも人がいた。

だけど、私は、ひっそりと泣いてしまった。

さくらのラテを飲む前に、この香りだけで。

 

 

 

4年前も、私はさくらのラテを飲んでいた。

故郷山形の二月は、まだまだ雪で覆われている。青空が見える日は滅多にない。

 

山形の総合病院で看護師をしていた私は、夜勤明け、どうしても眠気が治らず、帰宅途中にスターバックスに寄ったのだった。職場から自宅までは車で一時間半。しかも、雪が降った日は、二時間も三時間もかかる。私は、どんなに遠くても実家から通勤することをやめなかった。両親と暮らせるのは、今しかないと思っていたからだ。

 

当時、私は29歳。

この冬が明けて、春になったら東京に行くことが決まっていた。

生まれて初めての上京だ。

 

山形には、友達がたくさんいた。職場の仲間とも、励ましあいながら楽しくやっていた。一緒に飲みに行く先生たちも、先輩たちも、みんな大好きだった。仕事は忙しくて大変だったけれど、それなりにやりがいもあり、楽しくやっていた。

居心地がいい場所だ。辞める理由なんて一つもない。だけど、就職先の面接では必ず聞かれた。

 

「なぜ、今の職場を辞めることにしたのですか?」

 

私は嘘くさいくらい真っ直ぐに、

 

「何も理由はありません。ただ、新たなことにチャレンジしたいだけです」

 

と答えた。

 

山形を出ることに決めたのは、20代のうちに何も叶えないで終わるのが怖かったからだ。

 

結婚もできない。

キャリアアップしたい方向もわからない。

語れる夢もない。

 

このまま30代に突入することが恐ろしくなったから、意を決して上京することにしたのだった。

安直だったと思う。

「東京に行けば何か掴める気がする」

なんて、昭和の話みたいだ。

 

東京の就職先が決まり、退職の準備も順調だった4年前の2月。私の胸には、少しずつ少しずつ、寂しさが募っていた。

友達の顔、職場の先輩の顔、両親の顔……。皆と離れることが、当たり前だけど寂しかった。

 

「自分で決めたことなのにバカみたい」

 

込み上げてくる涙を飲み込もうと、さくらのラテをぐいっと飲んだ。

 

ラテが熱いのがいけないんだ。

涙がこぼれてしまったじゃないか。

さくらの匂いがいけないんだ。

切なくなるじゃないか。

 

一口だけ飲んだ後、私は机に突っ伏して泣いた。平日の午前中、店内が混んでいなかったのが救いだった。

泣いて泣いて喉が渇いて、冷めきったさくらのラテを飲んだら、甘ったるいのに、なぜかほろ苦かった。

 

 

 

4年前の私は、大好きな故郷を離れるのが寂しくて泣いていた。それを思い出した今の私は、4年前の私に感謝して泣いた。

 

「寂しさに負けないで、勇気を出してくれてありがとう。あの時、勇気を出したから今の私があるよ」

 

今の私の姿を4年前の私は想像していただろうか。

いや、絶対にできっこない。

 

東京に出て行ったはずなのに、嫁ぎ先の奈良のスターバックスでさくらのラテを飲んでいるのだから。

看護師しかしたことがなかったのに、スターバックスでパソコンを広げて記事を書いているのだから。

 

あの時、上京したおかげで、私は夫と出会うことができた。

あの時、上京したおかげで、自分に自信を持つことができるようになった。

あの時、上京したおかげで、池袋にある面白い本屋さんと出会い、ライティングを教えてくれる教室に通うことになった。

 

まさかこんなことになっているなんて、と改めて思ったら笑えてきた。だって、人生、どうなるかさっぱり分からないんだもの。涙をぬぐい、今度は笑いをこらえた。でも、にやけてしまう。泣いたと思ったら今度は笑っているなんて、どこまでおかしい人に見えるだろう。でも、止まらない。

だって、さらに4年後の私を想像したら、全く想像ができなくておかしくなってしまったんだもの。

 

どこに住んでいるかも、子供は何人いるのかも、どんなことを仕事にしているのかも、全く想像ができないのだ。今、思い描いている以上のことが起こっているのかもしれない、いや、起こるであろう。

 

「人生を変えるライティング・ゼミ」になんて参加してしまっている今、さらに面白く人生が発展する予感がしてならない。

4年後の私は、どんな味のさくらのラテを飲んでいるかな。

 

 
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2017-03-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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