メディアグランプリ

浅田真央という流れ星


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記事:島本 薫(ライティング・ゼミ:日曜コース)
 
 

真央ちゃん――。
 
そんな愛称で呼ばれ、国を超え世代を超え、世界中から愛された一人のスケーターが、2017年4月10日、フィギュアスケート選手としての引退を表明した。
その夜は速報が流れ、マスコミは相次いで特集を企画。引退記者会見はあちこちの局が生放送し、400人以上もの記者が集まったという。
 
ざわつく会場に現れた浅田のやわらかなたたずまいは、一瞬にして場の雰囲気を変えた。
 
そう、浅田真央は、やはりスターだった。
けれども、輝く星というよりは、流れ星のような存在だった。
 
わたしたちは、そのきらめきに「幸あれかし」という願いをかけたのだから……。
 
浅田真央を語るとき、よくあがる言葉が「笑顔」と「涙」だろう。
人の心をやわらげ、幸せをくれる、不思議な笑顔。
多くの人が「真央ちゃん」に幸せという願いをかけ、その姿を見つめた。
 
笑顔は涙に縁どられることも多かった。
成功率の上がらないトリプルアクセル。バンクーバーオリンピックの銀メダル。基礎からの再出発。母の死。ソチオリンピックの渾身の演技。迷いと復帰。伸び悩む成績。故障……。
その涙を知っているからこそ、今度は誰もが
 
「あなたに幸せになってほしい」
 
と願った。誰もが、と言っていいほど多くの人が「幸せになってもらいたいですね」と口にする、稀有なアスリートだった。
 
思えば、フィギュアスケートとは過酷なスポーツだ。名前をコールされ、リンクに飛び出していった後はたった一人、数分間にわたって自分という人間をさらけ出さなくてはならない。いいものも悪いものも、氷の上では不思議なほど、その人の生き様が出てしまうものなのだから。
 
浅田真央という選手がすごかったのは、弱さを見せるのをためらわなかったことだと思う。弱さもまるごと氷上にさらけ出したうえで、言い訳もせず愚痴もこぼさず、自分を信じるものを貫き、時にそこから桁違いの強さを引き出して見せた。
 
そんな彼女だから、引退の報道に世界中から感謝の声と、変わらぬ応援のメッセージが寄せられたのだろう。
 
わたしが知る限り、この話題にふれた番組はなかったが、ソチオリンピックのショートプログラム修了後に、失意の浅田真央を励まそうと呼びかけてくれた選手がいた。
 
“Everyone Send More Support and Positive vibes to support Mao-Chan! #GoMao !”
「みんなで励ましの声や前向きな気持ちをどんどん送って、真央ちゃんを応援しよう!」
 
“Very sad for Mao and her score, and I’m sure many fans as well, but don’t give up and even more support Mao for better FP! #MaoFight!”
「真央のことが、あの得点が悲しくてたまらない。多くのファンもそうだと思う。でもあきらめないで、フリーはもっといいものになるよう、より一層の応援を送ろう!」
 
#GoMao、#MaoFightのハッシュタグを作ったのは、ウズベキスタンのスケーター、ミーシャ・ジー選手。彼の呼びかけに答え、世界中から浅田選手に応援の声が寄せられた。
 
世界中が、あなたらしい演技を、あなたの笑顔を願っていた。
 
そして翌日、浅田は4分間を滑り切った。メダリストの演技は忘れても、これだけは忘れられない、魂の演技を見せた。勝負の世界にも関わらず、勝敗を遥かに超えた高みに届く演技だった。
 
鳴りやまぬ拍手の中、力を出し尽くした浅田は、涙と笑顔の両方を浮かべて観客に応えた。
 
ありがとう――。
 
演技者も観客も、ともに感謝としか言いようのない感動に包まれた。
あなたの演技を見られて、よかった。
あなたを応援できて、よかった。
あなたと同じ時代に生きることができて、よかった――。
言葉にすると大げさだが、真のアスリートとは、今この瞬間のかけがえのなさに気づかせてくれ、同じ時代に生きることのできた歓びを感じさせてくれる存在なのだと思う。
 
アスリートがアスリートでいられる時間は短い。その意味では、誰もが流れ星なのだろう。それでも、あれほど心を打つ演技を見せ、幸せをもたらす笑顔の持ち主はいなかった。
 
そんな彼女に、わたしたちは幸せの願い星であることを求め過ぎていたのかもしれない。だから、なおさら、今は言いたいのだ。お疲れ様。ありがとう。これからは、涙よりも笑顔の多い人生になりますように――と。
 
笑顔とともにたくさんの感動を与えてくれたあなたの涙を、わたしたちは見てきた。何より、わたしたちの知らないところでは、どれほどの涙を流したことだろう。それでも浅田真央は、選手として愚痴も弱音もはかず、故障すら言い訳にしなかった。ただどんなときも、前を向いていた。そう、あのアクセルジャンプのように。
 
「私のフィギュアスケート人生に悔いはありません」
 
代名詞と言われた三回転のアクセルジャンプは、唯一前向きに踏み切って跳ぶジャンプだ。浅田真央は最後まで前を向き、次のステージへと軽やかに舞い上がった。競技の中でもアスリートでいられる時間の短いフィギュアスケートだが、幸い、彼女にはまだ表現者として滑る機会がある。
 
ルールに縛られないあなたの演技を、見守り続けたい。ずっと。
 
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2017-05-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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