プロフェッショナル・ゼミ

既婚とか未婚とかそんなの幸せを測るバロメーターでもなんでもない!《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:bifumi(プロフェッショナル・ゼミ)

「ねえ、ナツも行こうよ、同窓会!」
久しぶりにミホからかかってきた電話は、20年ぶりに開かれる高校同窓会への誘いだった。正直、私は全く気が乗らない。
なぜって、私は高校が大、大、大嫌いだったからだ。いい思い出なんて1つもない。意味不明の無駄に厳しい校則に縛られ、毎日が息苦しかった。スカート丈は膝下何センチまで。前髪は眉毛がみえる長さに切り揃えること。肩につく髪は2つに結ぶか三つ編みにすること。ボウタイの結び目の大きさは規定内の大きさに。靴下はワンポイントまで、等々・・・・・・他にもいろいろあったけれど、あまりにバカバカしくていくつかは記憶から消してしまった。キラキラした高校生活を夢見ていたのに、軍隊のような学校で、貴重な私の3年間はあっけなく奪われてしまった。学校を辞めようと思ったことも1度や2度ではない。私は高校に全く馴染めなかった。

私にとっての高校の思い出は、灰色一色。
一刻も早くこの学校をでたい! この街をでたい! それだけが高校3年間の私のモチベーションだった。

「ミホも知ってるよね。私あの高校にいい思い出なんかなにもない。悪いけど同窓会はパスする」
何度も断ったけれど、「ねえ行こうよ! わざわざこの同窓会のためだけに帰省してくる人もいるんだよ」という熱心なミホの誘いに負け、渋々出席の返事をだした。私はミホに頼まれると嫌といえないのだ。

ミホとは、高校の3年間を同じクラスで過ごした。
あのグレー色の高校生活の中で、唯一私が心を許せた友達だ。
運動神経がよく、世話好きで明るい彼女はいつでもクラスの人気者だった。誰とでもすぐに仲良くなれる特技をもっている。私が学校に馴染めずもう辞めたいと言った時も、もうちょっとがんばろうよと、何度も引き留めてくれた。私が高校を無事卒業できたのは、誰でもないミホのおかげだ。上級生からも、下級生からも人気があったミホは、高校生活を心からエンジョイしているようだった。産まれながらのスターっているんだと、私はミホを見て早々に悟った。それほどミホから放たれる光は眩しく、彼女の行く先々を明るく照らしていた。嫉妬なんていう感情もわかないくらい、ミホの存在は大きかった。そんなミホのそばにいれることが、私には嬉しかった。

高校を卒業した私たちは、別々の大学に進んだ。長期の休みにはお互いの大学に遊びに行きあった。ミホの家に泊まる時は、もれなく夜遅くまで恋愛話に花が咲いた。大学をでた後、彼女は外国で働きたいという夢を叶えるため、海外青年協力隊に入り、世界中を飛び回っていた。

私はというと、結婚後に会社をやめ、子供を産み、専業主婦になった。はるか遠い国からくるミホからのメールに、「世の中いろんな生き方があるんだ。ミホかっこいいなー」といつも元気をもらっていた。
ミホが世界中を飛び回る姿は、田舎で暮らす私には、誇らしかった。彼女のようなすごい友達をもっているということが、何の取り得もない私の唯一の自慢だった。

2人目の子供を産んで以降、子育てが忙しくなり、ミホとのメールのやりとりも次第に途切れがちになった。
そんな折「同窓会、一緒に行こうよ!」とミホからの誘いがきたのだった。現在ミホは日本に帰国し、海外からの留学生を支援する事務所で働いている。久しぶりにミホにあってゆっくり話ができるなら、同窓会に顔ぐらいだしてもいいかな。つまんなかったらそっと抜けて帰ればいいんだし・・・・・・ミホに会えるだけで私は十分だった。

同窓会の行われるホテルの会場は、入り口からすでに盛り上がっている。
卒業以来、20年ぶりにあう同級生達。外見が当時と変わりすぎて、一見だれだかよくわからない人も、当時の面影と今の姿がピッタリ重なると、堰をきったように昔話が溢れてくる。そんなことがあっちこっちで起こっているので、入り口前ですでに大渋滞。なかなか会場に入れない。

