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春はドラクエの季節 さぁ、冒険を始めよう!


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記事:サンディ(ライティング・ゼミ日曜日コース)

 
 
「起立! 礼!」
「宜しくお願いします!」
気合のこもった大きな声が講堂に響く。
 
「こちらこそ、宜しくお願いします」
僕も軽く挨拶を返す。
 
毎年5月に行われる大卒の新入社員の受け入れ研修の始まりである。
机に座って必死でメモを取る彼らの顔を見ると自信と不安を隠せない純粋さが初々しい。
 
僕は新入社員時代、というより入社して4年間はコンプレックスが服を着たような人間だった。なぜなら、「できる新人」に必要な3つの要素を当時の僕は見事に外していると入社後すぐに気付いたからだ。
僕の経験上、周囲から期待される新人は人気ゲーム「ドラクエ」で例えるところの3つのパターンに分けられる。
 
まずは作戦を立てるのが上手く、総合的にプロジェクトをリードできる「勇者」タイプ。これはやはり高学歴な肩書を持つ人の指定席だ。頭の回転が速く、ロジカルな思考を持つ彼らは新人時代から頭角を現す人が多い。よく「高学歴のわりに使えない」という言葉を聞くが、裏を返せばそれだけ「高学歴は使える」という事だ。
 
次はとにかくタフな「戦士」タイプ。ここには伝統ある大学の体育会出身者が座る。
長時間勤務に強いだけではなく、タフな交渉や修羅場に力を発揮するのがこのタイプだ。また人脈も広く酒も強い。飲み会や接待でも重宝されるタイプだ。
 
最後は、特殊な環境下で力を発揮できる「魔法使い」タイプだ。
留学経験がある人や、英語の代表資格「TOEIC」を始めとする難関資格を持っているのがこのタイプだ。特に語学ができるというのは大きな武器となり「できる新人」候補の筆頭になることも少なくない。
 
言うまでもなく僕はそのどれでもなかった。
プライドだけは人並み以上に高かった僕はそれでも何とか「勇者」になろうと試行錯誤を繰り返した。今振り返れば滑稽なほどの「ニセ勇者」だ。
更に僕に追い打ちをかけたのは「現場勤務」という配属先だった。
製造現場で管理スタッフとして勤務する僕の職場で活躍するのは現場の作業者や、そこで働く技術系のエンジニア達だ。そこに経済学部出身の僕の居場所はなかった。現場経験もなく、特殊技術も持っていないのだから当然だ。そしてそんな役立たずの新人の言うことなど誰も聞くはずがない。管理業務が上手くいかないのもこれも当然だ。
 
こうして入社早々、負のスパイラルに入った僕は次第に荒れてきた。
アドバイスや注意をしてくれる人を邪険に扱い、自分の仕事が上手くいかないことを人のせいにし始めた。
一人で仕事を進められず、周囲とのコミュニケーションもよくない。
誰が見ても救いようのない「ダメ社員」だ。
 
そんな腐りかけていた僕を救ってくれたのは仲間だった。
少し年上の他部署の先輩や、当時の上司は何故か何もできない僕を気にかけてくれ、可愛がってくれた。たまに仕事が早く上がれる時は決まって僕を飲みに誘ってくれた。
そこで雑談に交えて与えてくれた様々なアドバイスは僕の仕事への向き合い方を少しずつだが確実に変えていった。
 
そして、ようやく僕は自分が「勇者」や「魔法使い」の要素が皆無であることに気付いた。「戦士」として生きていくにもタフさが足りない。
 
いつの日からか僕は自分でも必要とされる「居場所」を探すべく暇さえあれば、自己分析をし、試行錯誤を繰り返した。ようやく自分の立場を理解した時には入社して既に5年が過ぎていた。
 
僕の適正、それはドラクエの「勇者」「戦士」「魔法使い」といった目立つ場所にはない。自分が対応困難な敵(仕事)に出会ったらひたすら助けを呼び強い味方に来てもらうという「魔物使い」の戦い方こそ僕にはぴったりだった。
 
なぜ、もっと早く気が付かなかったのだろう。周りにいる人達は敵ではない。
日頃からしっかりコミュニケーションさえ取れていれば、困った時はちゃんと助けてくれる仲間が僕の周りにはたくさんいたのだ。
それからも順調とは言い難いが、確実に仕事での成果は上がるようになった。
 
仕事とドラクエはどうやら同じらしい。
プロジェクトメンバーの個性を見極め、必要な役目を引き受ける事で一人ではできない事も力を合わせればできるようになるのだ。
 
そんな経験をしてきたが故、新入社員の気持ちはよくわかる。
だから僕の講義の内容はただの情報提供に留まらない。
自分の失敗談やそこから得た教訓が多い程、彼らに話せるアドバイスは多くなる。
 
「入社おめでとう。いろいろ不安があると思うけど大丈夫。君達の仕事はドラクエと一緒だ。敵は強いし、物語は複雑だ。でもこれから得られる経験値と仲間は学生時代の比ではない。さぁ勇気を出して踏み出そう。プレイ時間は約40年ある!」
 
ドラクエを知らない女子社員は一時ポカンとしていたが、最終的に理解してくれたと思う。
満足して僕は研修を終えた。
 
後日、人事部の先輩から連絡がきた。
「君がやってくれた工場の安全管理システムの講義だけど、報告書にドラクエがどうこう書かれていたんだけど、どういう事?」
 
あいつら、余談しかノートを取ってなかったのか?
どうやら、僕もまだまだ困難な旅が続きそうだ。
 
 
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2017-05-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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