プロフェッショナル・ゼミ

秘書はつらいよ、上司もつらいよ。《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:あやっぺ(プロフェッショナル・ゼミ)

「このハゲーーっ!」
「違うだろーー!!」

国会議員が秘書に罵声を浴びせ、さらには暴行を加えるというパワハラがあったと、週刊誌が報じた。
衝撃的な暴言の音声データーが公開され、ワイドショーなどでも連日繰り返し報道されている。

何か都合が悪いことが明るみに出ると、「全ては秘書が勝手にやったこと」などと言って、責任を擦り付けるような政治家は、昔からいる。
ミスをしてパワハラを受けたり、上司の不祥事の身代わりをさせられるなんて、秘書にしてみれば、全くたまったもんじゃない。
本当に気の毒すぎる。

報道されている政治家の秘書ほどの苦労はないかもしれないが、上司に恵まれるかどうかは、仕事においてとても重要な問題だ。
同僚と上司の愚痴を酒の肴に飲んだ経験のある人は、少なくないと思う。

Googleの検索窓に、「上司」と入力し、スペース(空白)を入れると、オートコンプリート機能によって、いくつかのキーワードが表示される。

嫌い
英語
メール
パワハラ
プレゼント
好き
うざい
合わない

と出てきた。
「嫌い」が真っ先に表示されるとは、何とも気の毒だ。

オートコンプリート機能とは、入力中のキーワードに関連するキーワードや、他のユーザーが検索しているキーワードなどを、検索キーワードとして使用できるものである。
オートコンプリートによる検索候補キーワード予測は、検索キーワードの人気度や新しさ、他のユーザーが過去にそのキーワードを検索した頻度などの、様々な要因に基づいているそうだ。

ちなみに、「上司 き」と入れると、

上司 キス
上司 気分屋
上司 気持ち悪い
上司 厳しい
上司 嫌われる
上司 気になる
上司 嫌われている
上司 休日 メール

と出てきた。
「キス」が最初に表示されるのは意外な気がするが、こちらもかなり辛辣でネガティブなワードが並ぶ。

それでは、「嫌い」の反対である「好き」を入れるとどうなるのだろうか?

「上司 す」と入力すると、

上司 好き
上司 ストレス
上司 好かれる
上司 好きかも
上司 スタンプ
上司 好き避け
上司 ストーカー
上司 すみません

と出てきた。
好意と嫌悪のキーワードが混在している。
そもそもこれって、相性による部分も大きいのではないか?
そんな仮説のもと、今度は「上司 相性」と検索してみたくなった。

「上司 あ」と入力すると、

上司 合わない
上司 挨拶
上司 挨拶 メール
上司 相性
上司 アスペルガー
上司 頭おかしい
上司 謝る
上司 頭悪い

と出てきた。

苦手な人や合わない人は、自分を成長させてくれるために、神様がキャスティングされているのだ。
そう言い聞かせ、「上司 成長」で検索してみようと思い、「上司 せ」と入れると

上司 先輩
上司 餞別
上司 説教
上司 生理的に無理
上司 接し方
上司 説得
上司 責任
上司 正論

と出てきた。

今まさに部下への指導、接し方で悩んでいる管理職の人はもちろん。
一度でも部下を持ったことのある人は、この「上司 + ○○」での検索を続けると、メンタルがやられて病んでしまうかもしれない。
いや、自分はそんなにメンタルが弱くはない。
そう思う方は、試しに「上司 + ○○」での検索を、五十音順でやってみてはどうだろうか。
先ほど、「あ」は既に検索したので、「い」から続きを検索してみよう。

「上司 い」

異動 メッセージ
意味
嫌がらせ
異動
イライラ
依頼 メール
嫌味
威圧的

「異動 メッセージ」は、上司の異動が決まった時、部署内で何か寄せ書きメッセージでも送ろうとして検索したのだろうか。
「依頼 メール」は、上司に依頼をする際の文面で、敬語や言い回しの検索をしたのだろうと推測できる。
他は、上司に対しての悩んでいるのだろうと気の毒になる。

