メディアグランプリ

死んだ目をした私が生き返ったのは鏡のおかげだ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講申込みページ/東京・福岡・京都・全国通信】人生を変える!「天狼院ライティング・ゼミ」《日曜コース》〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
【東京・福岡・京都・全国通信対応】《日曜コース》

記事:apisuto(ライティング・ゼミ)

「なんで私だけ」
私は怒りとともに焦っていた。

なぜなら就職活動がうまく行っていなかったからだ。
卒業をしたら社会人としてきちんと働くことが当然だと思っていた私は、内定がもらえないことにイライラしていたし、不安でしょうがなかった。

当時は、大学3年生10月になると会社説明会に行ったり、就職活動サイトに登録しエントリーを始めたりする。早い人だと、4年生の春には、「内定をもらった」という報告が聞こえ始める。

私は夏になっても内定がもらえなかった。
最初は教育業界に的を絞って就職活動をしていたけれど、春を過ぎたあたりから、手当たり次第に受けた。ファミリーレストラン、電気小売店、弁当屋、居酒屋、人材派遣会社……。

だけど、内定式が行なわれる10月1日になっても、私の就職先は決まらなかった。

大学のキャリアセミナーにも参加して、言われたことはやってきたのに。自己分析診断のテストも受けたし、業界研究もした。たとえ1次面接であっても面接が終わったら担当者にお礼のメールを送った。面接でも真面目な学生生活や部長として頑張っていたクラブの話もしたつもりなのに。

なのに、私よりチャラチャラした学生生活を送っていた奴の方がすぐに内定が出るんだ。

「こんなに頑張っているのに、なんで私だけ」
内定が決まった友人たちに、「おめでとう」と言いながら心の中でずっと毒づいていた。

結局、私は大学院に進学をした。

大学院は修士課程→博士課程の2段階になっている。
多くの大学院生は修士課程を卒業したら就職する。大学院での授業や研究は面白かったけれど、私も同じように考えていた。

2度目の就職活動は絶対失敗したくない。プライドがあった。

だから、大学院で学んできた専門性が生かせるような仕事を中心に就職活動をした。しかし悪夢再来。どれだけ面接を受けてもうまくいかない。そんな中でも2コ下の後輩たちが就職先をすんなり決めていく。

自分で言うのも何だが、私は真面目な人間だ。和を乱すわけでもないのに、なんでこんなにも就職先が決まらないんだ。
就職活動はお見合いだとよく言うけれど、私はたまたま見る目のない男性ばかりに当たってしまった。

「なんで私だけ、こんな不運な目に」

結局、私は博士課程に進学した。
あるとき、2年以上会っていなかった大学院の先輩から連絡をもらった。

「今度、法人を立ち上げるんだけれど、つくり方が分からないから教えてくれない?」

その法人の立ち上げが私の研究分野と近いこともあったので、先輩は私に電話をかけてくれたのだろう。私は久しぶりに先輩に会った。
法人立ち上げの大変さをキラキラした目で語る先輩に、私は自分に関係ないことだ、とちょっと冷めた目で「大変ですね」と返した。

それから数ヶ月後、再びその先輩から連絡がきた。

「法人は無事に立ち上げられたんだけれど、バイトを探していて。月2、3回でいいからうちに来ない?」

そしてそれから半年後、今度は

「新しい事業をすることになって、職員の人手が足りなくて。一緒に職員として働かない?」

と誘われた。

何をやっても就職活動がうまくいかなかった私に、ついに就職先が決まったのだ。嬉しくてしょうがなかった。

バイトしかやったことのない私にきちんとできるか不安だった。しかし、声をかけてくれた先輩の顔にせめて泥を塗らないように、一生懸命頑張ろう、と心に決めた。そこで、私はこの会社に対して何ができるのかを考えるために、自分自身がどんな人物か真剣に洗い出してみようと思いついた。

・25歳を過ぎても社会人経験がなかったので、ビジネスマナーが全く分からない。名刺もどうやって渡したらいいのか分からない。

・人見知りで、人と話すのが苦手だと言っていたけれど、就職活動に何度も失敗した自分に自信がなくて人と話すのが怖いだけ。だから、いつもちょっと自信なさげ。

・大学院で勉強してきた専門性を「ひと言で説明して」と言われも自分の言葉で説明できない。つまり学んできたことを自分のものにできていない。

私は気づいた。今まで「真面目でちゃんとした人間だ」と自分のことを認識していたけれど、それは自分の思い込みで、自分の本当の姿を見るのが怖かったのだ、と。

食べ過ぎや不摂生が祟ったときに、お風呂場で自分の姿を鏡で映し出すのが怖いのと同じように。

鏡は、現実の自分を客観的に映し出す。

私は自分自身を客観的に見て、初めて気づいた。
そこには、思い込みが激しくて、相手へ嫉妬ばかりしている情けない自分が映し出されていた。

社会人として働くからには、まずここから直していかなくては、と思った。
今の情けない自分を受け入れて、短所を直していく強い意志を持つようにしようと。

それからは困ったときや悩んだときには、自分の全身を鏡に映し出すように、できるだけ客観的に自分を見るようにしている。そうすると直したいところや次の目標が自ずと見えてくる。

以前、例の先輩に聞いたことがある。

私「なんで、あのとき職員に誘ってくれたんですか?」
先輩「だって久しぶりに会ったあなたが魚の死んだような目をしていたから。仕事をして自信が持てたら、ちょっとは元気になるかなと思って」

今の私は、面白いと思っていた研究を仕事にできつつある。鏡に映し出される私の目はきっと生き生きとしているんじゃないだろうか。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

http://tenro-in.com/fukuten/33767

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2017-03-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事