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「本気」でダイエットしたければ、「清い心」を持ちなさい


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記事:牛丸ショーヌ(ライティング・ゼミ)

「お疲れさまです! 異動で福岡に行くことになりました!」
後輩の麦川からメールがきたのは3月の中旬、人事異動の季節だった。
麦川は、僕が前の会社で大阪にいるときに一緒に働いた1つ下の後輩だ。
僕が転職して地元の福岡に帰ってきてからも、たまにメールで近況を報告し合う仲。
「こっちに来て落ち着いてから、飲みに行こう!」
僕は飲み友達が増えることを素直に喜んだ。

4月に入ってからは、お互いの会社が年度初めということもあり、多忙を極めた。
ようやく会えることができたのは、GWが明けた5月の下旬になってからだった。
「映画を観て、その後にご飯でも行きましょう」
まるで、恋人のデートのようだ。
博多駅に隣接した映画館前で待ち合わせした。

あちらから近づいてくる麦川を見て、「あれ? 変わったかな」と感じた。
会うのは2年ぶりくらいだろうか。
「和久田さん、お久しぶりです」
「ムギ、痩せた?」
「あ、分かりました? 実は8キロくらい痩せたんですよ」
お互い30代半ばを過ぎて、中年太りしてもおかしくない年齢だ。
麦川は初めて出会った10年前から「ずんぐり」という印象は変わらなかったはずだ。
その麦川が、明らかに「痩せた」と思える外見になっている。
「まぁ、そのことは後で話しますよ」

僕らはお互い共通の趣味である「洋楽」から、仲を深めた間柄だ。
映画もヴォーカルが自殺して解散になった有名なバンドのドキュメンタリーだった。
「いやぁ、良かったっすねぇ」
映画の感想や意見を交わしながら、僕らは有名なラーメン店へ行くことにした。
ラーメンと餃子、それから瓶ビールを注文する。
一通り仕事や洋楽の話を終えたあと、僕は麦川に「痩せた理由」を聞いていないことを思い出す。
「そういえば、痩せた理由って聞いてなかったね」
「あ、そうでしたね。実はですね……」
僕は単なるダイエットでないことを期待する。
「GARIPAPに通ってるんですよ」
「え? ガリラップ?」
「はい」
「ガリラップって、あのガリラップ?」
僕は2回、確認した。
身近でまさか、通っている人間に会おうとは……。
GARIRAP(ガリラップ)とは、この3年くらいで急成長したパーソナルトレーニングジムである。
個人の減量目標に応じて結果を出すことで知名度を上げた会社だ。
芸能人を多数起用したCMは特に有名で、テレビを観る人は、ほぼ認知しているのではないかと思えるくらいのインパクトを持っている。
親指を突き出し「ナイスです」のギャグで有名な女芸人のハリスはるみ、元プロボクサーで、俳優兼タレントの青井秀夫などが出演してる。
CMの中で彼らはトレーニングを受ける前の弛みきった身体を披露し、その後で2カ月のトレーニングを経た結果である現在のほっそりとした身体を見せる。
ビフォーとアフターでこんなにも「変わった」という分かりやすい映像は、言葉(ナレーション)に頼らずに強烈な印象を視聴者に植え付ける。
「あのCMは上手いなぁ」と僕は見るたびに常々、感心していた。

「ガリラップってお金、高いんだよね?」
僕はまず2児に父親であり、住宅ローンを抱える麦川の懐具合を心配した。
「はい、普通だと35万ですね」
「分割払いでもしたの?」
「いえ、それがですねぇ」
麦川は得意顔になった。

「ぼく、ここに来る前に東京にいたでしょ?」
麦川は東京の本社からこの福岡に来たのだ。
「実は、あっちでガリラップの役員と知り合いになったんですよ」
麦川の勤務する経営コンサルタントの会社は、さまざまな業種をお客に持つため、ガリラップの役員と繋がりあると聞いても、何ら驚くことではない。
「それで、こっちで入会するときに役員の名前を出したら、入会金5万円免除してくれたので、30万円になったんです」
それでも30万円は大金だ。
「ところで、ガリラップの制度、知ってます?」
「ん?」
「あそこって、30日間なら全額返金してくれるんですよ」
確かにCMでもそのことは大々的に言っていたっけな……。
その「全額返金」なるものには信用力がない。
これが僕の個人的な見解だ。
健康食品系にそれを謳うものが多いような気がする。
「万が一、効果を実感できない場合、納得して頂けない場合は返品を承ります」
これは一見、「お得」だと感じる。
実際にお得なのだろう。
しかし、これは裏を返せば「自信のなさ」の表れだと思う。
「試供品」という方法もありだが、「自信」のある商品であれば、最初から堂々と販売すればいい。

「で、今は何日経っているの?」
「いま3週間ですね。あと1週間ほどで30日なんですよ」
「そこに通って、8キロ痩せたんだっけ?」
「そうですね。凄いでしょ? わずか3週間で8キロですよ。この調子なら20キロくらいは余裕でいきそうです」
麦川は楽しそうに話す。
GARIRAPは最初に2カ月後の目標体重を設定し、その目標を達成するためのプランを担当トレーナーが立てる。
そしてその期間は徹底した食事制限とトレーニングを行うという仕組みだ。
麦川は退会したあとも、自らでそのプランを実行する予定なのだという。
「もし20キロまで痩せたら、高校生のときの体重になるんですよ」
僕の体重は高校生のときから比較すると、2キロしか増えていない。
どういう生活習慣を送ればそこまで増えるのか、逆に教えて欲しいところだ。