「上司 う」

うざい
内祝い
浮気
うるさい
訴える
うつ
裏切り
嘘つき

「内祝い」は、結婚や出産、新築等での内祝いの品選びで検索したのだろう。
それ以外は、穏やかでないキーワードが並ぶ。

「上司 え」

英語
栄転 メッセージ
縁切り
えこひいき
絵文字
偉そう
英語 メール
選べない

なるほど、外国人の上司が登場というケースもあるのだろう。
私は経験がないが、国籍が違えば戸惑いや悩みも多くなるに違いない。

「上司 お」

お礼 メール
贈り物
お礼 手紙
怒られる
お願い メール
お大事に
お気をつけて
怒らせた

お礼やお見舞いのやり取りだけでなく、「怒り」にまつわる出来事がいろいろあったのだろう。怒らせてしまった上司に対して、自分はどうしたら良いかを検索したのかもしれない。

「上司 か」

カラオケ
かっこいい
感謝
かわいい
会話
確認 メール
片思い
関係

「か」まで検索してきて、ようやくネガティブなキーワードが表示されなくなった。
そして、急に社内恋愛の香りが漂ってくるようなキーワードが並び始めた。
キリも無いので、このあたりでやめておこうと思う。
五十音を全部やってみたいという方は、くれぐれもメンタルをやられない程度に、どうかご注意を。

それにしても、上司に関するネガティブなキーワードが想像以上にたくさん出てきたことに、私は衝撃を受けた。
正直、こんなに多いとは思わなかった。
私は今、正社員として勤めておらず、フリーランス的に複数の職場を掛け持ちしている。
各職場で「上司」にあたる人は、一応存在している。
しかし、そこまでネガティブなキーワードで検索したいと思うようなことはない。

過去に一般的なOLとして会社勤めをしていた時のことを思い返しても、一部の例外を除いて、直属の上司にはかなり恵まれてきた方だと思う。
何度か転職を経験しているが、短期アルバイトでお世話になった職場も含め、在職当時はもちろんのこと、直属の上司の大半とは、退職後もずっと年賀状その他での交流が続いている。
今でも、何か嬉しい成果があったら、折に触れて元上司に報告したくなる。
実際に報告すると、とても喜んでもらえるし、もっと良い報告ができるようになりたいと心から思えるのだ。
ブラック企業だとか、パワハラだとか、そういったニュースが珍しくない今、本当に幸せなことだと思う。

私の上司運の良さは、人生初のアルバイト先の社長ご夫妻が、社員をとても大切にされる方だったことに始まる。
当時まだ高校3年生だった私は、京都の中央市場近くにあるお惣菜屋さんで、年末限定のおせち料理のパック詰めとラベル貼りの仕事をさせてもらっていた。
作業場の床はコンクリートで、水をたくさん使う仕事なので、長靴を履いていても足元は冷たかったし、手にはあかぎれができた。
決して楽な仕事ではなかった。華やかさのカケラもない、地味な仕事だった。
それでも、辛いとは思わなかった。

社員さんは親切な人ばかりで、意地悪をするような人は誰もいなかった。
お昼休みにはいつも、大きなやかんにお茶、給食を思い出すような大鍋には、お味噌汁を用意してくださっていた。
社長の奥さんのお心遣いに、冷えた手足だけでなく、心まで温まった。
それだけではない。
社長は、私が終業式で午後からしか出勤できなかった日も、学校優先だから気にしなくていいとおっしゃり、午前中の分は公休扱いでお給料を付けてくださっていた。
そして、午後から出勤した私にも、昼休みに皆でクリスマスのおやつだとケーキまで残しておいてくださっていた。
本当に、何から何まで従業員を大切にされるご夫妻だった。

私がこのお惣菜屋さんでアルバイトをした目的は、自費出版の費用を稼ぐためだった。
ノートに書きためた、片思いをテーマにした短歌を形にしたかったのだ。
年が明け、2月に念願の歌集が完成した。
私は社長に読んでいただきたくて、感謝の気持ちを込めて1冊お送りした。
社長は、

「アルバイト代をそのような形で使ってもらえて、大変嬉しく思います」

という言葉に加え、歌集の感想も添えて、丁寧なお返事をくださった。

面接の時と、最終日にお給料を受け取るために入らせてもらった社長室には、相田みつをさんの詩がたくさん飾ってあったことを、今でもよく覚えている。
私が言うのもおこがましいが、単に趣味で飾っておられるのではなく、常に目に触れる場所に飾ることで、社長ご夫妻が日々実践する意識を高めておられるように思えた。

