プロフェッショナル・ゼミ

共・同・正・犯〜ひみつのかほり〜《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講申込みページ/東京・福岡・京都・全国通信】人生を変える!「天狼院ライティング・ゼミ」《日曜コース》〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

【東京・福岡・京都・全国通信対応】《日曜コース》

記事:小堺 ラム(プロフェッショナル・ゼミ)

大正時代に建てられたという石づくりの校舎。
長い廊下、並ぶ教室。
教室の腰高窓のすりガラスをわずかに開けて、私は目を凝らした。
誰がいるんだろう。
教室の隅の椅子に重なり合うようにして座っている二人。
きょ、教室で何してんの?
高校2年生、17歳の私は、まだうぶだったこともあり、禁断のシーンを見た気がして、ドギマギした。
バク、バク、バク……。
心臓の鼓動が早くなる。
目を細めて教室の隅を見る。
何で、こんな時に眼鏡をしてこなかったんだろう。
自分の近眼と、今日眼鏡をしていない境遇を呪った。
女性は私と同じ制服のようだ。
男性は、茶色のジャケットを着ていた。
あれは、美術の木下先生?
腰高窓の高さに合わせて身をかがめる。
中腰になっている筋トレのようなキツさも気にならないほど集中していた。
女の子は誰なんだろう?
更に目を凝らす。
わずかに開けたすりガラスの隙間から教室の隅を必死で見る。
私がいつも授業を受けている木製の椅子に、胸と背中を密着させて重なり合って座る二人。
上に座っている女子高生が、振り返って木下先生の顔を見つめていた。
見つめる彼女の表情はここからはよく見えなかった。
だけども、何かねっとりとした濃厚な雰囲気がそこら中に漂っていた。
甘い匂いと、ねっとりした感覚。
先週、生物の時間に勉強した南方に生息食虫植物は、甘い香りがする粘液をだして、養分となる虫を誘い込み、捕獲するらしい。
甘い香りで虫を誘いこむ食虫植物を想いだした。
寒い廊下。
見つからないように気を付けてゆっくりと吐く私の息が白い。
寒いこともすべて忘れて、私は目を細めた。
あ、あれは茶山さん??
茶山さんと、木下先生?
あ、あの二人、学校で、重なり合って……。
その時だった。
ポンポン、と私のセーラー服の後ろ襟を、誰かがたたく。
ドキリとして振り返る。
クラスメートの秋山辰夫が間抜け顔でつっ立っていた。
「お前、何してんの」
「シー」
私はとっさに秋山の口を人差し指で押さえた。
ブヨっとした感触が私の人差し指に加わった。
硬く見えた秋山の唇が意外にも柔らかかったので、なんだかどぎまぎした。
「何か見えるのか?」
秋山が私を押しのけて窓枠から教室の隅を覗いた。
20秒くらい秋山は動かない。
しばらくして、かがめた腰を元に戻した秋山は、わずかに開いていた教室の窓を静かに静かに閉めた。
無言のままだった。
そして、私の手を引いて廊下をぐんぐん歩きだした。
「ちょ、ちょっと」
秋山は私の手を引いたまま、校舎の外にある秋山が所属している新聞部に入った。
「面白いもの見たじゃん、これ、スクープだぜスクープ。高校教師と教え子の禁断の恋だぜ」
秋山は興奮して私に言った。
ちょうどテレビドラマで高校教師と女子高生の純愛がテーマになっていた。
新聞部員として熱心に制作している秋山は、今見てきたことが、かなりのタイムリーなネタになるということを私にまくしたてていた。
興奮して話す秋山の顔を見つめながら、私はぼんやりと思った。
神聖な校舎で、私と同学年の茶山さんが制服のまま、美術の木下先生の膝の上に乗っていた。
たまたま、偶然のハプニングが起こってああいう構図になっている訳ではないことはわかった。
ねっとりとした茶山さんの視線。
受け止める木下先生の表情。
眼鏡をかけてなかったからよく見えなかったけど、文学の本でよく出てくる「絡み合う視線」ってあんなことを言うのだろうか。
私の体験したことのない世界だった。
