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肉離れの治療を受ける私が未熟な施術者にこだわり続ける理由


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記事:佐藤洋孝(ライティング・ゼミ日曜日コース)

「次の方、6番のベッドにどうぞ」
係りの人に案内されるままにベッドに横たわる。思わずため息が漏れる。
この接骨院に通うようになってからこの時間が1日のうちで一番憂鬱だといっていい。

ちょうど、1か月前、運動不足の身体で走ったため、私は左太腿の裏を肉離れした。
それから、ほぼ毎日、職場近くの接骨院へ通っている。
ここでは怪我をした箇所を中心に電気治療を行った後、施術者によるマッサージを20分程受けることになる。

マッサージというとなんだか癒し系の響きで気持ちよさそうに聞こえるかもしれないが、肉離れでの治療に来ている私が受けているそれは「癒し」とは程遠く、とんでもない痛みを伴うスポーツマッサージだ。

施術者は毎回決まった男性で年はたぶん同い年(30前後)くらい。
毎回、申し訳なさそうに「痛いですか?」と聞いてくるのだが、申し訳ないがマジで痛い。
肉離れした足がではなく、彼のマッサージが痛いのだ。
こっちも治療を受ける身なのでわがままを言える立場ではないのだが
どうもこの施術者の技量は他の施術者と比べても低そうなのだ。
実際に彼、私の施術中に年配の施術者からお叱りを受けていたこともあった。

「違うよ! そうじゃないだろ」
「その患者さんの身体全然ダメじゃねぇか」

えっ。ちがうの? 
ねぇ、俺の身体駄目なの?

お叱りを受けている彼の横にいる私の動揺は半端なものではない。
こうして痛みに耐えつつマッサージを受け続けて1か月。もはや肉離れした足の痛みよりも彼のマッサージが痛くて仕方がない。

ただ、私は「担当を変えてほしい」と申し出たことは一度もないし、思ったこともない。
むしろ、施術を受けた日に彼が休みで別の人だったりすると寂しいと思うくらいである。
施術の上手くない彼の施術にどうしてこだわり続けるのか?
理由は先に述べたように彼がおそらく私と同世代(30歳前後)だからだ。
そう、彼は私なのだ。
いや、接骨院の彼だけではない。
先日職場の同僚と行った寿司屋の職人、行きつけの店の料理人、毎月髪を切って貰っている美容師、そして担当の生保レディ。

今になって振り返れば私は技術云々ではなく、担当者を選べる時はいつもできるだけ自分と近い年齢の人を指名してきた。その理由は彼らから貰っているものは、ただのサービスではないからだ。

同世代の自分には良くわかる。
少しの社会人経験を経て少しだけ芽生えたプライド。上司や先輩の期待を超えられるかという不安。そして後輩にいつか抜かれるのではないかという焦り。

勿論、全ての人がそんなことを考えているのではないかもしれないが、私にはそういったいろんな想いを込めて提供してくれたサービスは単純な技術や知識を上回るように感じる。
(いや、限度はありますよ。勿論)

そして、彼らが真剣に取り組む姿を見るたびに「自分も負けられない」と背中を押してもらっている気がするのだ。

この「真摯さ」がある限り、私はこれからも彼らと一緒に成長していきたいと思う。特に接骨院の施術者や美容師など、特異な技術を人達にはそれぞれにかける特別な想いがある。川の流れに身を任せて生きているサラリーマンの私とは根本的に志が違うのだ。
(いや、サラリーマンも実際は結構大変なのだが……)

そして、そんな彼らにしてあげられること。彼らにとって一番心強いのは「たった一人でもいいから裏切らないファンがいること」だと思う。
(実際に私がそうなのだが……)

上司にボロクソに怒られたとき、大きなクレームを貰ったとき、後輩に抜かれたと感じたとき。とんでもない向かい風が吹いて、誰にも言えない悔しさと不安を抱えたときに本当にありがたいのは上司の叱咤激励ではない。先輩のアドバイスでもない。たった一人でもいい。離れずに何事もなかったかのように接してくれる、今までの自分を信じ続けてくれる人がいるだけで、逃げたい局面にも正面から向き合えるのだ。

たかだか年が近いだけでそこまで肩入れする必要もないのかもしれないが、やはりそういった仲間意識は私の中のどこかにある。先輩に頼り、後輩の面倒を見る。でも最後に一番信頼できるのは同年代。他の世代が信用できないという事では決してない。
ただ子供の頃、流行した遊びや、音楽や漫画、同じ時代に打ち込んだスポーツなど、やはり時間という共通点は馬鹿にできないし、そして何より同じ立場でこれからの時代に向き合わなくてはいけない仲間はやはり同世代なのだ。

そんな関係を築きながら生きていけたら仕事も私生活も、もっともっと楽しくなるではないか。恐らく私も彼もこれから辛いことは山ほどある。でも少しの間、ほんの一瞬でも何か共感できるものがあればお互い何かの支えになるのではないか。

そんなことを考えながらまた今日もマッサージの治療が始まる。
身体と心に強い刺激を受けながら。

ちなみに
私が担当者で指名したうちの二人、担当の美容師と生保レディに関しては同世代で共感したという他に担当者が美人であったという点も若干は関与しているのだが……。
それはまた、別の話で。

***

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2017-04-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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