やっと入り口から会場の中を覗き込むと、すでにいくつかの輪ができている。
私は高校に馴染めなかったので、この光景に気後れし、じりじりと後ずさりした。このままフェードアウトして帰ってもいいかな。やっぱり来るんじゃなかった。そう思っていた矢先「お、来た来た。ナツこっちー!」とミホが大きな声で私を呼び、みんなの輪の中に引っ張っていってくれた。ミホ、ナイスタイミング! おかげでなんとか私はみんなの輪の中に入ることができ、ほっとした。

同窓会でもミホは相変わらず大人気だった。あっちからもこっちからも、ミホ! ミホ! と声がかかる。いろんな人の間をかけまわりとても忙しそうだ。そんな中でも私の姿を見つけては、1人にならないように、声をかけてくれる。「ミホ、ほんと昔から変わってないな」
みんなに囲まれるミホの姿を笑いながら眺めていた。人気者という星の下に生まれた人は、やっぱりいつまでも人気者なんだ。ミホと友達でよかった。私はしみじみそう感じていた。

同窓会中、私にはある変化が起こっていた。
懐かしい顔ぶれと話していると、あれだけ嫌っていた高校生活なのに、不思議と楽しかったことしか思いだせない。応援練習、朝課外、九重キャンプ、寒稽古、マラソン大会、きつくてつらくて、泣きそうだったことは、全て笑いのネタに変わっていた。
あの時、あの時間を共有した人たちだけが持つ、記憶の欠片。
理不尽に感じたことも、悔しかったことも、1つ1つの欠片をオセロのように並べていくと、黒い思い出もほんの少しの笑いで全て白にかわっていく。私の高校生活って思っていたほど、つらいものじゃなかったのかもしれない。
昨日下駄箱で「じゃあ、また明日」と別れたばかりのように、20年ぶりにあっても一瞬であの頃にもどれる仲間たち。時間はかかったけれど、高校への嫌悪感が、私の中からすっかり消えてなくなっていた。

同窓会の充実感と心地よい疲れが残る次の日、私はこの思いを早くミホに伝えたくて、急いで彼女に電話した。

「ミホ、昨日はありがとう。すごく楽しかった。最初は乗り気じゃなかったけど、行ってよかった! 私あの頃ミホに、学校辞めたい辞めたいって言ってたよね。高校には嫌な思い出しかないと思ってたけど、みんなにあったら、そんなのすっかり消えてしまった。ミホに誘ってもらえなかったら、高校を嫌な所だったと思いながら一生過ごすところだった。私はいつもミホに救われてるね」
昨日の楽しさと余韻で、私の声はいつもより弾んでいる。

「・・・・・・
ふーん、そっか。
ナツ楽しかったんだ。それはよかったね。

・・・・・・
私は同窓会、全然楽しくなかった。
行くんじゃなかったって、すごく後悔してる」
ミホの冷え切った声が、耳の奥で響く。

何かの聞き間違い?
「えっ!? ミホ、昨日楽しくなかったの? 相変わらずすごい人気で、いろんな人からミホ! ミホ! って声がかかってたじゃない」

「私、途中で気づいてしまったんだよね。
同窓会ってさ、今、幸せな人しか行っても楽しくないってことに。
独身で子供もいない私は、行ってはいけない場所だった。
そんな大事なこと周りの独身の友達も、母親も誰も教えてくれなかった。
二言目にはまだ結婚してないの? なんで? どうして? って質問責め。
独り身はこんなに肩身が狭いものなのかって驚いた。
結婚してる人達は、家のことを愚痴るでもなく、幸せそうで、私は居場所がなかった。
早く帰りたい。それしか考えてなかった」

「そんな・・・・・・ミホ、楽しそうだったのに」
「楽しいフリぐらいはできるよ。いい大人なんだし!」

それ以上話を続ける気にはなれず、私は電話を切った。私はただミホにお礼をいいたかっただけなのに。あれだけ同窓会で楽しそうにみえたミホが、結婚してないことをそんな風に感じていたなんて、信じられなかった。

結婚している私にとって、独身=幸せじゃないなんて思ったことがない。

ミホはずっと自分の夢を叶えるために着々とキャリアを積んできた。そして今は留学生相手に仕事をして、海外と日本の懸け橋になっている。
彼女は自分のやりたいことをやり、必要なスキルを身に付け、着実にステップアップしているようにしかみえなかった。