さっき覗き見たシーンを想いだすだけで、私はイケナイことをしている気分になった。
ドキドキして、顔がのぼせてきた。
何故かよくわからないけど、下腹がジンジンして痛くなった。
私の中の何かがトロリと溢れ出しそうだった。
「ちょっと、お前、聞いてんの?」
「え、あ、ごめん」
「もう一度言うけど、俺たちであの二人の秘密をあばこうぜい。これはスクープだしおもしろそうじゃん。しばらく追いかけて、いいネタになりそうだったら、裏新聞で連鎖しようぜ」
「は? 私を巻き込まないでよ。自分で勝手にやって。第一、やばいじゃん。見つかったらどうすんのよ」
迷惑は御免だった。
新聞部の秋山とは小学校も中学校も同じで、今はクラスは違うけど、何となくの腐れ縁だった。
秋山は、面倒だからという理由で、坊主頭で、オシャレにも興味がないらしく、四六時中むさい感じで、いつも社会派のマニアックな小説を読んでいて女子にも全然人気がなかった。
だけど、大きくなったら新聞記者になりたいという秋山は、周りに合わせずに実に自分を貫いて、生きているようだった。
一方で私は、クラスで群れている女子の人間関係をうまく乗り切ることに人生を費やしていた。
好きな曲はJAZZなのに、皆がライブチケットを苦労して手に入れようとしている爽やか男性アイドルグループの曲が好きなフリをしたり、本当は塩辛が好きなのに、放課後は無理やりパンケーキ屋さんにクラスの仲良しみんなで並んで、ブリブリのホイップクリームがのったパンケーキを苦行のように食べてみたりした。
本も、皆はファッション誌が愛読書だったけど、私はよしもとばななが大好きで、本当は文学を語れる友人が欲しかった。
秋山は変人だから、周りと合わせなくてもいいかもしれないけど、私は周りと合わせるのが大切だった。
独りでさみしそうと言われたくなかったからだ。
だから、自分の好きなことは封印していた。
秋山のようにできたらどんなにいいだろうと思ったこともあるけど、私にはできないと思っていた。
だからこそ、秋山と関わり合いになるのは御免だった。
今回秋山と関われば、木下先生と茶山さんのアバンチュールを追い続けるという面倒に巻き込まれるのが嫌だった。
だけどそれは建前だった。
本音では、秋山といたら、世の中に同調して生きている自分のことが哀しくなってしまうのだ。
だから秋山と行動を共にするのが嫌だった。
私の頭の中は、ぐるぐるとそんなことを考えていた。
一方で私の下腹はジンジンしていた。
さっき、寒い石造りの廊下で目を細めて覗き見た、茶山さんが木下先生を見つめる表情。
甘く濃い空気。
もう一度見たいと思った。
あの雰囲気に浸かりきって、むせかえってみたいと私の心はは叫んでいた。
高校で教師と女子生徒が重なり合っている。
そんな事実を見つけたら、先生に報告するのが優等生かもしれない。
だけど、私は二人がこうなったプロセスを知りたいと思った。
「じや、決まりだな。もう少し取材して、裏を固めたら、俺が記事にするか、もしやばそうだったら、お前がエロコラムとして裏新聞に連載しろよ。おもしろいだろ? できるとこまでやってみようぜ。今から学校を出る二人をつけようぜ。」
「え? ちょ、ちょっと」
秋山の気迫におされたフリをして、私はほとんど自分の意思で、これからあの二人を追跡することにした。
単なる好奇心を超えた感覚だった。
あの先、二人がどうなるのかを知りたい。
神聖な教室でさえ、あの濃厚な雰囲気を作り出していた二人のこれからの行為を見たい。自分から湧き上がる自然に湧いてくる気持ちを抑えられなかった。
さすがにもう一度、あの教室に近寄れないから、木下先生が通勤に使っている車の動きで出入りを確かめようということになった。
木下先生は、黒のハリヤーに乗っている。
職員駐車場を見ると、まだ車は止まっていた。
しばらく駐車場が見える渡り廊下で秋山と二人見張っていた。
木下先生が車に近づいてきた。
「あれ? 一人?」
秋山がつぶやく。
秋山先生は一人で車に乗り込んだ。
茶山さんは?
