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魔性の『ご褒美ワッフル』


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中くみこ

 
 
「ご褒美ワッフル? って、なんですか?」
 
縁あって、福岡天狼院のスタッフとして働き始めてまだ数週間のことだ。
フルタイムでシフトに入って入れば、数週間でもある程度のことは覚えられる。けど、その時店長だった川代さんが、お客様にオススメしていたメニューは聞き覚えがなかった。
 
「あ、出したことない?」
「ないです」
「じゃあ私作るから見てて」
 
そう言って、慣れた手つきで作られたものに、私は目を輝かせた。……と、思う。
 
ご褒美ワッフルとは、福岡天狼院だけで出しているメニューで、週に一回。女性の方は月曜日、男性の方は木曜日にお出ししている。お値段は、お飲物がついて540円。安い。もともとデザートのワッフルはお手頃価格なのに、さらに安い。
正直、お店側としては、安すぎてあまり利益にゃならないのだけど、美味しいから毎週ご褒美ワッフルの日にはオススメしている。たまにご褒美ワッフルの日であることを忘れていることもあるのだけど、そこはご愛嬌、ということにしていただきたい。
ご褒美ワッフルを、初めて目の前に置かれたお客様は、みんな感嘆の声を上げるのだ。カウンターに戻りながら、「そうでしょう、美味しそうでしょう、ご褒美ワッフル。そのソースは私がかけたんですよ、お嬢さんたち」と胸を膨らませる。
 
まず、見た目が良い。
ワッフルの上にアイスクリームを乗せて、その上からたっぷりとベリーとチョコのソースをかけるのだ。ベリーとチョコの、色のコントラストがとても良い。乗っているアイスクリームで見応えがある。
ソフトクリームに、はちみつをかけて食べる『背徳ソフト』は、はちみつのかかり具合がなんとも背徳感にかられるのだけど、ご褒美ワッフルは「小悪魔」という言葉がぴったりだ。
 
そして、味。
ワッフルは、単品でもとても美味しいものをお出ししている。ぶっちゃけもうちょっとお値段を高くした方がいいくらいだ。そんなワッフルが、ソースとアイスでさらに美味しくなる。
ベリーとチョコの相性は、もはや私が語る必要はないだろう。個人的に、ベリーとチョコはお互いを引き立たせるためにあるんじゃないかと考えている。
 
だがしかし。
 
味について、ちょっと不安に思ってる人もいるんじゃないだろうか?
 
「ベリーとチョコのソースをふんだんにって……それ甘ったるすぎるんじゃないか?」と。
 
そらそうだ。片方のソースだけで十分甘いのだ。甘さ控えめを使ってるわけでもない。
だがしかし、花形にして、全体をキュッとしめる立役者がいるのだ。
 
アイスクリームである。
 
チョコとベリーのビビットな色にその大きな体が霞んでしまっている、アイスクリームが全てのキーアイテムなのだ。
アイスクリームがソースの甘さを打ち消しているわけではない。むしろ、アイスクリームだって甘い。その甘さが、自己主張の激しい二つのソースを、まろやかにしてくれるのもあるが、最大の武器はそれではない。
 
ご褒美ワッフルというメニューの中における、アイスクリーム最大の武器は「冷たさ」である!!
 
チョコとベリーの甘ったるさを、その「冷たさ」でキュッと引き締められるのだ!
まだほんのりあったかいワッフルと、冷たいアイスクリーム。デザートソースが、その二つの温度を行き来することにより、単なる「甘ったるい」ではない、「くせになる甘さ」へと昇華される……!!
 
ああ、ご褒美ワッフルが食べたい。
腹の虫も鳴っている。時刻は夜の8時。昼飯は、家を出るちょっと前に食べたから、12時前から何も口にしていない。そら腹が減る。
本日は月曜日でレディースデイだ。仕事終わりにちょっと食べて帰ろう。無論、お金はちゃんと払う。
BGMが響く店内で、一人店番をしながら「なぜご褒美ワッフルは美味しいのか」と熟考していた私は、はたと気づいた。ちなみに暇なのではない。思考が勝手にトリップしていただけである。
 
もしや、ご褒美ワッフルって、ギャップ萌え……?
 
素行の悪い不良が、雨のなか捨て猫を拾う姿にキュンとするように、普段優しくって甘く接してくれる人が不意に冷たく突き放されてのめり込む、あの感覚!? ギャップっていうか、ホストの手法!?
 
だが、確かに心当たりはある。
今も私はご褒美ワッフルに心奪われているし、スタッフの永井さんだってご褒美ワッフルの毒牙にかかっている。しかも、メンズデイには男の人まで虜にしているのだ。
魔性。魔性だ……!!
 
そのくせ「出会えてよかった」なんて思わせる手腕を持っている。他の誰かに食べられてても、嫉妬も起こさせない。
 
ああ、今日は月曜日! また誰かがご褒美ワッフルの毒牙にかかってしまう! そうとわかっていながらもオススメしてしまう私は、もしや客引き!?
ごめんなさい、できれば逃してあげたいけれど、私もあいつの、ご褒美ワッフルの虜なの……。
せめて、他の、パフェとかパニーニとか、お店に優しいメニューに変えていただけますように……!!
 
福岡天狼院限定、ご褒美ワッフルにどうかお気をつけを。
……もしかしたら毎日出せるようになるかもしれないらしいですよ。
 
 
***

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