メディアグランプリ

本当のあなたに会えないから、あなたに似た誰かに浮気をした


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記事:キクモトユキコ(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
会いたいのに会えない。届きそうで届かない。
そんな遠距離恋愛をしていた。これが遠距離恋愛じゃなかったら、もっとあなたが近くにいてくれたなら、きっと私はあなたのことをこんなに考えたりなんかしなかった。
こちらからどれだけラブコールを送ってもあなたは知らん顔で、私の気持ちは届かない。
 
だから私はあなたに似た誰かに浮気をした。
 
あなたが遠く離れているのを良いことに、何回も浮気をしてやった。手間暇かけて、浮気相手をあなたそっくりに仕立ててあげた。身近なところから見繕ったわりには、なかなかの出来だったと思う。自分で育て上げて、私の中で一つになるとき、それはもう格別だった。私には時間もたっぷりあったから、隅々までゆっくり味わうことができた。
 
自分で作り上げたテリヤキバーガーの美味しさったら、本当に格別だった。
 
20代最後の3年間をブラジルで過ごしていた。ブラジルの料理は美味しかったし、移民の国なので欧米・中東・アジア料理のレストランも豊富。日本料理だってブラジルでは大人気で、食べようと思えばいつでも食べることができた。思っていたよりずっと、食に困ることはなかった。それでも私は遠距離恋愛をしていたのだった。
 
そんな私が当時、恋い焦がれていた相手がテリヤキバーガー。あの甘辛いタレが恋しくてしょうがなかった。フライドポテトでテリヤキソースをすくって食べるところを想像するだけでよだれが出そうになる。マクドナルドだってバーガーキングだってブラジルにはあるのに、テリヤキバーガーはそこにはいない。面影はあるのに、そこにはいないあなた。そんな遠距離恋愛をしていた。
 
テリヤキバーガーが食べたくて食べたくて、どうしようもなくなった私はテリヤキバーガーを自作することにしたのだった。バンズはパン屋でハンバーガー用のバンズを買い、テリヤキのタレは醤油、みりん、料理酒、砂糖と和食には欠かせないいつもの調味料。輸入品でもブラジル産でも手頃に購入できるし、もちろん自宅に常備してあったので入手に困ることはない。マヨネーズには隠し味の練乳とレモン汁を入れ、再現度を高めるのだ。再現度と浮気の興奮度は確かに比例する。
 
そしてブラジルでは基本的に牛挽肉しか売っていないので、豚挽肉を入手するのには少し苦労した。友人から豚肉を挽いてくれる肉屋さんを紹介してもらったお陰でその後は楽だった。やはり浮気をする際は協力してくれる友人の存在が欠かせないのかもしれない。
 
手間暇かけたテリヤキバーガーとの初めての密会はなかなかに興奮するものだった。文字通り味を占めて密会を重ねていく。あまりにも自分との相性が良すぎて段々と隠し続けるのが嫌になり、ついには友人たちに交際をオープンするまでに至った。友人たちの評判も良く、ついには「私にも紹介して」とせがまれるまでになったのだった。日本人の友人からもブラジル人の友人からも。テリヤキバーガーへの愛は国境を越える。勿論、私は独り占めせずに、丁寧にレシピを伝えた。
 
正直に告白すると、浮気相手はテリヤキバーガーだけではない。
ラーメンが恋しくなれば、パスタを重曹入りのお湯で茹でて中華麺を作ってみたり、たこ焼きが恋しくなれば、天かすから自作してたこ焼きを作ってみたり。和菓子が恋しくなれば小豆を一から炊いて求肥もどきと合わせて大福もどきをつくってみた。タケノコの入手が難しかったから、ブラジルではポピュラーな椰子の新芽をタケノコ代わりに春巻きを作ってみたりもした。ホームベーカリーで生地を作ったうどんは散々だったけれど。
 
思い返してみると、なんという浮気三昧の日々。それに加えてブラジル料理やブラジルで食べられる各国料理も3年かけてじっくり楽しんでいたわけだから、かなりのプレイガールっぷりだったように思う。
 
あれもこれも遠距離恋愛がいけないのだ。異国の地にいるからいけないのだ。日本に帰れば遠距離ではなくなって、手間暇かけて浮気なんかせずとも会いたかった相手にすぐ会える。これはブラジルにいる間の一時の火遊びなんだ。帰国前はそう思っていた。
 
でも実は私、日本に帰ってきてからも懲りずにまた浮気をしているのだ。
 
シーフードと野菜をパーム油とココナッツミルクで煮込んだブラジル風シチューのムケッカ。甘くて少し刺激的。まさに南国を体現したような彼が忘れられなくて。
ブラジル風揚げ春巻きのパステウ。牛肉でも鶏肉でもエビでもチーズでも。どんな相手でも優しく包み込んでくれる彼が大好きで。
バニラアイスとパパイヤをミキサーにかけて、仕上げにカシスリキュールを注ぐクレーム・ジ・パパイヤ。甘さとカシスのアルコールでふわっとさせてくれる彼が恋しくて。
 
本当の彼らには会えないから、なんとか似せた浮気相手を仕立て上げて楽しんでいる。
 
一度ついてしまった浮気癖は、もう治らないのかもしれない。
 
 
***

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2017-06-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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