さすがに、一緒に行動しないのかな。
私は、ほっとすると同時に、がっかりした。
先生と生徒の不潔な交わりはあってはならないと思うと同時に、もう少しあの鮮烈で優美な甘い雰囲気に浸ってみたかったという気持ちがあった。
「おい、茶山さん出てきたぞ」
秋山の声で我に返って窓の外を見た。
茶山さんは車には乗らず、制服のまま一人で歩いて校門を出ようとしている。
「あのさ、途中で拾うかもしれないよ、私茶山さんの後を歩くから。あとはケータイで連絡しよう。秋山は木下先生を見張って」
私はそう言って、15メートルくらいあとから静かに茶山さんを追尾した。
私がとっさに行動したので秋山は虚をつかれていた。
しかし、しばらくして、秋山からラインで、「木下車出発、西通りに進行。俺、タクシーで追跡」と入ってきた。
西通りか~。
ひょっとしたら、西通りに出た茶山さんを拾う?
私は冷静に先の展開をよみながら進んだ。
予想通り、西通り1丁目の角で黒いハリヤーが停車して、茶山さんを助手席に乗せた。
私は秋山に電話で連絡し、秋山が乗っているタクシーに合流し、黒いハリヤーを追尾することにした。
「しかしさあ、教室であんなことして、これから後は行くところが決まってるようなもんじゃん。別々に門から出てるんだぜ。もう、クロだろ」
ベテラン記者のように秋山が言った。
私は、健全な展開であってほしいと同時に、二人が濃厚な関係で会ってほしいと願う矛盾を心に抱えたまま、黒いハリヤーを見つめた。
ハリヤーの助手席乗る茶山さん。
信号の度に、二人は見つめあっているようだった。
手をつないでいるのかなあ……。
余計な妄想が駆け巡る。
それに引き換え、私はなんで秋山なんかの隣に乗ってるんだよ!!
自分の境遇を呪いながらも、しっかりと見失わないように前を向いて、運転手さんに指示を出した。
黒いハリヤーは繁華街をこえ、郊外へ出た。
そして、ポツンとたっているラブホテルに吸い込まれていった。
「ど、どうする秋山……」
「どうするって、はいるっきゃないだろ」
「え!!」
乗車したタクシーをラブホテル前で降り、制服のままの私と秋山はラブホテルに入った。
私はもちろん、ラブホテルなんか入ったことなかった。
ここは、男女がいかがわしいことをするためにある場所なんだ。
木下先生と茶山さんがやましいことをしないかどうかの、確認の取材調査なのに、なんでなんでよりによって秋山とここに入らないといけないのか!!!
「いくぞ!」
秋山はまごつくことも無く、ずかずかと私の手を引いてラブホテルの駐車場に入る。
ハリヤーが止めてあった。
ここは、部屋を決めたあとにその駐車枠に入るシステムになっているようで、木下先生たちは「ハワイ」という部屋に入ったようだった。
「ここで待つのもなんだから、俺たちも入ろう。大丈夫だ、変なことはしないから」
「わかってるって、そんなことしたら張り倒す」
私たちはそう言って、「カサブランカ」に入った。
「ハワイ」の隣だからここにした。
初めて入るラブホテルは、思ったよりも殺風景な作りだった、
ダブルベッドが一つ。
大きめのお風呂とトイレが普通にあった。
クラスで男子が回し読みしていたエッチな雑誌に書いてあるような、カラオケセットがあったり、噴水があったり煌びやかで猥雑な部屋じゃなかったので拍子抜けした。
だけど、むしろ、ベッドがあるだけのシンプルな作りな方が、この中での目的が究極に絞られる気がしてきた。
そう思うと、体が硬くなってきた。
緊張したのだ。
壁一枚隔てた向こうの「ハワイ」に木下先生と茶山さんがいる。
二人は、今、何をしているんだろう……。
壁に聞き耳を立てている秋山が振り返って、ずかずかとダブルベッドに腰掛けていた私に近づいてきた。
ま、まさか……。
私の腕を強くつかんだ。
ゴクリ。
私は唾を飲んだ。
固唾をのむって、こういうことをいうんだ、と頭の裏の方でかすかにそう思った。
秋山は無言で私の腕をひっぱり、私を壁際に連れて行った。
私にも盗聴しろというのだった。
何だ……、ほっとすると同時に、ちょっとがっかりしている自分がいた。
