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メディアグランプリ

嫌われたら、相手の目を見ろ。


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記事:コヤナギ(ライティング・ゼミ日曜コース)

誰もが多感な中学時代。
女ばかりの学校で、毎日誰かが仲間外れにされ、目まぐるしくカーストの上位が入れ替わっていた。
カーストの上位で幅を効かせるのは、小学校からの内部進学組。
中学校から入ったわたしは、よそ者扱い。
おもしろいことが言えたり、美人でスポーツ万能だったら、きっと身分も違ったのだろう。
カースト上位のクラスメートたちの邪魔にならないよう、教室の隅で友達と、昨日のテレビの話なんかして平和に暮らしていた。
「やまPと亀なら、どっち派?」なんて、少ないお小遣いから購入したブロマイドを交換したりして。
話を聞きつけたカーストの頂点たちに、ときたまブロマイドを巻き上げられたりして。
「こんな生活のために受験、頑張ったんだっけ」
モヤモヤしつつも、仲のいい友達はいたし、それなりに楽しく暮らしていた。

中学2年の春。
状況が変わった。

正しくは、中学2年の春、わたしは状況を変えた。

絵を描くのが好きだからと、入学してすぐに入った美術部。
3年生が引退してしまったあと、残されたのはわたしと、同じ学年のA子がひとり。
そう、2人だけになってしまったのである。
新しく入ってくる1年生がいなければ、廃部は免れない状況になった。

「わたし、バドミントン部に転部する」

突然、A子が言った。
いつものように部活動という名目のもと、だらだらとお菓子を食べながら絵を描いている時だった。
びっくりした。お互い運動は苦手だから、たとえ爽やかな青春の「せ」の字もないような時間を過ごそうと、これ以外の道はないことが共通の認識だと思っていたから。

裏切られた気分だった。その場は、笑顔で応援したけれど。
違うクラスだったA子は、新しくできた友達に誘われて、新しい世界に踏み出すことを決めたのだった。
とても純粋な笑顔で「一緒に入ろうよ」と誘ってくれたけれど。
バドミントンは、ペアになる人がいないと練習する時にあぶれてしまう。ただでさえ他の部員よりも下手な状態での途中入部なのに、ひとりであぶれてしまうなんて、耐えられない。

家に帰って、泣いた。
A子に裏切られた悲しみで。一緒に入ろうとの誘いに頷けない、ひねくれた自分に嫌気がさして。どこかで一緒に美術部を抜けたいと思いつつ、主体性のない自分が情けなくて。

次の日、学校でよくつるんでいたクラスメートのB子に相談してみた。
できる限り精一杯、明るく、おどけた風な口調で。
「A子、バドミントン部入るんだって! 美術部もとうとう廃部か〜」

B子が食い気味に言った。
「それならさ、バレーボールやろうよ」

まったくもって予想だにしない返答だった。
この間の体育の時間、50メートル走の出だしで盛大に転んだわたしを見ていなかったのだろうか。
運動部に誘うなんて、どんな神経しているのか。
そうはいっても、このままひとりで美術部に在籍するのも億劫すぎる。
主体性なんぞ皆無だ。バレーボール部に所属していたB子に言われるがまま、なかば強引に、やけっぱちで転部届けを出していた。不安に押し潰されそうだった。不安が9割、新しい世界への期待が1割。

そして迎えた、部活初日。
B子と同じ練習ができるはずもなく、1年生に混じっての走り込みから始まった。
1年生にも馴染めず、かと言って同学年である2年生の会話にも入って行けず。気遣って話しかけてくれるB子だけが頼りのまま、1ヶ月が経った。
正確に言うなら、同学年の子たちと話す機会はたくさんあった。ただ、話しかけてくれているのに、今にも消えそうな小さな声で、中途半端な返答ばかりしていた。

すべての原因は、わたしにあったと思う。

気付いたら、わたしの顔を見ながら遠くでコソコソと話す部員が増えていた。勇気を出して話しかけても、無表情のまま、素っ気ない返答をされることが増えた。B子が部活を休む日は地獄だった。
ああ、わたしが下手くそだから、みんなに嫌われてしまったんだ。

そんな中でも唯一の救いは、バレーボールが思いのほか楽しいことだった。
運動神経が破滅的に悪いわたしでも、練習するほど自分が上達していくことを実感できたのだ。
B子に付き合ってもらって、ひたすら練習した。はじめてまともにサーブが入った時のことは、10年経った今でも鮮明に覚えている。
そうして半年が経ったころ、少しずつ試合にも出してもらえるようになり、同学年のチームメイトや先輩、後輩とも言葉を交わすことが増えていった。

ところが相変わらず、同学年チームのキャプテン・副キャプテンの2人とは、なかなかうまく話せない。
よりによって、わたしが苦手としていた、カースト上位に君臨しているタイプの2人だった。
小学校からの内部進学組。美人で運動神経もよく、気が強くて、いつも輪の中心にいる2人。
話しかけても相変わらず素っ気なく、彼らがわたしにパスを回してくれることはなかった。
たまに声をかけられても挙動不審。そんな気の小さいわたしは、彼らの癇にさわる嫌われて当然の存在だ。

少しずつバレーボール部に馴染んできたとはいえ、いまいち自分に自信が持てず。
チームの中心人物である彼らに認められない限り、よそ者感はいつまで経っても拭い去れない。
何となくイライラして、部活が終わって家に帰ってからも両親に当たってしまうことがあった。
そのうちに涙が止まらなくなったものだから、この際、と両親に悩みを打ち明けてみた。
そんな折、父親に言われたひとこと。

「嫌われたら、相手の目をまっすぐ見ろ。」

相手が自分のことを嫌いと分かっていながら、どうしてまっすぐ目を見れようか。
それでも、言われてみると確かに、相手の表情なんて怖くてよく見てなかった。
冷たい目でわたしを見ているに決まっている。
でも、もしかしたら何か変わるのかも……。半信半疑で次の日さっそく試してみた。

「お疲れさま」

部活が終わって更衣室に戻る道すがら、今だ、と声をかけてみた。きちんと目を見て。
驚いていたけれど、すぐさま笑顔で「お疲れさま」と返ってきた。
なんだ、同じ人間じゃないの。ああ、簡単なことだったんだ。涙が出そうだった。

相手の目をまっすぐ見ることは、相手と同じ目線に立つということ。
対等な関係になるということ。
本当に嫌われていたかもしれないし、ただの思い込みだったかもしれない。
けれど正面から向き合ってみたら、そんなこと、もう関係のないことだった。

大人になると人は感情を露わにしなくなる。できるだけ波風を立てないように。
とはいえ、目は口ほどにものを言う。

あれこれ考えて卑屈になるなんて、もったいない。
堂々と、相手と同じ目線に立とう。きっと新しい世界が開けてくる。

***

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2017-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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