メディアグランプリ

横浜ベイスターズ依存症


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記事:とおる(ライティング・ゼミ日曜コース)

『どうして、横浜ファンなの??』

 僕が野球ファン、それも横浜ベイスターズの大ファンだと知った時、だいたいの人がこの疑問を口にする。質問の意図は2パターンある。1つ目は、「東京出身なのに、わざわざ横浜の球団を応援するの?」 という単純な疑問だ。地元のチームを応援するのが、普通らしい。そう言われると、小学生の頃は巨人ファンだった気がする。

 問題は、2つ目。野球をよく知っている人達からの質問。
「弱小球団で面白くないのに、なんで横浜ファンなの? マゾなの?」
という言葉をオブラートに包んで質問してくるパターンだ。正直、凄くムカつく。色々と言い返してやりたい気分になる。だけど、言い返さない。いや、言い返せない。
 事実として、横浜ベイスターズは超が付くほどの弱小球団だからだ。

 最下位6回。1つ上の5位が2回。優勝は1998年まで遡る……それが横浜ベイスターズの最近の戦績だ。文句なしの超・弱小球団。歴史が証明してしまっているのだから、どうしようもない。
しかも、試合内容も酷い。救いようがない負け方を何度もする。
――5点差で勝っていたのに、気が付いたら10点とられて負けました、とか。
――ファーストがよそ見していてボールを取れませんでした、とか。
――ショートが守備位置を間違えていました、とか。
中学生の方が野球知っているだろ? とイライラを重ねる『伝説の』試合が数え切れないほどあるのだ。くどい様だが、とにかく弱い。

「ほらやっぱり!! 面白くなさそう」と思うだろうが、それは違う。弱小球団なのは間違いないし否定しない。ただ、ベイスターズの試合はどの球団よりも面白い、と断言できる。気を付けた方がいい、と忠告するレベル。
例えは悪いが、麻薬レベルの中毒性がある。ハマってしまったら抜け出せない。僕だって、たった一度の体験からだ。たった一度、試合を見ただけ。それだけで、僕はベイスターズ依存症になってしまったのだから。

 7回裏、3-10。
 このスコアを見て、何を思うだろうか? 野球ファンなら、いや、誰が見ても完全な負け戦だ。まだベイスターズファンではなかった僕も、テレビの前でそう思った。
 事実、誰もが諦めているように思えた。弱点である投手陣は次々と打ち込まれ壊滅状態。自慢の打撃陣は初回こそ反撃したものの、相手の投手を攻めきれない。ファンの声援は回を重ねるごとに小さくなり、選手からもやる気を感じないプレーが増えてきたように見えた。
 「あーあ、負けか。やっぱり弱いな」
 そう言いながら、チャンネルを変えようとした。だけど、そこで手が止まった。ようやくヒットが出て、最後のチャンスがやって来たからだ。最後の反撃くらい、見てやるか。そんな考えが過った。今から思えば、これがターニングポイントだった。

 監督が球審に歩み寄り、代打が告げられる。ベンチから出てきた、ベテラン外野手。ケガで苦しんで出遅れ、ようやく一軍に合流したらしい。ヤケクソ代打かな。そう思った。だけど、その顔は、気合で満ちていた。もう、ボロボロなのに。今だって、痛いだろうに。そう思ったら、自然とリモコンを握る力が強くなった。その瞬間だった。
 たった、一振りで全てが変わった。
大きく空を舞ったボールは、グングン伸びていく。あっという間にレフトスタンド最上段に突き刺さった。湧き上がる歓声。ベンチを飛び出すチームメイト。ホームインするベテランはハイタッチで皆に勇気を配る。まだ、追いつける。まだ、勝てるぞ。
そこから、全員が生まれ変わった。ヒットが止まらない。相手の巨人も必死で防ごうと主力選手を投入する。だけど、傾いた流れは止まらない。
気が付けば僕は笑っていた。ヒットが重なり、あっという間に6得点!? こんな打撃特化、いやノーガード戦法は初めて見た。清々しいほどの割り切り方だ。10点取られても、11点取れば、野球は勝てる。そんな中学生みたいな発想を実践する野球チームが、プロにあるなんて。

それでもやはり、相手は巨人。着実にアウトを重ねていく。じわりじわりと、追い詰められ、9回裏、9-10。1アウト。ランナー1・2塁。
サヨナラ勝ちも、試合終了も、どちらもあり得るこの場面。
この場面で、あのベテランに打順が回ってきた。
テレビから響く大歓声。諦めている人は誰もいない。ファンも、チームメイトも、テレビの前の僕も。手をグッと握りしめて、とにかく祈った。リモコンなんて気が付けばソファに投げ捨てていた。
 ピッチャーが振りかぶる。際どいコースに投げられた変化球をベテランが一閃した。
 打球がぐんぐん伸びる。伸びる。伸びろ!!!! 届け!!!!
 思わず叫んだのと同時に、スタンドに再びボールが吸い込まれた!!

 後に聞くと、この試合はファンの間でも『伝説のサヨナラ勝ち』と言われる一試合だったらしい。それを、たまたま見てしまった僕は、とにかく運が良くて、運の尽きだった。
 それからというもの、何度も何度も球場へ足を運んだ。もう一度、あの試合を見たくて。今度は生で。この目で見たくて。
 何度も、ありえない負けを見た。イライラすることも何度か。だけど、後になって思い返す、その負け方が面白くなってくる。爆笑動画を見ているような気分になってくる。
 そして、それ以上に勝ちが楽しい。スタンド中が震えるほどの歓声。知らない人とのハイタッチ。隣のおっちゃんと野球談議。奇跡の大逆転劇も何度も見た。生で見ると、一段と鳥肌が立つ。これだよ、これを待っていた。もっともっと、その勝ちを見せてくれ。弱いからこそ、勝ちが嬉しくて仕方ない。もっと、面白い試合を見せてくれ、とドンドン行きたくなってしまうのだ。
 
最近、少しずつチームは強くなっている。大勢のファンが、球場へ来るようになった。その中に紛れて、僕も球場へと足を運ぶ。勝ちへの期待以上に、馬鹿で最高に面白い試合が見られることを願って。

***

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2017-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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