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私が“腹責めエロ漫画家”を応援する理由


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記事:中村公一(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
「この作家はいい!」
 私はパソコンの画面にくぎ付けになった。
 画面には、ある同人誌作家のイラスト付き告知ツイートが表示されている。
 私がある同人誌即売会で作品を手にして以来、面白かったのでチェックしていた作家だったのだが、今月末に商業誌デビューが決まったという旨を報告していた。
 その作品ジャンルが、凄い。
 というのも、「腹責め」漫画である。
「何だそれ」と、思われた方が大多数だろう。ぶっちゃけ私もこの時「腹責め」の意味をよくわかっていなかった。取敢えずヒロインが腹にパンチされるんだろうな、という程度である。
 なぜそんなものを「凄い」と感じたのか。
私は、女性の腹筋が好きなのである。「女性ならおっぱいだろう」というご意見には大いに賛同するところだが、私はそれくらい……いや、ひょっとしたらそれ以上に女性の腹筋が好きなのである。
 その作家・ビフィズス菌(仮名)先生の告知用イラストは、腹筋の浮き出たヒロインのイラスト1枚だけだった。腹責めをする、と言う事は、当然その美しい腹を責めるわけだ。
 それを想像した途端、私は猛烈に興奮した。
 そして、その話を一刻も早く読みたいと思った。
 くだんの商業誌の発売は、その告知を目にしてから一週間後の事だった。取扱店で購入し、早速ビフィズス菌先生のページを探す。
 すると、あった。
「異色の『腹責め』作家、デビュー作を引っ提げ堂々初登場!!」
 というコピーで表紙が飾られていた。
 内容は、予想以上のものだった。期待していた腹責め描写以上に、作家の持つ独自の雰囲気。それが作品のアブノーマルさ、変態性を向上させていて、デビュー作とは思えぬ技量を痛感させられた。
「この作家は、いい!」
 ただでさえ「腹責め」なるアブノーマルな内容を持ってきたのに、「腹責め」以外の魅力もたくさんある。ビフィズス菌先生を贔屓にしていこうと決めた。
 しかし、漫画家の仕事は浮き沈みが激しい。この、あまりにも私好みの作家が、本作一発だけで消えたらどうしよう。と、不安に駆られた。
 腹責めを見られる機会など、同人誌ですら滅多にない。商業誌ではなおさらである。
 そんなニッチなジャンルに、この雑誌は手を出した。同人誌の世界では定評を得て3万人以上のフォロワーがいるビフィズス菌先生に、「腹責め作家」として活躍の機会を与えたのである。何という英断であろうか。
 しかし、その英断も、人気なしと見ればすぐに帳消しにし、作家は切り捨てられる。
 それだけは何としても避けなければならない。
 しかし、どうする。私のような無力な読者に、果たして何ができるのか。
 取敢えずアンケート葉書には「一番面白かった」という場所に作品名を書き、感想の場所には作家を褒めちぎった文章を書きまくった。
 だが、これだけでは不十分に思える。何かできないか。
 妙案が浮かばず、何となくツイッターを眺めていたら、タイムラインにある呟きが流れてきた。
「出版社は100のネットの言葉より、1枚のハガキの意見を取る。なぜならハガキは有料であり、文章を書いたり投函したりと、かなり手間がかかる。その手間をかけてくれるファンがこの作家についているのだな、と編集部は判断する」
 神の啓示か! と、私はパソコンの画面に手を合わせる。
 ファンレターだ。
 これこそ無力な読者が出来る最高の応援ではないか。
 私は早速母親の未使用の便箋を漁った。52円のハガキが効果的ならば、82円の便箋ならばどうなるか。たかが30円高くなっただけだ。されど30円である。しかも便箋に封筒という2つのアイテムが必要だ。そこそこ手間がかかっている。枚数も考えた。短すぎず長すぎない内容が良いと思ったので、便箋三枚分にする。
 と、ここまで来て、私はいったん落ち着いてみた。
 私の本当の望みは何なのか。それは、ビフィズス菌先生に今後も腹責めを始めとした魅力的な作品を描き続けてもらいたい事が望みである。私のニッチな性的趣向を満足させてくれる大変貴重な作家先生だ。切られてはたまらない。
 となると、送るべき相手は先生と言うより編集部である。
 どちらにせよ作家への応援になる事に変わりはない。徹底して先生の作品に感銘を受けたと書き、
「ビフィズス菌先生を切らないで下さい。御誌以外に先生が描けるエロ漫画雑誌はありません。変な自粛などせずに、のびのび描かせて欲しい。御誌のハードな作品群は大好きです。ぜひ、今後の社会情勢が変化して行こうとも、変わらぬ過激な紙面を作り続けていただくことを、切に願います」
 と、いうような内容を文末に持ってきた。
 取敢えず、こういうファンがいるのだと編集部に解ってもらう事を第一目標にしたのである。果たしてどうなるのか、この時は全く未知数だった。ひょっとしたら逆効果になるのかもしれない。手紙を投函した後で、手遅れと解っていながら、私は不安感に苛まれた。
  人事を尽くして天命を待つ、とはこういう気持ちを言うのだろう。

 1年4か月後。ビフィズス菌先生は、この出版社から見事処女単行本を刊行した。
 例の腹責めデビュー作が掲載された雑誌は、今も捨てずに部屋に保管している。その作品の表紙には先生から頂いたサインがあり、私の家宝の一つとなっているのだった。

 
 
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2017-07-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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