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メディアグランプリ

砂の城


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:カプチーノ(ライティング・ゼミ日曜コース)

幼いころ、砂場や浜辺でよく砂の城を作った記憶があるのは私だけではないだろう。砂の城は奥が深い。作り込もうと思えば、かなりの大作ができあがる。

まずは水を撒いて土台を固める。砂浜であれば海水を汲みに行くのに遠すぎず、でも波が及ばないところがよいだろう。城作りは、無造作に手で砂を盛っていくやり方もあれば、バケツに水を含ませた砂を詰め、積み上げていくやり方もある。土台をしっかり作っておけば、中々高いお城を築くことができる。塔を作り、お城を塀で囲む。砂団子や貝殻を使ってお城を飾る。てっぺんには棒をさし、旗をなびかせる。

そして、トンネル掘りがまた子ども心をくすぐるのだ。お城の下にトンネルを開通させる。お城の壁に穴を掘る。そーっと掘る。崩れないように細心の注意を払いながらそーっと掘る。崩れてしまった時には思わず「あっ!」と声が出る。そして悔しい思いを抱えながら崩れたところを直して再びトンネルを掘るのだ。

砂の城作りってほんとうに夢中になる。今なおそのシーンを思い浮かべると、この『夢中になる』とか『没頭する』という感覚が体中に蘇ってくる。そしてお城が完成した時のその満足感たるや表現に尽くしがたい。

でも、そんな立派な砂の城も、ふと体がぶつかってしまった瞬間に、はかなくも崩れ落ちてしまう。浜辺で作った時には潮が満ちてきて、いつしか流される。特に思い掛けずにお城が崩れてしまった時の切ない気分といったらない。

ふと思った。あれ? それってまるで人間関係じゃないか。ひとつひとつ築き上げたその関係が一瞬にして崩壊する。時としてそのくらい脆いものだ、人間関係というのは。ボクにはそんな経験があった。

ボクと彼女はまさにそんな関係だ。まるで波にさらわれた砂の城のように、ボクと彼女の城は一瞬にして崩れさり、二人をつなぐ砂のトンネルは今や何とか手前の穴から向こうの景色がかすかに見えるくらい。

でもかろうじてつながっている。彼女と会えるのは月に2時間だ。年にすると24時間。そのわずかな時間にボクは彼女に振り向いてもらおうとありったけの愛情をそそぐ。

けれども彼女はボクの気持ちにお構いなし。男女関係なんてそんなもの。彼女は無邪気にこう言うのだ。「お友だちもたくさんできたしね、これからは会える時間が少なくなっちゃうときもあるよ」

ボクはこの2時間をものすごく大切にしているのに。正直なボクは動揺を隠せない。ぐさりと刺さる彼女の言葉。でも彼女に悪気はない。ボクが内心落ち込んでいるのを見透かすかのように彼女は言葉を続ける。「でもね、特にお友だちとの約束がなければ、会える時間が多くなる時もあるよ」

その言葉に救われた気分になる。まさに一喜一憂。もう掌の上で転がされている状態だ。こんなに年の差があるのに。

旅行に行けば彼女にお土産を買ってくる。旅先では「彼女へのお土産は何がいいかな。何を買っていったら喜んでくれるかな」とあれこれ頭を悩ませていることを彼女は知らない。

いつか思い出話にも花が咲くようにと、ボクと彼女がいつ何をしたか、記録に留めていることを彼女は知らない。

カメラを向けられるのをいやがるけど、後になって振り返ればそれはそれで昔懐かしい思い出の一枚になる。そう思って写真を撮りためていることを彼女は知らない。

30近くも年下の彼女。

「おとうさん、今日は何して遊ぶ?」

離婚を機に離れ離れになってしまったひとり娘。そう、私には離婚した元妻のもとに9歳になる娘がいるのだ。まだまだかわいい盛りの。「月2時間」とはいわゆる面接交流と呼ばれる面会の時間。

愛しの娘と過ごす時間が月2時間というのは極めて短い。けれど、これはボクの意思だけでは決められない。砂の城がすべて自分の思い通りには作れないように、人生も思い通りにはいかないのだ。

これってお涙ちょうだいストーリー? とんでもない! そんなことを言うほどロマンチストでもないし、現実から目を背けるほど夢想家でもない。

目の前にいる愛娘との父娘(おやこ)関係の絆を築くために、どんな状況だってボクは前を向きたいと思っている。時間が限りなく制限されていたとしても、その中でできること、紡げることを見出していく。自分ができることはすべてをやり切りたい。

潮が満ちれば砂の城は流されてしまうし、トンネルだって塞がれる。砂場でだって同じこと。時に意図しない形で砂の城は崩れるのだ。だけど。
修復もまた可能だということを忘れてはいない。何度だって砂の城は作り直せるのだ。

人生はなんでもかんでもうまくいくことばかりじゃないってこと。自分がいて、相手がいて、他人がいる。だから、思わずぶつかってしまってせっかく作った塔が、トンネルが、崩れてしまうことだってあるけれど。それでもまた砂を積み上げ、トンネルを掘る。10年後に、20年後に、しっかりとした父娘関係が築けているように。父として砂の城を今日も築く。

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2017-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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