メディアグランプリ

恥をかかされたシマシマなあいつに、謝らなきゃいけないのは私の方だった


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記事:中村 美香(ライティング特講)

 

「シマウマは走らないんですか?」

私がそう聞くと、一瞬、間があって、その場にいたみんなが、笑いだした。

 

発表者の飯島先輩もお腹を抱えて笑っていた。

 

はて、私は、そんな変な質問をしたのだろうか?

 

***

 

私は、大学受験に、失敗した。

第一志望の大学に入れず、親と相談した結果、浪人は難しいということになった。

滑り止めで受けた全く思い入れのない短期大学に行くことになった私に、憧れの大学に入学した友だちが

「よかったら、サークルに一緒に入らない?」

と、声をかけてくれた。

プライドとか、どうでもよかった。

素直に、嬉しかった。

二つ返事で、鎌倉行きの新歓ハイクに参加したのは、“旅と歴史のサークル”だった。

毎週、歴史について話し合い、年に4回ほど旅行するらしかった。

憧れの大学の先輩たちはキラキラしていて、とても優しかった。

「ぜひ、サークルに入ってよ」

なんて言われて、断る理由はなかった。

ところが

「興味がある時代に合わせて班を選んでね」

そう言われて、正直戸惑った。

だって、歴史になんて、全く興味がなかったから。

サークルに入った後に、「旅」にも「歴史」にも興味がなかったことに気がついたのだ。

決めかねる私の様子を察して、ある先輩が

「歴史に関係のない班もあるけど……」

と、教えてくれたのが、話し合うテーマが「日本人にまつわることならなんでもいい」という班だった。

一応、日本人にまつわる「歴史」なら何でもいいという建前はあったようだったけれど……。

日本人か……。

 

とりあえず、お試しで、その班に見学に行くと、第1回目の定例会は「恋愛」についての発表だった。

通常、発表者はひとりのはずだったけれど、今回だけは、特別に、男性と女性の先輩がふたりで発表するということだった。

男性目線、女性目線の恋愛の歴史や、思いの違いなどが発表されたのだと思うけれど、内容について正確にはもう覚えていない。

だけど、とても刺激的だったことと、発表者の男性が、一緒に発表した女性のことを多分好きなんだろうなと感じたことだけは、覚えている。

 

「来週のテーマは『結婚』だよ!」

と、帰り際に言われた。

確かに、日本人に関係はあるけれど、本当に何でもアリなんだな……と、節操がないようにも思えた。

けれど、そのカオスのような感じが、心地よくもあり、私はその「日本人冒険班」に入ることにした。

 

3年生の先輩から発表し始めて、2年生、1年生と回ってくるようだった。

だから、私が発表するのは、年度の後半だと聞いて、一安心した。

しばらくは、参加者のひとりとして楽しもうと思った。

 

毎回、いろいろな身近なことに関して、先輩たちが発表してくれて、楽しい時間を過ごしていた。

そんな中、3年生の一番最後に、飯島先輩が発表した日に、あれは、起きたのだった。

 

飯島先輩が発表に選んだテーマは、「競馬」だった。

もはや、日本人とか、全く関係なかったけれど、競馬好きの飯島先輩がすごく楽しそうだったから、そんなことは、もうどうでもよくなっていた。

 

飯島先輩の思いが詰まったレジュメが、ひとりひとりに配られて、その日の定例会は始まった。

競馬の歴史とか、サラブレッドの話とか、馬券の買い方とか、競馬の魅力とか、今まで、見たことがないほど、満面の笑みで、先輩は、発表していた。

人は、好きなことを話す時に、こんなにも幸せそうな表情をするんだなと、こっちまで嬉しくなったほどだった。

 

そして、競走馬の「模様」の種類についての説明がされていた時、私の頭の中に、ある疑問が浮かんだ。

 

茶色の馬はもちろん、葦毛の馬も、白い馬も走るんだから、シマ模様のアレが走ってもおかしくないのに、なぜ走らなんだろう?