私は秋山と一緒に壁に聞き耳を立てた。
茶山さんの声が聞こえてきた。
「卒業したらって……、今は堂々となんで会えないの……」
「あと2年待ったら迎えに行くから、だから今日でしばらく終わりにしたいんだ」
秋山先生が諭すように言っていた。
茶山さんは秋山先生の事、好きなんだなあ。
私は、心底羨ましかった。
二人が、こんな形で隠れて会わないといけない境遇だったとしても、そういう存在がいるというだけで、いいなあと思った。
茶山さんのすすり泣きがわずかに聞こえた。
私は壁から耳を離した。
「もう、これはクロだな。前から関係してたんだろ」
秋山は、男女の深いことなんてまったくわからないだろうに、そんなことをしたり顔で言った。
「出待ちまで、何か食って腹ごしらえだな」
秋山はルームサービスで焼きそば、から揚げ、コーラ、アイスクリームを二人分頼んだ。
私は、隣と対照的なまったく色気のない展開にホッとすると同時にちょっとがっかり
した。
焼きそばをたいらげて、秋山は再び壁に聞き耳を立てる。
「おおおーーっと。クライマックス。佳境だ。もうすぐ終わるなこれ」
「え、どれ!!!」
私は寝ころんでいたダブルベッドから飛び起きて、壁に聞き耳を立てた。
それはそれは切ない喘ぎ声が聞こえた。
女って、こんな声が出るんだ……。
私と同じ年齢の、どちらかというと地味な存在の茶山さんが出す声は、まるで月が泣いているような声だった。
神妙な気持ちで壁から耳を離した。
何か、聞いてはイケナイものを聞いたような気がしたからだ。
いやらしいという感じは全くなかった。
それよりも、神聖すぎて、神々しすぎて。
二人の世界を盗み聞いてしまった、そんな後ろめたが私を襲った。
「そろそろ出るぞ。もう完全に黒だ」
私たちは、ラブホテル駐車場入り口が見える方向の窓を少しだけ開けて、黒いハリヤーがホテルの駐車場から出てくるのを見届けた。
秋山は、しっかりと一眼デジカメでその様子を写真に収めていた。
私はカメラ画像を確認している秋山に言った。
「ねえ。真実は突き止めた。茶山さんと木下先生はできている。それがわかっただけでいいんじゃない? 別に新聞にかかなかったとしても」
「え? だって大事件だぜ。犯罪だぜ犯罪。17歳だからな。しかも、教師と生徒だぜ。世間が食いつくだろ」
「愛があるからいいじゃない。聞いてて思わなかった?」
「愛があったって世間が許さないさ」
「じゃ、だったらなおさらやめようよ。裏新聞に載せることを」
「そうはいくかよ、みんな、刺激に飢えているんだ。みんなが欲しがっている読みたいような面白い情報を提供するのが、俺たち新聞を書いているものの役割なんだよ」
「わ、私はやらないからね。やるならあんた一人でやってよ、私を巻き込まないでよ」
私と秋山は今後の方針の違いにより大いにモメながら「カサブランカ」を出た。
そしてエレベーターに乗り、入り口近くにあった自動精算代で支払いを済ませた。
「ノータイム 6400円」
と代金が表示されていた。
「たかっ! なんもしてないのに、6400円かよ!」
秋山が言い放った。
「仕方ないでしょ、スクープ取るためにさっきまで必死だったじゃないの」
さっきまで、秘密を共有し、同じ目的を遂行していたからこそ、どうにか保っていた私たちの連帯感は無残に消え去っていた。
まるで戦利品を山分けする段階で仲違いした犯人グループみたいだと私は思った。
制服を着た私たちは誰にも見つからないようにホテルを出た。
薄暗いホテルから外に出ると、ギラリと稲光のような強い光を感じた。
雨雲も無いし、何なんだろう。
まあ、いいか、それよりも、秋山の暴走をどうやって止めようか。
私はそんなことを考えながらしばらく秋山と無言のまま歩いてタクシーを拾った。
「君たち、高校生だろ? 付き合ってんの? 最近の若い人は、いいなあ。楽しそうで。でも妊娠するようなことは、まさかしてないだろうね。ははははっ」
明らかに私たちのことを下世話な色眼鏡で見ているタクシーの運転手がいやらしく感じた。
