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メディアグランプリ

また来たか、母の日


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記事:川井(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「久しぶり! 元気にしてるー?
そういえば、もうすぐ『あれの日』、だね!
期 待 し て 待ってまーす♥
From 母」
 
久しぶりに母からメールが来て一体何だろうかと思えば、母の日の催促メールだった。
思わずため息がでた。
 
毎年、4月の末くらいになると、母から必ずといっていいほど母の日の贈り物を催促される。うちの母は、家族のイベントごとを大切する人である。それも、そこに自分が関係しているとなれば、なおさら騒ぐほどに。私にはこれが、つくづく近所迷惑だった。
送らないと絶対後で嫌味を言われるのは目に見えている。メールを見て私は憂鬱な気分になった。
 
私には、なぜそこまで母の日を大切にしなければならないのか、未だよくわかっていない。
母の日が感謝の日というのは知っている。だけど、感謝ということなら、私は日頃母にはいつも口で感謝の言葉を口にしていた。
 
「いつも仕事忙しいのに、料理作ってくれてありがとう」
「忙しいわりに、料理上手だよね」
「あ、服買っててくれてたんだ。ありがとう!」
「うん、さすがセンスいいね。気に入ったよ。ありがとう」
 
相手が母でなければ、周りから女性を口説いているとでも勘違いされるのではなかろうか。それくらいには、私は日頃、感謝の言葉を意識して口にしていた。口にしなければ、相手には伝わらないと思っているからである。
だというのに、母の日というのはそれとは別だという。なぜ、別になってしまうのだろうか。
私には、母の日というのは、普段、自分の母親に直接お礼や感謝の言葉が言えない人が、母の日という日を借りて気持ちを伝えるという行事にしか思えなかった。だから、普段から「ありがとう」をたくさん伝えている私からしたら、母の日は「なぜ?」がいっぱいだった。
 
ひとまず、今年は何を贈ろうか考えねば。
母が花を好いているのはわかっていた。自分で自分のために花をよく買うくらいには、花が好きなようだった。だから、母の日は花を贈るということは、もうすでに決まっていた。問題は、何の花を贈るか、というところである。うちの母は、気に入らないものはなんでも気に入らないと口をよこす人である。さすがに他人には遠慮をするが、家族に対してはとことん毒舌だった。もしもお気に召さなかったら、それこそもう一度買いに行かせるかもしれない。そんなお人だった。だから、何を贈るかは慎重に選ばなければならない。私はいくつもの花屋に行って、母が気に入りそうなものを、あーでもないこーでもないと悩み続けた。
 
そういえばメールが届く数日前、一緒に花屋に訪れたとき、母はどうやら赤色のガーベラとやらがお気に召したようだったことを思い出した。今回はその赤色の花で攻めてみるか。そう決めて、また花屋に赴いた。
 
だが、とある数件目の花屋に訪れたとき、そこにあったバラの切り花がすごく素敵で思わず目を引いてしまった自分がいた。しかも赤ではなく、黄色のバラである。
買うならこの花がいい。
心からそう思った。しかし、母の好みではないのが問題だ。二つ買えればいいのだが、苦学生の私にはそこまでの余裕がなかった。
じゃあ、どうしようか。悩むにしても3秒くらいだったが、ある結論にたどり着いた。
「そうか、母のためだけだからだめなんだ。自分のためでもいいじゃん!」
 
こうして、私は赤色のガーベラではなく、黄色のバラを買うことに決めたのであった。
もちろん、これは「母の日の贈り物」である。自分のためでもあるが。
 
これを聞いた全国のお母さん方は、きっと怒っているに違いない。
なんせ、理由が不純だ。母の日なのに、母のためというよりは、自分のために買っているのだから。そこには、母親への感謝の心がチリ一つ感じられないことだろう。いや、まだ贈っただけ、チリ一つくらいは感じてくれているかもしれないが、この世には「誠心誠意、真心をこめて」とかいう言葉がある。このことを大事にしているお母さん方に関しては、全員を敵に回してしまった自信がある。
 
だが、これだけは言わせてほしい。
今回の贈り物は、実をいうと、私がこれまでの母の日の贈り物と比べてずっと気分がいいものだったのだ。
「そりゃそうだろう、自分の好きなものを買ったんだから」と突っ込まれそうだが、私が言いたいのはそういうことではない。
今回贈った花は、母にすごく喜んでもらえたのだ。赤のガーベラがいいとほのめかしていたくせに、私が選んだ花も気に入ってくれたのだ。このことを聞いたとき、私はさらにうれしくなった。自分が感動したものに、同じく共感してくれる人がいるということほど、喜ばしいことはないだろう。それが口うるさい人になら、なおさらだ。自分が認められたような感じがする。
そのあと、自分の好きなものを好きと言ってくれる人と一緒にそれを愛でたわけだが、その時間は存外悪くなかった。これなら、来年また母の日が来ても、「またか(面倒)」にはならない。「またか(期待)」だ。
自分のためにも買ってよかった。
 
 
***

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2017-05-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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