「で、お金は先に払ったんだっけ?」
「はい、そうなんですよ。先に払いました」
へそくりでもあったのだろうか。
「30万円はカードでキャッシングして現金一括で払い、リボ払いで返済する予定です」
やはり、そういうことか。
「嫁には内緒なんですよね。でもすぐに全額返金になれば、カードのほうも一括で返済しますけどね」
麦川は依然として、楽しそうだ。
僕はここで一連の話を聞いていて、疑問に思っていたことを訊くことにした。
「3週間で8キロ痩せて、効果も出てるんだよね?」
「はい、そうですよ」
「それなのに、いまここで辞めるの?」
「それは大丈夫です。食事制限も含めて、どうすれば痩せるかのメカニズムを全て学びました。これなら、辞めても自分でやれる自信があるんです」
「そうなんだ。ただ、オレが言いたいのはそうじゃないんだよね」
僕は一息つく。

「ノウハウだけそこから学んで、辞めたあとに自分で継続するのは分かる。でも、言いたいのは、効果があり、満足しているのに辞めるのかってこと」
「まぁ、でも30日間であれば全額返金って書いてますからね」
そうじゃない。
マンツーマンでの指導を売りにしているのなら、麦川の担当トレーナーがいるはずだ。
ガリラップの報酬体系は知らないが、30日間二人で目標に向かって、一生懸命取り組み、麦川の減量も成功もしている。
それなのに……、ここで辞めるのか?
30日間であれば全額返金すると書いてあるのだから、辞めて何が悪いか、そう言われれば僕に反論する余地はない。
だけど、何か違うような気がする。
腑に落ちなかった。
人間の汚いところを見てしまったような気がした。
「お前、ちゃんと結果出てるんだから、辞めずに続けろよ!」と僕は麦川に言いたかったのをこらえる。
「そのトレーナーに悪いとは思わないの?」
「はぁ、まぁ、そうなんですけどね。一応、仕事が忙しくて、もう通えないかもしれませんってすでにジャブも打っておいたんですよねぇ」

僕は麦川と別れても、気分が落ち着かなった。
世の中、キレイごとだけじゃ、回らないことは知っている。
でも、「損得勘定」だけで判断する人間には絶対になりたくないと僕は思う。
経済が円滑に回っていくために、会社組織で働く僕らは常にWin-Winの関係を気づいていく必要がある。
サービスを提供する側と受ける側。
双方に「得」だと感じる良好な関係性だ。
一方が、仁義に反して「セコい」考えを持つと、この関係性は成り立たなくなる。
自分だけ良ければいいのか?
本当は麦川にそう伝えたかったが、感情的になってしまう気がしたため止めることにした。

それから3カ月後の8月に麦川と会ったが、外見はあまり変わっていない気がした。
「あれから5キロばかりリバウンドして、また3キロ痩せました。一進一退です」

そりゃあ、そうだろう。
もともと自己管理ができないから、太るわけだ。
ジムでできちんとトレーナーに管理してもらったからこそ、劇的に痩せたのだろう。
高校生のときから15年以上かけて20キロ増えた体重を、数カ月で元に戻すなんて、
そんな無茶な減量をすると、身体のあちこちに支障をきたすことになるのは少し考えてみれば分かる。

その後、麦川はSNSで「やばい、食べたら太るのを分かっちゃいるけど止められない!」などというコメントを付けて豚骨ラーメンの写真をアップしていたのを何度も見た。
聞くところによれば、その後せっかく8キロ絞った体重も、リバウンドで元に戻りつつあるらしい。

「和久田さんって、細いですよね」
「はい。まぁ、いつも体重を気にしてますからね」
「ダイエット」に対して、日本人の興味は尽きない。
次から次へと新しい食品や健康器具が、さまざまなメディアを通じてブームになる。
ただし、どれもが一過性のものだ。
実際にそれで成功した人も大勢いるのだろう。

だけど、僕は言いたい。
万人に通用するダイエット方法なんて無い。
「いや、ある!」と言うのは幻想に過ぎない。
自分と全く同じDNAを持った人間がほぼ存在しないように、1人の人間に合った方法もやり方もそれぞれだ。
僕はいつも自分の身体のことを気にしている。
食べ過ぎたと感じたら、体重計に乗って増減の確認を怠らない。
増えていたなら、翌日1日の行動を少し変えるだけでいい。
何も難しいことではない。
日々の積み重ねだ。
「楽にダイエットしたい」や「お金をかけないでダイエットしたい」などという精神では、理想の体重になれないことは目にみえている。

本気でダイエットするならば、方法を学ぶ前にまずは「清い心」を持つといい。
「すぐに」「楽に」「安く」などと考えずに、誠実に真摯に取り組めば、きっと結果は伴うはずだ。

その後、飲み屋街を歩いていた時に、麦川とばったり出会った。
会うのは約1年ぶりだろうか。
いつもの見慣れた麦川だった。

※本内容は事実を元にしたフィクションです。

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2017-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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