プロフェッショナル・ゼミ

ペガサスも河童もユニコーンも実在しないじゃんと思ったら、いや、わたしがそうだったわ、と気づいた件について。《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:安達美和(プロフェッショナル・ゼミ)
ペガサスをご存知ですか? 
そうそう、背中に羽根の生えた馬ですよね。空を自由に飛び回れるという。
じゃあ、ユニコーンはご存知ですか? はい、額から角の生えた馬ですよね。
そしたら、河童は? 河童はどうでしょうか?
頭にお皿があって、アヒルみたいなくちばしを持ってて、背中に甲羅を背負っていて、きゅうりが好物で相撲が好きな妖怪ですよね。あと、やたらと馬の尻子玉を抜きたがるらしいという。
ねえ、だったら、サンタクロースはどうですか? 
サンタクロースについて、知っていること全部言ってみてもらえませんか?
赤い服を着て、たっぷり白いおひげをたくわえて、トナカイの引くソリに乗っている。はい、それから? クリスマスに世界中の子供達にプレゼントを配って回る。なぜか知らないけれど、わざわざ煙突から忍び込む。靴下にプレゼントを突っ込んで去っていく。こんな感じですよね。わたしもあなたも、サンタクロースについて知っていることを教えてと言われたら、これくらいのことはスラスラ言えますよね、きっと。
あなたもわたしも、ペガサスやユニコーン、河童、サンタクロースがどういうものか、詳細は知らないまでもなんとなく言えたはずです。こういうものでしょ? って。じゃあ、ここで身も蓋もないことをちょっとだけ言わせてくださいね。ごめんなさい。
実在しませんよね、みんな。
いや! 河童は実在する! とおっしゃる方が確実にいるとは思います。わたしも河童には実在してほしいです。もしも出会えたら、わたしもきゅうりが大好物よ! さあ、相撲を取りましょう! とがっぷり四つに組みたいです。投げ飛ばされたら、さっすが河童! 力持ちね! と賞賛したい。
でも、今まで32年生きてきたけど、会ったことないもの。河童もペガサスもユニコーンも。
サンタクロースについては、子供達のために曖昧にしておきたいけれど、この記事を読まれる方はほとんど大人でしょうから、もう良いかと思います。プレゼントをもたらしてくれるのは、どこの誰とも知れないサンタクロースなどではなく、目の前の親ですよ。ね?
不思議だよなと、常々思っていました。実際には存在しないにも関わらず、どうしてわたし達はペガサスやユニコーンの詳細を知っているんだろう。いないと分かっている上で、でもそのディティールについてはある程度分かる。分かっていることが、当たり前だと思っている。
ダイアンというお笑いコンビが、サンタクロースを題材にした漫才を演じていたことがありました。サンタクロースについて何も知らないボケに対して、ツッコミがやっきになって説明をする。やがてサンクロースの詳細が分かったボケが、プレゼントをくれるのなら革ジャンが良いと目を輝かせると、ツッコミがひどく申し訳なさそうにボケに伝えるんです。
ホンマはな、おらへんねん、と。
ショックを受けたボケはしばらく絶句した後、「……え、怖い話?」とツッコミに尋ねます。
この漫才を観たとき、わたしは大笑いと共に、深くうなずいたのを覚えています。
多くの人が存在を知っているのに、実在しないものってけっこうあるよなぁ、と。
もっと言うと、実在しないと信じ込んでいるものって、あるよなぁ、と。
そしてそれは、なにもサンタクロースやペガサスに限ったことではありません。
わたしには昔から、本当は実在しないのでは? と訝しんでいる存在がいました。
母にその疑問をぶつけたのは、ふたりでランチに出かける車中でした。
「ねえ、お母さん」
「はいはい」
「ユニコーンているじゃない、角の生えた馬みたいなやつ」
「いるね」
「でも、実在はしないじゃない、ユニコーン」
「うん」
「でも有名だよね。ユニコーンは角が生えた馬みたいなやつって、多くの人が知っているよね」
「そうだね」
「それで思うんだけどさ」
わたしは長年の疑問をぶつけました。
「『ワシはなんとかじゃのう』って喋り方するおじいさんて、現実にはいなくない?」
母は、あー、そういえば、と返してきました。
アニメや小説なんかだと、いわゆる「おじいさんキャラクター」はみんな判で押したようにこんな感じの口調で話します。でも、実際にわたしの周りのお年寄りは誰ひとりとしてこんな風な言葉遣いはしません。一人称はごく普通に、「オレ」、「わたし」ですし、語尾の使い方も、わたし達の世代と特に変わりません。
こんなにポピュラーなのに、実在しない……不思議です。「ワシじいさん」と「ユニコーン」は同じ世界の生き物なのだな……。そう思いました。
「……てなことをずっと考えてたんだよね」
「なるほどねぇ」
母は、「ぼかぁ、そんなこと、どうでもいいなぁ(加山雄三)」みたいな薄い反応しか返してくれませんでしたが、しばらく車を走らせていると、ふと口を開きました。
「あ、いるよ」
「え?」
「自分のこと『ワシ』って自称する人」
「誰?」
「親戚で」
え、マジで? この世にいないと思ってたユニコーン、まさかの親戚にいるの? ちょっとうろたえました。
親戚のHちゃんが、最近自分のこと「ワシ」って言うんだよと、衝撃の発言をする母。ちなみにHちゃんは東京出身、広島の人ではありません。
Hちゃんは現役の警察官で、とてもおじいさんと呼ぶ年齢ではありません。だけど、「ワシ」を自称として使うのは間違いないようです。ちなみに、
「それから、自分のことを『オイラ』って自称する人も、ビートたけし以外にいないなー、てなことも思うんだよね」
とわたしが言いましたら、母は返す刀で、
「いるよ」
「……え?」
「親戚に」
まさか。
「Hちゃん」
Hちゃん!!!
