メディアグランプリ

30年もの付き合いになるストーカー


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記事:まつしたひろみ(ライティング・ゼミ)

「よっ! ひさしぶり! 元気してたか?」
やっぱり来てたか。気配は感じていたけれど、相手をしたくないので知らんぷりしていると
「おいおい、シカトかい? ほら、こっち向けよ」
しつこい。返事してないんだから、話しかけないでほしい。
「俺たち、離れられない関係だってわかってんだろ? なあ、こっちむいてくれよー」

いつも突然やってきては、しつこく付きまとってくる。あまり好きではない。どちらかというと嫌い。大嫌い。なのに離れてくれない。

最初に出会ったのは、私が小学校5年生の春だったと思う。初対面だったのに気になった。出会ってからはよく一緒に過ごしていた。でも、名前は知らなかった。
母にも「すごく気になっているの」と話していた。母は私が一緒にいるヤツが何者かわからないのを心配して、「ちゃんと誰なのか聞いてきなさい」と言った。
調べてみたところ、案外簡単に正体がわかった。名前は学校の先生から聞いたことがあった。確か、小学校2年と3年の時の担任の先生だったと思うが、時々そいつの話をしてくれたことがあった。先生はすごく激しいヤツだと言っていた。でも、私が実際に出会ったヤツは先生の話から想像したヤツとは少し違っていた。先生が話していたよりは少しおとなしい感じ。先生が話していたのはジャイアンみたいなヤツで、私が出会ったヤツはスネ夫みたいだった。
ヤツとはしばらく一緒にいたのだが、挨拶もなしにどこかへ行ってしまった。実はどこかへ行ってしまったのも気付いていなかった。母から「どっかいっちゃったみたいね」と言われて、「あ、そういえば……」と気付いた。いなくなったことがわかったらスッキリしたので、いない方がいいんだと思った。

そんなヤツがいたことなんかすっかり忘れていたが、その翌年も突然現れた。
そして毎年毎年やってきた。

私が中学生くらいになった時、しつこさに耐えられなくなっていた。いるのは数ヶ月くらいだというのはわかった。ただ、わかっただけで、その時期はヤツがとにかく付きまとってくる。
「どっかに行ってくれ!」
毎日のように叫んでいた。

ある時は、ヤツのことなんか忘れて、外で遊びまわった。外にいる間は忘れられた。やった! 今日は大丈夫だ! と喜んでいたが、帰ってきた途端ヤツが怒り始めた。
「俺のことなんかすっかり忘れていただろ! だからこうなるんだよ!」
と怒り、なかなか眠らせてくれなかった。泣いて鼻水を垂らしながら「もう許してほしい」と懇願し、いろいろ試みたがなかなか怒りを鎮められなかった。しかし、翌朝には怒りはすっかり忘れて、隣でにっこり微笑んでいた。

またある時には、こうすれば離れられるんじゃないかという手段を考え、実行した。なかなかいいんじゃないかと喜んだのもつかの間、それは強すぎる方法だったので日常生活に支障をきたした。あまりにも支障をきたすので、他の手段を考えなければならなくなった。

そろそろ来るんじゃないかと、その時期になると憂鬱になる。暗い気分になっているところに「そろそろじゃない?」と私が付きまとわれていることを知っている人は、追い打ちをかけるように言ってくる。
わかってるから、わかっているけど思い出したくもないから、言わないで……。

何年も攻防を続けていたが、社会人になる頃には諦めた。ヤツがそばにいるのを感じながら過ごすしかなかった。この時期だけだから、と。
ヤツを感じ始めると、起きた時から寝る時まで忘れられない。ただ、長年一緒に過ごすようになって、ほんのひととき、忘れられる時があることがわかった。お風呂に入っている時だ。その間だけは一緒にいることが嘘のように、楽な気持ちになる。
水に流す、という言葉はこういう時に使ってもいいのではないかと思う。

ずっと、対策手段として簡単な方法を取っていたが、あまりにもしつこいので、専門機関にも相談するようになった。同じように付きまとわれている知人から、その方がいいと教えてもらったのだ。専門機関に相談するようになってからは、ヤツがいることを気にしなくなる時間が増えてきた。
数年前に、なんだか専門機関の先生が信用できなくなって、先生を変えた。そうしたらもっと気にしなくなる時間が増えた。やはり専門機関というものは、儲け主義で適当に済ませるところとそうでないところと、いろいろあるみたいだ。

噂で聞いたのだが、ヤツが追ってこれない地域が日本の中にはあるらしい。お金持ちでもヤツは関係なく付きまとうらしく、その時期だけ移住して過ごす人もいるらしい。
ただ、それは沖縄らしいので、今は現実的に厳しい。もし、フリーランスになった時には考えたい手段の一つではある。

ヤツは出会った頃に比べると、かなり有名になっている。同じように付きまとわれているという話もよく聞くようになった。テレビや雑誌でも、ヤツに対してどのような対策をとればいいのか、教えてくれるようになった。
いろいろな方法があるらしいが、ヤツがやってくる数ヶ月のために、1年かけて毎日対策しなくてはならないものが多い。長い付き合いでうんざりはしているが、365日もヤツのことを考えなければならないのはバカらしい。
慣れてくれば、それなりの付き合い方ができるようになってきた。これからもしばらくは、付き合っていかなければならないだろう。

出会ってから30年近くになるあいつ。
春の気配がするとやってきて、春が終わる頃に去っていく。
睡眠を妨げるほどの強さを持ち、泣いても叫んでも許してくれない時がある。
悔しいが、この時期だけは片時も忘れることができない。
付き合い方さえ覚えれば、それなりに付き合っていれる。

季節限定のストーカー。

そろそろ……
「ハ、ハ、ハックション!!!」

今年も花粉症の季節がやってきたみたいだ。
病院に行って、薬をもらってこよう。

***

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2017-03-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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