ふるさとグランプリ

僕は彼女に、いまでも片思いをしつづける。《ふるさとグランプリ》


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記事:塩 こーじ(ライティング・ゼミ)

 
 
彼女は美しい。
 
化粧や服装も派手だ。
 
博識で教養も高い。
 
流行にも敏感、話題も豊富でみんなを楽しませる。
 
いま何がはやっているか、何がおいしいか、つねに敏感にアンテナを張りめぐらせている。
 
24時間、ほとんど眠らずに働き、そして遊ぶ。エネルギーに満ちあふれている。
 
なにより金持ちだ。
 
だからぼくのような、とりわけ裕福でもない男が、女と楽しもうとするときは、先立つものが大変だ。
 
彼女に会うとぼくはいつも自分にひけ目を感じてしまう。
 
性格も地味で外見も十人並み。なんのとりえもない凡人だ。
 
暮らしているのだって片田舎の小さな町。
 
彼女はときどき、ぼくを非難するようにいう。「あなたはいつでも、私と会ったあとはさっさと帰ってしまう」
 
「しかたない。終電が早いんだ」ぼくはしまらないいいわけをする。
 
「たかだか電車で1時間半くらいのところじゃないの」
 
「きみがいる場所とは違いすぎる」
 
そう。もともと知りあうべきではなかったのかもしれない。ぼくと彼女は、さまざまな意味でレベルがちがいすぎる。
 
それでも僕は、少しでも彼女のレベルに近づこうと努力した。
 
さっぱり理解できないアングラ演劇を鑑賞したり場違いな美術展に出かけたりした。
 
まあそうやって背伸びしたおかげで、すこしはイイ男になれたかもしれない。あくまで自分の願望にすぎないけど。
 
最近では、たまに会うと彼女はこう漏らすようになった。
 
「このごろ、こんなふうに会うこともめっきり少なくなってしまったね」
 
彼女のいうとおり。一緒に会うのはいつもショッピングや遊びのときだけ。
 
彼女と寝起きをともに暮らすことはとうとうかなわなかったな、とぼくはふりかえる。これからもその願いが実現することはないだろう。
 
きっとぼくの両親だって、ぼくが彼女と一緒に生活したいときりだしたら絶対反対するにちがいない。
 
しかたない。彼女は外見が派手なのでいろいろと誤解されがちなのだ。
 
彼女のことを性格的に冷たいだの、おたかくとまっているだのという人も多い。
 
いや、けしてそんなことはない。意外と性格的に古い部分や、昔気質で情にあふれたところだってあるのだが。
 
「あんな女にうつつを抜かして」そう非難する友人もいれば、反対にすばらしい女性だと絶賛する友人もいる。ぼくにいわせれば、みな彼女の一面しか見ていないのだ。
 
とにかくさまざまな面を彼女は持ち合わせている。ぼくにはいつまでたっても真実の彼女の姿を知りつくせそうにない。
 
そこに惹かれて、ぼくは飽きもせず、もう長いこと友だちづきあいを続けているのだが。
 
本当の彼女の姿は、やはり一緒に暮らしてみなければわからないだろう。きっとこのぼくだって、100パーセント彼女を理解してはいない。
 
たしかに一部では彼女はとても評判が悪い。
 
とくにお年寄りや保守的な人たちは彼女を嫌っている。反対に若者の多くからは彼女は絶大な支持を得ている。
 
ごたごたに巻き込まれることも多い。まあお金も持っているし性格的に派手なところもあるので、やむをえないが。
 
彼女とは、ずいぶん長いつきあいになる。
 
「バブルのころの君はすごかったなあ。あのころはぼくも若かったし。何もかもきらめいていた。夢みたいだった」
 
「夢はいつか醒めるのよ」クールに答える彼女。
 
「わたしだって、あのころみたいにもう若くないわ。むかしのような元気はもうないなあ」
 
そうなのか。永遠に年をとりそうにない彼女だって、やはり年をとるのか。
 
でもその事実を彼女自身から聞くのはつらい。やはり彼女にはいつまでも若々しく、ぼくを魅了してほしい。
 
彼女はいまでも若い男たちから人気が高い。
 
ぼくぐらいの年齢になったら、そろそろ彼女の前から身を引くべきだろう。もう彼女と遊ぶには、自分は年をとりすぎているかもしれない。
 
でも、まだ彼女をあきらめきれずにいる。彼女にふさわしい男ではないことはじゅうぶん承知しているのだが。
 
まだまだ彼女と楽しみたい。スリリングで刺激に満ちた時間をともに過ごしたい。
 
彼女の影響力は並みはずれている。彼女がすすめるものはたちまち日本全国に広まってしまう。
 
多くの画家が彼女を描いた。多くの写真家が彼女を撮った。彼女は多くの歌に歌われ、多くの物語に登場した。
 
むかしから日本各地の若者たちが、おおぜい彼女に会いにきた。つねに彼女は全国クラスで憧れの的だった。
 
そんな彼女をぼくがひとりじめできなくてもあたりまえだ。
 
いつまでたっても、真実の彼女を知りつくせそうにない。
 
これからもぼくの彼女への思いは変わらないだろう。
 
彼女の名は東京。ぼくは彼女に、永遠に片思いし続ける。
 
 
***

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