メディアグランプリ

46歳のおっさん、夜な夜な腰をフル。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講申込みページ/東京・福岡・京都・全国通信】人生を変える!「天狼院ライティング・ゼミ」《日曜コース》〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
【東京・福岡・京都・全国通信対応】《日曜コース》

 

 

記事:野々山公久(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「今度こそイケるはず……」
 
何度も腰をフリ続けること30分。汗びっしょりになりながら自身を奮い立たせるように呟く。もう全身がガクガクだ。息を切らせながら何度も挑戦するが、ぜんぜん上手くできない。僕だっていい大人だ。理屈はわかっている。「昔はもっとできたんだ!」言い訳がましく嘆いても、体が一向についてこない。
 
「情けない……」
 
ふと他人はどうなのか気になり、恥を承知で知り合いの女性に尋ねた。「ぜんぜん続かない」と泣き言をいう僕に、彼女は「時間が許せばいつまでも続けられるわ」とあっけらかんと言う。「長いと途中で飽きちゃうからテレビとか見ながらヤることもあるよ。教えてあげようか♪」爽やかに笑う彼女は、なんだかずいぶん男前だった。
 
僕は切羽詰まっていた。今年で46歳。今なんとかしないとまずいのだ。いや、タイムリミットはもう過ぎてしまったかもしれない。とにかく、もう恥ずかしいなどと言っている余裕はなくなっていた。僕は、彼女に手ほどきをお願いした。
 
ずいぶん年下の女性にこんなことを教えてもらうなんて……。屈辱感が襲う。いや、でもこういうのは若い方がいいのか? 色々考える間も無く、手ほどきは始まった。実践を交えながら優しく丁寧に教えてくれる彼女。失敗するたび情けなくうなだれる僕。腰は回すのではなく前後にフル、激しくしすぎてもダメ、リズミカルに合わせるのがコツだと、彼女は汗にまみれの顔で笑った。
 
それからは実践の毎日。毎晩、頑張って腰をフル。何度諦めようと思ったことか。だけど、途中でやめてしまっては、教えてくれた彼女にも顔向けできない。開始から3日目、突然コツがわかってきた。腰がリズミカルに動きだす。確実に成長している。続けられる時間と回数はだんだん長くなり、心の余裕も出てきた。
 
初めはただ、がむしゃらにやっていた。だけど、そんなに力は入れなくても良いことがわかった。自然に逆らわずに腰をフル。そうすると、ある瞬間、ふわっと同調するような感覚が全身を襲う。これがなんとも言えず気持ちいい。フラフープと僕は、まさに一体となる。
 
僕は切羽詰まってフラフープをやっている。
 
サラリーマンを辞めて2年。やりたい仕事を自分のペースでやれるようになり、生活はずいぶん自由になった。自由になりすぎた。ストレスフリーな生活は、心も体もどんどん解放していった。それと比例するかのように、お腹の肉も自由気ままに増えていった。
 
メタボ。ストレスまみれのサラリーマン生活が、知らぬ間にダイエットに繋がっていたことに今更気づく。もともと怠け者の僕は、退社後、運動を思い切りサボった。一時期ノリノリで筋トレをしていたが、不意に飽きてしまい、ほったらかしにしたのが、脂肪増量に拍車をかけたようだ。まったく求めない形で、貫禄が5キロ以上ついた。体が重い。
 
「痩せなければ」
 
食事だけで痩せるのは限界がある。以前4週間の断食をしたことがある。およそ1ヶ月で15キロ近く痩せたが、およそ半年で20キロ近くリバウンドした。断食は、体質改善や修行にはもってこいだと思うが、体という器を根本から変えないことには、ダイエットした体重は維持できない。
 
わかっているのだけど、2年の間にだらけきった体は、ほとんどの運動を受け付けなかった。すぐに息が上がる。昔は軽々持てたダンベルも持てなくなっていた。かと言ってお年寄りに混じってウォーキングなどをするのはまだ抵抗がある。だらけた自分を恨むが、その代償であるだらけた体を人に見せたくない。そんな安いプライドが僕をどんどん運動から遠ざけていった。
 
そんな時、フラフープに出会った。同年の女性漫画家さんが書いたフラフープ・ダイエットの本を、先ほどの女性が貸してくれたのだ。読んでみると著者は同い歳、しかも女性だ。これなら人目につかずこっそりやれるし、同世代の女性ができるのなら楽そうだし続くかも。最後の望みとばかりに、アマゾンでこっそりフラフープを買った。ただ、楽勝だと思っていたのは間違いだった。悪戦苦闘しながら、夜な夜な腰をフル日々が始まった。
 
なんだかんだで1週間。僕は100回以上連続してフラフープを回せるようになっていた。楽しい。まだまだ目標とする体重やスタイルには程遠いが、心なしか体は軽いし、ウエストのタプタプがちょっとだけなくなった。
 
それに、まったくできなかったものができるようになる喜びは、思いのほか大きかった。「自転車に乗れるようになる」なんていうのもそうだけど、一からできるようになる喜びは、大人になってからあまり経験していないと思った。少なくとも、僕はそうだった。「いつしか失敗を恐れ、堅実なものにしか手を出さなくなったのかな」と反省する。「フラフープごときで」と思われるかもしれない。けど、なにかに気づくきっかけなんて、こんなもんなのだろう。
 
切羽詰まって初めたフラフープ・ダイエットだが、なんだか懐かしい、新鮮な気持ちを取り戻せた気がした。現に、これをきっかけにして、僕はいろいろ新しいことを始めた。ダイエットはもちろんだけど、ちょっとした達成感を味わいたい方にも、フラフープはオススメしたい。
 
ちょっとウキウキしながら、今夜も汗だくのおっさんは腰をフリつづけている。
 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【4月開講/東京・福岡・京都・全国通信】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《初回振替講座有/通信受講有》

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2017-05-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事