長い結婚生活の中で、正直離婚を考えたことは何度もある。嫁姑問題にももれなく悩んできた。だからといって、結婚したこと、子供を産んだことを後悔したことはない。なぜなら自分で選んできた道だから。結婚生活を続けていく上で悔しい思いもたくさんした。でもその都度、折り合いをつけてきた。それを友達の前で愚痴ることもほとんどない。それが結婚して十何年もたった人間のいい意味での諦めだ。そうやってみんな、日常をやり過ごしている。
みんな何かしら波風を感じながら日々の生活を送っているのだ。

「今、幸せな人しか同窓会にいっても楽しくない」
ミホの言った言葉がしばらく頭の隅にこびりついて離れなかった。

気分転換に、私は同窓会で再会した友達何人かを誘って食事に行った。
ご飯を食べている時に、ミホの話になった。
「そういえば、ミホが結婚してないってびっくりしたよね。てっきり、国際結婚しました! っていう報せがくると思ってたのに」
「え、そうなの? そんな相手が海外にいってる時にいたの?」私は初めて聞く話に驚いた。
「モテてモテてしょうがないってしょっちゅうメールがきてたよ」
「ほんとに? それどこの国での話?」
みんなで「えっ?」と顔を見合わせた。

変だ。
すごく変なのだ。
そこにいる全員が、ミホが海外にいたころ、メールのやり取りをしていた。
みんなの話を総合すると、どうやらミホは、人によって、送るメールの内容を変えていたようなのだ。
独身の人には、自分が現地でモテてモテてしょうがないという話。
仕事が上手くいってない人には、自分はとてもよい待遇で働いているという話。
結婚して子供がいない人には、現地の子ども達が自分にとてもなついてくれて可愛くて可愛くてしょうがないという話。
だけど私へのメールには、海外生活のつらさ、理想と現実のギャップのつらさがいつも切々と書かれていた。ゆくゆくは日本人と結婚したいと思っていること、現地での待遇や暮らしぶりは決してよくないこと、現地の子供に家の中をめちゃくちゃにされ、子供が大嫌いになったこと。
私に送ってきた内容とみんなのものとが、あまりにも違っていたので、最初は信じられなかった。真相がだんだんはっきりしてくると、みんな一様にショックをうけ言葉をなくした。
私に対するメールが、彼女の一番の本音なんじゃないかという結論になった。

私達はみんなミホが好きだ。いつも光り輝くミホをみてきた。
思い通りに夢を叶えていくミホの姿を眩しく眺めていた。

私達はミホは輝いているのが当たり前だと思ってきたけれど、
もしかしたら輝き続けるために彼女は、いろんなものを犠牲にして燃やし尽くしてきたのかもしれない。輝いている自分を保つために、みえないところで苦労していたのかもしれない。

彼女は海外で独り重い鎧をいくつも身にまとい、日本に向かって武装していた。

唯一の救いは、私にだけは、比較的本音を言ってくれていたということ。
これも憶測だから、彼女の本当の気持ちはわからない。
だけど、誰にも言えない心の葛藤や、悩み、黒い部分を吐きだせる相手として私を選んでくれていたのだとしたら、それはそれでよかったと思う。

ねえミホ、
既婚とか未婚とかそんなの幸せを測るバロメーターでもなんでもないよ。
結婚してたって、みんな大なり小なり悩みを抱えて生きてる。ただそれをいちいち外に向かって言わないだけ。
独身だからって、ミホのこと誰も不幸だなんて思ってないよ。
自分のこれまでの人生を否定するようなこといわないでよ。
人ができないほどの経験をミホはたくさんしてきてるじゃない。
ミホはそのままでいいよ。武装なんてしなくていい。
輝くのがつらかったらつらいっていっていいよ。
輝くの辞めたっていいよ。
ダメなところもたくさんみせてよ。

私は、高校生活でミホにたくさん助けられてきた。
ミホが今まで身に付けてきたいくつもの鎧を、少しずつでも脱ぐことができるのなら、
私はうざがられても、嫌がられても、ミホへの思いを伝えていきたい。

まずは明日、ミホに元気?ってメールしてみよう。
ミホがいなかったら、今の私は絶対にいないのだから。

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