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メディアグランプリ

明日も、その明日も、その明日も、その明日もまた。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:桝田綾子(ライティング・ゼミ日曜コース)

我が家の5歳児は、今日も元気だ。

「お母さん、お腹すいたー」
「公園に行く! いまから行く!!」
「あれが欲しいなー」
「お母さんやだ、お父さんがいい」
「おやつ食べたーい」
「いやだ、いやだ、いーやーだー」
「保育園にあるの、家にも買ってよー」
「抱っこぉぉぉーーー」
「もー! 今やろうと思ったのに、先に言わないで!!」
「うぇぇ……お、お母さんがいいー……」

5歳児と過ごしていると、気の休まる暇はない。
ねぇねぇお母さん、と呼ばれることにすべて答えていたら、やりたいことはなにひとつ進まず、時間だけが過ぎていく。

布団をたたもうとすれば弟と一緒に布団の上で転げまわり、掃除機をかけようとすればおもちゃを盛大に床にぶちまける。
洗濯物をたたんでいるすぐ横で洗濯物の山に飛び込み、料理をしようとすれば「ねぇ、折り紙しよう」。
メモをしようとすればペンがどこかに消えているし、ずいぶん静かだな? と思えば本が本棚からごっそり落ちている。

5歳児には、どうやら「今やりたい」しかないようだ。
「はいはい」「なーに」と聞き流したり、ときどき答えたりしながら、なんとか家事を終わらせる、そんな毎日。

こどもたちが眠りについた後ならできるかな、やりたいな、と思うことがあっても、こども達と布団で絵本を読んでいたはずが、気づけば朝になっている……。

ふと、この日々はまるで小説や映画のようだなぁと思う。

先日、ある方に教えていただいた。
小説や映画は、悲しんだり怒ったり、不安になったり、読む・観る側にとって「心を動かされること」が読みたい、観たいと思う理由であり、おもしろさなのだという。

小説も、映画も、こどもが産まれてからはなかなか気軽に楽しみづらくなったけれど。
悲しんだり怒ったり、不安になったり……「心を動かされること」って、まさに今、日々体験していることそのものではないか!

その際、こうも教えていただいた。
小説や映画は読む・観る前から、悲しくなったり怒ったり不安になったりするとわかっていても、わざわざ読んだり観たりする。
それは、終わりがある=悲しみや怒りからいつか解放されると知っているからこそ、終わりに向かう途中での悲しみや怒りや不安をおもしろいもの、時間やお金を費やしてわざわざ体験したいもの、と感じられるらしい。

5歳児にねぇねぇと呼ばれて、進めたいことが進まない日々も、いつか終わりのあること。
小説や映画のように、短い時間ではないけれど。

それでも、一年を小説の1章と考えれば、もう5章が過ぎたところだ。
18章を過ぎる頃には、ねぇねぇと毎日呼ばれることも、今のように一緒に過ごす時間も、きっとなくなるのだろう。

終わりがないようでいて、1章や2章を振り返ってみることは今、もうできる。
産まれたばかり、退院して家に帰った日、寝返りをした日、1歳の誕生日、はじめて歩いた日。
産後に自由に動けなくて泣いたこと、夫に不満をぶつけたこと、こどもの初めての高熱にどうしたらいいのだろうと不安で途方にくれたこと……。

1章2章を過ぎた今、あんな風に「心を動かされる」日々は終わってしまったことを、私はもう知っている。
6章目の今、自分のやりたいことが進まない、こどもの求めるぜんぶには答えられなくてごめんね、など私の感じていることも、章がひとつ、ふたつと進めば、もう感じることもなくなるのだろう。

小説や映画について教えていただいた時、終わりが最初からそうすぐにはわからないからこそ、その途中をおもしろく楽しめるのだ、とも聞いた。

5歳児がこれからどんな人になっていくのか? なにを考え、なにをするようになるのか? それが今わからないのはたしかに楽しみで、成長を見ているのはおもしろい。
そして、こどもの成長と共に私自身や夫、私たち夫婦の関係も少しずつ変わってきているように感じている。私自身や夫、私たち夫婦の関係が20章を終えたころにはどうなっているのか? ということもまた、先がわからない楽しみのひとつだ。

小説や映画に比べれば、少し時間は長いものの。
この先どうなるのかがわからないまま、悲しみも怒りも不安もその最中にいる主人公のように、今この日々を体験することにしよう。
小説の読者、映画を楽しむ人のように、いつか終わりが来ると知りながら……いや、お話の主人公でありつつ、いつか終わりが来るものと、時々にその「終わった」ところにいる将来に思いを馳せながら。

今日もまた6章の1ページに、心も体も動かしてくたびれた私と夫、それから元気に遊び回って疲れて眠る5歳児とその弟の寝顔を記そう。
そして明日も、その明日も、その明日も、その明日もまた、くたびれながら記していく幸せを噛みしめたい。

***

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2017-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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