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笑いの発作はスプリンクラーのように


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記事:バタバタ子(ライティング・ゼミ日曜コース)

あとから思い返しても、なぜそんなにツボを突かれたのかわからない。
ただ、気づいたときには肺がふっ、ふっと空気を出し、腹筋がぶるぶると震え、顔がゆがみ、背中は曲がり始めていた。
上司がすぐそこにいる。ここで発作を起こすわけにはいかない。慌てて隣の部屋の物陰に逃げ込む。足の力が抜けて崩れ落ちる。顔を隠すように、膝の間に頭を埋める。なんとかおちつかせようと、しばらく息を止めてみる。止まらない。深呼吸しよう。ああ、やっぱり無理、だめ……!
「くく……っく、ふっ、ふふふっ、ふっ、はっ、ははっ、あははっ、はっ、あははっ、はっ、ひーっは、は、ひーっ、ふっふっ、あはははははっ!」
お腹がよじれてよじれて、仁王様のように顔を真っ赤にして、こぼれそうな涙やよだれを必死におしとどめながら、部屋の隅でひとり小さくなって震えていた。

常日頃の私は、それほど笑いの沸点が低いわけではない。
相手が面白いことを言ったら、いつでもすぐに止まれるくらいの程度で笑う。フランス料理の食べ方でいうと、一口大に切って口に運ぶような、マナーにのっとった笑い方をしている。対して、発作を起こしたときの笑い方は、ステーキを丸々一枚、切らずにそのまま飲み込もうとしている感じだ。

この発作を起こすようになったのは、いつの頃からだろう。
覚えている中で一番古いのは、高校生の頃だろうか。曾祖父母の10回忌か何かの最中、お坊さんの指示に従い、親戚一同で瞑想しているときだった。しーんとした、厳かな雰囲気のなか、突然、無遠慮な大声で「こちらは、廃品、回収、です」と外の道路から聞こえてきて、耐えられなくなったのだ。
次に古い記憶は、大学でのサークル活動中のことだろうか。能舞台で手足の動かし方を教わっているときだった。いつものように、先生の動きを真似していただけなのに。何が面白かったのかわからない。

そう、この発作を起こした原因のことを、あとから落ち着いて思い返してみると、何が笑いのツボをおしたのか、自分でもまったく理解できないのだ。
発作中に、「どうしたの」と尋ねてくれる人になんとか原因を説明しても、困惑した様子で「えっ、そんなに面白い?」と返されるのがいつものパターンである。私の説明がまずくて、本当は面白いのにうまく伝わっていないという可能性もあるが。

この発作だが、最近頻発するようになってきた。月に一度は生じている。冒頭の場面は数か月以内のことだし、それとは別に先月のはじめにもあったし、今朝も起こしかけた。
相変わらず原因は不明だが、これだけ続くと、発生しやすい環境ならわかってきたような気がする。

例えるなら、この発作は、火災報知器やスプリンクラーのようなものである。

一般的なイメージとして、火災報知器は、火の気を感知すると、ジリジリとベルを鳴らして、危険が生じていることを知らせてくれる。ベルを聞いた人がすぐに対処することで、被害の拡大を防ぐことができる。スプリンクラーは、自動的に水を撒いて、火の勢いを止めてくれる。
厳密にいえば、火災感知器だの報知器だの自動なんとか設備だの、いろいろあるようだが、難しいことは置いておいて、上記のような単純なイメージで話を進める。

つまり、火災報知器と同じような働きを、この発作もしていると考える。
まず、私がストレスや疲労を蓄積する。意識レベルには至らないが、このままでは心身に悪影響を及ぼすだろうという状況になる。それを脳のどこかで感知すると、笑いの発作が発動して、「おい、疲れているぞ。休めよ」と知らせてくれる。
最近の発作をふりかえると、毎日忙しくして、疲れ果てて、もうダメかもしれないという状況が終わって3~4日したころに発生しているようだ。ちょっと元気が回復して、思いっきり笑ったり、休んだりする体力が戻るころである。
だから、発作の忠告を素直に聞き入れて休養すれば、いつものようにバタンキューすることを防げるのではないだろうか。
また、笑うということ自体、気持ちを明るく、すっきりさせてくれる。つまり、スプリンクラーで消火するように、発作で自動的にストレスを軽減させているのだ。

このように考えると、この笑いの発作は、自分のメンタルを守るための防衛反応であるといえるだろう。
寒いときに震えたり、熱いものに触れて手をひっこめたり、鼻に異物が入ったときにくしゃみをしたりするのと同じように、ごく自然で、だけど重要な役割を持つ反応。
断じて、ただの奇行ではない。

ところで、この発作は私だけに生じるものだろうか。それとも、みんなうまく隠しているだけで、実は誰にでも起こっていることなのだろうか。
今のところ、私の周りでは、他に同様の症状を呈する者がいないため、私だけが奇行種扱いされている。
もしこれを読んで「私も同じだー!」と思われたら教えてほしい。仲良くなれそうな気がする。

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2017-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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