メディアグランプリ

ネコまみれの女


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記事:ちくわ(ライティングゼミ 日曜コース)

 
 
山手線に乗りこむと、違和感を感じた。
乗り込んだ車内は混んでいるにも関わらず、隣の車両はガラッと空いている。
今日は朝から暑いので、弱冷房車なのか。
それとも不快なニオイを発する、おじさんでもいるのか。
 
私は、隣の車両をみて、ある一人の女性で視線がとまった。
そして何度も、まばたきをした。
 
30代くらいの女性。白いTシャツにデニム。上には黒いカーディガンを着ている。
異様なのは、彼女の頭の上だった。
 
ネコが大量に乗っている。
 
座席がないスペースの端で、彼女は背筋を伸ばし、立っている。
車窓をじっと見つめる横顔は、美人のオーラを感じる。本人は何の違和感もなく、つり革につかまっているが、近くに乗りあわせた人々は、彼女から1mほど空間をあけて、離れて立っている。
 
彼女の頭の上のネコは、本物ではない。全てぬいぐるみだ。日本うまれのキャラクターで、世界的にも熱狂的ファンがいるネコ。鼻は黄色、片耳に赤いリポンがついているといえば、皆さんもうお分かりだろう。
ぬいぐるみのサイズは、キーホルダーについているような小さめではない。おしりをつけて座っている全身タイプで、青いつなぎを着ている。しっかり厚みがあり、立体的で、両手に乗る大きさだ。調べたところ、1体1000円以上すると思われる。ざっと見る限り、20個程度ありそうな、そのぬいぐるみを、様々な角度で組んで、頭に固定している。
接着剤なのか、ゴムや糸などで編んでいるのかは、私の位置からわからない。ただ、髪の毛全体までも覆い隠している。
まるで、インド人のターバンのごとく、頭にネコのぬいぐるみが「巻き付いている」状態だった。電車が揺れても、手で支えていなくても、頭のぬいぐるみはビクともしない。
 
新宿に電車が到着した。頭がネコまみれの彼女は、そそくさと電車を降りる。私も今日は、たまたま新宿で、しかも、一人で買い物をする予定だった。好奇心が芽生えてしまった私は、ひとまず反射的に、彼女の後を追うことにした。一体どこへ行くのだろうか。
 
新宿駅は、休日のお昼すぎということもあって、駅は人でごった返している。普段なら、気分的にぐったりするが、今日は好都合。彼女の後ろから、私がついていっても、あまり怪しまれない。しかも、彼女は背が高い上に、頭がネコまみれ。非常に目立つ。
すれ違う通行人は、みな驚いて避けたり、友達同士で指差し、コソコソ笑いながら話したりしている。すると、彼女が歩く方向には、人波がなくなり、自然と通路ができる。思わず「モーゼか!」と心の中でツッコんでしまった。
そして、次々と伝染するように反応が広がり、駅員さんまでもが、ザワつき、かたまっていくのがわかる。
当の彼女は、そんなことはお構いなしに、颯爽と歩く。足が長く、ペースが早いので、私は小走りになる。
 
JRの改札を出て、さらに彼女の歩くペースは早まった。
 
私は後ろから追いかけるうち、彼女の全体像がみえてきた。よく見ると、肩から下げているトートバッグも、そのネコキャラクターの顔を模している。色が鈍い銅色だったため、すぐに気付かなかった。さらに黒いカーディガンにも、ネコが耳につけているリボンの模様が全体に入っている。履いている白い靴下にも、そのキャラクターの顔のアップリケがついていた。子ども用のサイズはあっても、大人用は無いだろうから自作だろうか。
こうみると頭だけではなく、全身がネコまみれだった!
 
驚愕の事実に、一人で頭が混乱しつつも、彼女を追いかけ続けた。そして、彼女は、京王線の改札へたどりつき、吸い込まれるように入っていった。
 
私の追跡はそこで終わった。しかし、察しはついた。
京王線から、多摩方面へ向かうと、そのネコのキャラクターがいる遊園地がある。彼女は、そこへ行くため、おめかししていたのではないか。
ただ、なぜあんな目立つ格好を?しかもそんな熱狂的ファンであれば、もっと早くに出発すべきではないか?
 
遊園地のサイトを調べた。そして私は、イベント情報のページを見て合点がいった。
「小林幸子、降臨」
なんとこの日は、1日限りのスペシャルイベントとして、演歌歌手の小林幸子さんが出演する予定だった。夕方16時30分から、特別パレードが上演される!
 
ここからは、あくまで私の想像だが、あの全身ネコまみれの女は、ネコキャラクターと小林幸子さんの大ファンかつ、コスプレイヤーではないか。
 
小林さんといえば、紅白でのド派手な衣装の印象もあるが、最近は、新しいファン層を増やしている。アニソンを歌ったり、アニメイベントなど若年層が集まる場所でCDの手売りをしたりしているからだ。「ラスボス」との愛称までついている。
 
また、コスプレイヤーであれば、派手な格好をして、多くの人から見られても、堂々とすることに慣れている。コスプレイヤーはキャラクターを忠実に再現するため、衣装を手作りするというから、きっと彼女も裁縫が上手いはずだ。そうでなければ、ぬいぐるみ数十体を頭に巻けない。そして何より、彼女はスタイルもよく、目鼻立ちもはっきりした美人だった。どんなキャラクターをコスプレしても、似合うに違いない。
 
全身ネコまみれだった女。ネコのキャラクターと「ラスボス」の中間コスプレをしていたのか、真相はわからない。ただ「新しいファッションの可能性は、こういう発想から生まれるのかも」と感じずにはいられない、そんな出来事だった。
 
 
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2017-06-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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