普段からそんなことしか考えてないんだろう。
そんな奴はほっとけばいい。
タクシーの後部座席に無言で座る私たち。
隣に座る秋山の顔をちらりと見た。
秋山は、本当に校内裏新聞に茶山さんと木下先生のことを掲載するつもりなんだろうか。
ラブホテルの薄壁に耳を当てて聞いた、月が鳴くような喘ぎ声。
あれは行為の快さに喘いでいたわけじゃない。
好きなのに関係を終わらせないといけない、たまたま好きな男が教師だったってだけで、諦めないといけない、そんなどうしようもなさに泣いていたのだと思う。
だったら、やっぱりそっとして置いてやりたい。
元はと言えば、私がいかがわしさ満点の好奇心で教室をのぞいたことが原因だ。
私が秋山を巻き込んだのだ。
今日のことを裏新聞で発表しようとしている意固地な秋山をどのように説得すればいいのか、私はわからなかった。
最寄りの私鉄の駅についたので私たちはタクシーを降りた。
それぞれの乗り場は別だった。
無言で別れ帰路につく。
鈍行の私鉄に揺られながら、私は茶山さんと木下先生の今後を案じた。
茶山さんは退学させられるだろう。
木下先生は、未成年の生徒に手をつけたということで、ひょっとしたら逮捕されるかもしれない。
あんなに愛し合っていた二人の結末がこれだなんて、正直悲しすぎる。
二人の将来が秋山の「世間を楽しませるものを提供したい」というエゴのために潰されていいものなのだろうか。
鈍行列車の窓ガラスに映る虚ろな自分の顔を見ながらぼんやりと思った。
だからと言って、秋山の中途半端な正義感といかにも素人的なジャーナリズムでさえも、今の私には取り押さえられる力量もなかった。
早ければ明日にでも、校内で茶山さんと木下先生のことが取り上げられた裏新聞が秘密裏に回されているかもしれない。
噂はすぐに伝わるから、今週中に、他の先生の知るところになるだろう。
そして木下先生は逮捕、茶山さんは退学に追い込まれるのだろう。
私は自分の軽はずみな好奇心を悔いた。
そして、なんであの時、通りかかったのが秋山だったのだろうかという、誰かの采配を呪った。

「おはよー」
「あ、お、おはよう」
何だろうか、茶山さんと木下先生の一件で昨日一睡もできなかった私の顔にクマでもできてるのかな。
今朝、登校して誰に挨拶しても、反応が微妙だった。
仲良いクラスメイト誰に挨拶しても、なんか腫れ物に触れるようだ。
ま、いいか。私のことはさておき。
大親友のくみが来てから、昨日の一件を相談しようかな。
「くみ、おはよう。ねえ、相談したいことがあるんだけど」
「お、おはよう。私もちょっと聞きたいことあるんだ」
「いいよ、くみ。私の話は長くなるから、先に話して」
「わ、わかった。あのさ、あんた、秋山辰夫と付き合ってんの?」
「え、まさか! 付き合ってないよ、あんな変人と」
「あのさ、秋山と二人でラブホテルから出て来てる写真が裏新聞で回ってるよ。さっき、廊下渡ってるときに、クラスの男子が読んでたから」
「え!!!」
私は廊下に出て、ニヤニヤしながら冊子を読んでいるクラスの男子からひったくるように冊子を奪った。
それは裏新聞だった。
一面には私と秋山が昨日、茶山さんと木下先生を追尾終わった後、放心状態でラブホテルから出てくるところをまさに撮影したショットが掲載されていた。
だ、誰が、いつ、どうやってこれを撮影したんだろう。
思い返せば、ホテルから出る瞬間、強い稲光を感じたことを思い出した。
身を固くしながら、私は呆然として教室に戻ると、校内放送で職員室に呼ばれた。
ラブホテルに秋山と行ったことを担任から問い詰められる。
事実なので否定のしようがなかった。
誰が??
一体??
何の目的で???
ぼんやりと考えていると、担任の背面に座っている木下先生が、ニヤリとこちらを向いて笑った。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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