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弁当箱を出し忘れた、から始まる私達の作戦


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ごとうみのり(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「いい加減にしなさいよ!」
いつもニコニコ。こどもが家に帰る頃にはマドレーヌを焼いて待っている。
世間的にはきっと温厚の部類に入る母でも怒ることがあった。
 
それは、食べ終わった弁当箱をその日のうちに出し忘れた時だ。
 
開けたときのあの匂い。冬ならまだいい。夏だともう弁当箱は死亡している。お湯につけたり、二度洗いしたりと、手間ひまかければ復活することもあるが、蘇生率は低い。
 
そもそもなぜ、出し忘れていたのか。というか、なぜ弁当箱を出す習慣が身に付かなかったのか。
よく、勉強や整理整頓、読書なんかの行動習慣は1ヶ月、ダイエットや筋トレなどの身体習慣は3ヶ月、プラス思考や論理的思考といった思考習慣は6ヶ月、って言う。学校なんて1年中行っているのに、弁当箱を出すという1ヶ月頑張れば身に付くはずの行動習慣は、身に付いていなかった。
自慢じゃないが、平均すると1週間に1回くらのペースで出し忘れていた。
 
本当に身に付いていなかったのか。土曜も部活動に行くためにお弁当を持っていっていたことを考えると、一週間にお弁当の回数は6回。そのうち1回出し忘れる。
これが1ヶ月だと、×4週間で24回中4回の失敗。
1年だと、さらに×12ヶ月で288回中48回の失敗。
失敗確率は約16%。
あれ?
意外と低い?
 
それでも、失敗は失敗。母は考え、そして提案してきた。
「弁当、自分で作ってよ」
理由は二つあった。まず一つは、出し忘れの繰り返しによる、母のやる気喪失だった。失敗確率16%だよ、と食い下がったが、普通0%よ、の一言で一蹴された。
もう一つの理由は、私が朝練に行くと言ったからだ。
当時中学まで、徒歩45分の道を通っていた。荷物が重たい日は50分になる。
家を出るのが7時15分という時刻を30分早めたい、という私の要望に低血圧の母はギブアップしたのだ。母は朝、特に早朝がとても苦手だった。
朝練に行きたかった私は、自分で作ることにした。
 
次の日から自分でお弁当を作る日々が始まった。卵が好きだったので、とりあえず卵焼きは毎日いれた。たまに目玉焼きも入れた。友達には、目玉焼きが弁当に入っているの、初めて見た。って言われたけど、好きだから私は幸せだった。
好きなものを好きなように入れられるのが、自分で弁当を作る醍醐味だと思った。
隙き間全部を朝だけで埋めるのはしんどかったので、昨日の夕飯の残りを使うところだけ甘えさせてもらった。
 
ちょっと気合いを入れた日は、当時ちょうど流行り初めだったキャラ弁にも挑戦してみた。簡単で友達からの評価も高かったのは、まっくろくろすけだった。ご飯を丸く詰めて、海苔をかぶせる。丸く切ったかまぼこに、海苔で目をのせれば完成だ。面倒なのはかまぼこくらいで、これをクリアするだけで、昼の時間に友達と盛り上がれる。
 
休日に色んな主婦のお弁当ブログを見るのが習慣になった頃だった。
お弁当を作り始めてから、私はお弁当箱の出し忘れをしていないことに気がついた。
作り始めてから出し忘れた記憶がないので、失敗率は0%だ。
たまに気が向いた母が半分くらい作ってくれた日もあったが、出し忘れはなかった。
 
弁当箱を洗う、という単体の行為だけでは習慣化ができなかったが、お弁当を作って、食べて、洗う、という一連の動作を全て自分で行うことによって、ようやく身に付けることができたようだ。
 
私の失敗確率が0%になったのを見計らってか、母が私より早起きしてお弁当を作ってくれるようになった。部活動を引退して、朝練の日々がおわって、受験生になったせいかもしれない。
 
母のお弁当があるのは模擬試験がある日だった。
模擬試験を受けることができる、一番近い会場まで電車を使って1時間。朝はとても早く出なければいけなかった。
 
相変わらず低血圧なので、ちょっとイライラしているのだけれども、きまっておかずに魚系のものが入っていた。
鮭の塩焼き、サバの味噌煮、鮭フレークがごはんにふりかけられている時もあれば、魚肉ソーセージの日もあった。
 
特段疑問に思っていなかったのだけれど、いつものようにお気に入りの主婦の弁当ブログを読んだとき、私は気がついた。
 
先日の中間テストが悲惨だった息子。
DHAを取ると、頭が良くなるらしいので、息子の弁当に必ず魚を入れるようにしています。
 
そうか。
だから模擬試験のときは毎回魚が入っていたのか。
 
模擬試験の8割は午前中で終わるので、本当は朝ごはんに食べた方がいいんだろうけど、母は母なりに考えてお弁当を作ってくれているようだ、という事に気がついた。
目玉焼きが入っていなくても、私は幸せな気持ちになった。
 
試験から帰ってきたとき、私は弁当箱を出して、洗った。
お弁当にこめられたメッセージだったから、お弁当で返した方が、言葉以上に伝わる気がしたからだ。
 
残念なことに、模擬試験が1ヶ月に1回だったので、習慣にはならなかった。
けれども魚のおかげか、努力のおかげか、志望校には合格できた。
 
今、また私は毎日お弁当を作っている。自分の分ではなく、夫の分だ。
いわゆる愛妻弁当、ということになる。
でも私は、海苔でLOVEとかつくったりしない。明太子でハートの形を作ったりもしない。
その代わり、素人なりに栄養バランスを考える。去年はトライアスロン、今年はアイアンマン。筋力アップしろ、と念をかけながら、ささみや豆をたくさん入れる。
母もこんなことを考えていたのだろうか。頭よくなれ、と念をかけていたのだろうか。
ちょっぴり母の気持ちも分かるようになった。
 
夫が弁当箱を出し忘れるどころか、酔って電車の網棚に忘れてきた時には唖然としたが、中学の時の私は言うのだ。
 
「だって、疲れてたんだもん」
 
さて、どうやったら、夫からピカピカのお弁当箱のお返事がもらえるだろうか。
 
 
***

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2017-05-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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