母曰く、Hちゃんは幼い頃、自分を指して「オイラ」と自称していたそうです。
もう、Hちゃん、どうなってんの。ユニコーンでサンタクロースかよ! 衝撃でした。
「っかー! いないと思ってたら、いるんだね、ユニコーンは! 世界は広いんだなー、てなことを思うねー」
母はわたしのその言葉を聞くと、ちょっと呆れたように笑いました。
「ちなみにだけど」
「うん」
「わたし、あなた以外に日常生活で『てなことを』って言葉を使う人間に出会ったことないよ」
「え?」
「あなたもユニコーンじゃない?」
ランチへ向かうまでの短い時間で、一体何頭のユニコーンを見つけるのでしょう。そして、いないいないと思っていたユニコーンの一頭が、実は自分だったなんて!
はー、世界は広いなぁ、てなことを噛み締めていたある日、わたしはまた新たに数頭のユニコーンを見つけました。
そのうちの一頭は、わたしの恋人です。
何度か天狼院書店さんの記事にも書いたことがありますが、わたしの恋人は性同一性障害です。
身体が女性で、中身が男性なのです。わたしは今ではそのことをごく当たり前と思って受け止めていますが、最初はやっぱり戸惑いました。
知識として、そういう人がいるとは聞いたことがあるけど、まさか目の前にいる人がそうだなんて……というのが正直なところでした。そしてそれは、恋人自身にとっても、まったく同じだったようです。
当時、性同一性障害という言葉は知っていて、その言葉がどういう人を指すのかも、恋人は知っていたそうです。でも、そんな人、本当にいるのかなと思っていたと言います。実際に出会ったことがないから。自分自身が、完全にそうであるにも関わらず。21歳で遅い初恋を迎えた時、やっと自覚したと恋人が話してくれました。
ああ、噂には聞いていたけど、自分が正にそうだったのか、と。
そしてもう一頭のユニコーンは、過去のわたしでした。
わたしは、高校時代、同い年の女の子を好きになったことがあります。もう、好きで好きで。胃液と涙がいっぺんにこみあげてくるほど、たまらなく好きでした。でも一方で、それを必死に否定している自分もいたんです。
まさか自分が、同性を好きになるはずが、同性愛者のはずがない、と。当時、同性を好きになる人が一定数いるということは知っていました。ゲイ、レズビアン、などの言葉も聞いたことはありました。でも、まさか自分がそうなる日がくるなんて、夢にも思わなくて。スクールバスの中で、ブレザーを頭からかぶり、寝たふりをしながら静かに泣いていたのを思い出します。
でも、結局のところ、わたしは同性を好きになった自分を認めて許すことに決めました。だって、好きなのは間違いなくて、相手はとても素敵な人でしたから。わたしの恋人にしても、自分の性について素直に認めることにしたようです。もちろん、未だに葛藤を抱えながらではありますが。
恋人とはよく、一般社会では目に見えづらい少数派の人たちについて話をします。
「ボクが以前、幼稚園で出会った発達障害の子供たちはね……」
「わたしの知り合いに、アスペルガー症候群の人がいるんだけど」
「大学のサークル仲間のT君がユーチューバーになったらしいよ、ゲイって公表して」
現実に出会ったことがあるから、彼らはみんな、わたしにとって実在しているひとばかりです。当たり前ですが。
人間誰しも、自分の目で確認しないことには存在を認めることができないのだと思います。わたしには、ゲイの友人もアスペルガー症候群の知り合いもいます。でも、実際に出会ったことがない人にとっては、彼らも実在しないのと一緒なのかもしれません。
未だによくテレビなどで、同性愛者を揶揄するような笑いを見ることがありますが、わたしはゲイの友人を持った時から、それらを笑う気にはならなくなりました。わたしにとっては、もう彼らは存在しているから。面白いと思わないし。
そして、存在は知っているものの、実際にいるとは思わなかったそれに、自分自身がなる日もあるかもしれません。
ある日、額に小さなコブがあることに気づく日が来るかもしれません。
肩甲骨の辺りの毛が、妙に濃くなっているかもしれません。
頭のてっぺんが妙に固くツルツルして、お皿に似ていると感じる日が来るかもしれません。
あなたも、もしかしたら、ユニコーンかもしれません。
でももし、そうだと気づいた日が来たとしても、落ち込む必要はありません、絶対に。
なかなかこの角もイカすなぁ、と自分を認めてほしいと、こころから思います。

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