 

そう思って、じっと飯島先輩を見ていたからだろうか? 飯島先輩は、私の視線に気がついて

「なんか気になる?」

と、笑顔で聞いてくれた。

その心遣いを有難く思いながら

「シマウマは走らないんですか?」

私がそう聞くと、一瞬、間があって、その場にいたみんなが笑いだした。

 

飯島先輩もお腹を抱えて笑っていた。

 

はて、私は、そんな変な質問をしたのだろうか?

 

こんなにみんなが笑うということは、きっとなんかまずいことを言ったんだな!

けれど、はっきりとした理由もわからず、少し恥ずかしく思っていると、ひとしきり笑い終わった飯島先輩の言葉に、私は驚いた!

「シマウマはさ、馬じゃないから」

「え?」

「シマ模様の馬じゃなくて、シマウマは、どっちかというと、ロバに近いんだよ」

「そ、そうなんですか?」

顔が熱くなった。

私は、シマウマを誤解していた。

シマ模様の馬だと、はっきり認識していたわけではなかったけれど、ぼんやりとそう思っていたかもしれない!

「すみません」

「大丈夫だよ! いやあ、面白かった」

すっかり、笑いものになり、その日の定例会は終わった。

 

そのことは、しばらくは、思い出すと恥ずかしさがよみがえって来たけれど、時間が経ったことによって、面白話として、私の記憶の奥の方に保存されていた。

 

ところが、最近になって、思いがけず、久しぶりに思い出す機会が現れた。

 

小学2年生の息子に

「シマウマって馬なの?」

と、聞かれたのだ!

セピア色掛かったシマシマを思い浮かべながら、私はこう話した。

「お母さんもさ、シマウマって馬かと思ってたんだけれど、違うらしいよ。どっちかというと、ロバに近いんだって」

「えー? 本当?」

私は19歳で、息子は8歳で、その事実を知った。

 

あの時は、恥ずかしすぎて、記憶から抹消してしまいたかったほどだけれど、今回は割と冷静に、向かい合えた。

 

シマウマと言えば、草食動物の代表みたいに言われて、「草食系男子」の代わりに、「シマウマ系男子」なんて言われることもあるみたいだけれど、そんなに、大人しい、馬の形に近い動物なのに、競馬で走らないまでも、人も乗せないし、荷物も運んだりしない。

それは、なぜなんだろう?

 

四半世紀の年月を越えて、私は、俄かに、シマウマに興味を持った。

 

調べてみると、シマウマは、ウマ目ウマ科ウマ属なのにもかかわらず、馬とは遠縁で、ロバに近いらしいと、改めてわかった。

鳴き声も、ヒヒーンではなく、ワンワンらしい!

馬みたいに、競争のためや、働かせるために、調教しないのは、気性が荒いためできないからだそうだ。

じゃあ、気が強いのかと思いきや、パニックに弱く、強いショックを与えると死んでしまうこともあるらしい。

人を乗せないのも、背骨が弱いからだと知った。

 

なんだ、イメージと全く違うじゃないか!

 

私に、恥までかかせたし、シマウマめ、いいところも全くないのだな! と思ってから、ハッとした。

 

私は、今、人間にとって、意味があるとかないとか、そんな風に考えていたことに気がついたからだった。

 

一見、派手なあの白黒のシマ模様は、サバンナの中では、保護色となり、目立たないそうだし、シマウマは、シマウマで、必死に生きてきたんだな……。

 

イメージと違うからって、恥をかいたからって、穿った見方をしていた自分が恥ずかしくなった。

 

ごめんよ、シマウマ。

君は、馬のそっくりさんでもなければ、馬に劣っているわけでもないんだよね。

 

シマウマみたいに知った気になって、誤解しているものは他にもないだろうか?

 

誤解しているからこそ、気づきにくいかもしれないけれど、時には、例え恥をかいたとしても、真実を知る機会をもてるということは、とても有り難いことなのかもしれない。

 

 

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2017-03-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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