私の父は、私が小学校2年生の時に脱サラし、電気管理技術者として個人事業を営んでいた。
父の口癖は、

「なんで、こんなこともわからへんのや?」
「一を言うたら、十わかれ!」

この2つが圧倒的に多かった。
父が亡くなるまでに、この言葉を何度浴びせられたことだろう。
父は、いつも言葉足らずで、人に説明をするのが下手だった。
母と私は、父に怒鳴られながらも、質問力を磨き続けてミスを減らすことに努めた。

「そんなに優秀な人間だったら、君の下で黙っておとなしく働いているはずがないだろう。なぁ、そう思わんかね?」

昔、父がまだサラリーマンだった時代、部下を無能呼ばわりして、上司から叱責されたことがあったらしい。
気が短くて、自分にも他人にも厳しかった父だが、この時ばかりは相当堪えたそうだ。
珍しく機嫌の良かったある日、父はそんな話をしてくれたことがあった。

自分の周りに集まってくる人達は、自分の真の姿を教えてくれる。
  花には蝶
  うんこにはハエ
自分の周りにハエばかり集まってくると言ってぼやくのは、
自分がうんこだと言っているのと同じだ。
 蝶に集まってきてほしければ、自分が花でなければならない。

これは、お好み焼きの「千房」の創業者・中井政嗣氏が、講演会で話されていた言葉だ。
暴言・パワハラ問題の議員に、ぜひ聞かせてあげたい。

私は2008年10月から約5年半、ショップオーナーとして店舗運営に携わった。
アルバイトスタッフを雇用する立場になった私は、お惣菜屋さんの社長ご夫妻の姿勢をお手本にしようと心掛けていたつもりだ。
しかし、ド素人がいきなりショップオーナーになって悪戦苦闘する日々の中、私は納品が約束の日に間に合わないことに怒り狂って、暴言を吐いてしまったことがある。
週末のセール企画に合わせて、商品が届いたらその商品を陳列するつもりで、前日の夜に棚を空けて準備していたのだ。
その商品である天然石の取り扱いをされていたのが、今でも塾で一緒に学んでいる仲間であり、事業家としての先輩であるWさんだ。
Wさんから、税関で荷物が止まってしまい、商品の納品が間に合わない旨の連絡を受けた私は、

「どうしてくれるの? うちの店を潰す気?」

と捲し立てた。
ガランと空いた棚を見れば見るほど、怒りが湧いてきて止められなかった。
棚をそのままにしておくわけにもいかず、苦肉の策として、先に届いていたギフトラッピング用の小箱を大量に並べ、アロマキャンドルなど他の雑貨を移動させて、どうにか見た目を整えようと考えたのだ。

Wさんは、店舗に駆けつけてその作業を手伝って下さった。
小箱を必死で並べる私の姿は、殺気立っていたらしい。
そして、怒りが収まらない私に、Wさんは何度も謝った後、信じられない言葉をかけてくださった。

「納品が遅れたのは本当に申し訳ないです。
僕は何を言われても構いません。
どんなことを言われても仕方がない立場だとわかっています。
それで気が済むならいくらでも聞きますし、受け止めます。
でも、自分の発した言葉は、相手だけでなく、自分も同時に浴びてしまいます。
その言葉が刺さって、自分が傷つきますよ。
僕は棚よりも、そのことの方がとても心配です」

事業家としての先輩だけれど、私より5歳も年下なのに、まるで神様みたいな言葉だと思った。
Wさんに激しく怒り、暴言を吐いて、苛立ちを200%全開にして店舗に立っている自分が、とても恥ずかしく、情けなくなった。

さんざん責め立てられて、謝り続けて、最低限の事情説明を除いて一切の弁解もせず。
目の前で怒り狂っている私を気遣い、これ以上、私が負のスパイラルに嵌り、エネルギーロスをしないよう、救ってくださったのだ。

Wさんのこの言葉は、私がこれまでの人生で最もハッとさせられた言葉だ。
最悪とも言える状況で、自己弁解ではなく、こんなにも相手のことを思いやれるなんて、Wさんはどこまでも素晴らしい人格の持ち主なのだと思う。

言葉は、コミュニケーションの大切な手段だ。
もちろん、相手に伝えるために発しているのだが、届く先は相手だけではない。
私はそのことを、Wさんから教えていただいた。

例の議員が秘書に浴びせたとされる、凄まじい暴言の数々は、決して許されるものではない。
しかし、当の議員自身も、常日頃から自分の発した暴言を、自らも浴び続けていることで、さらに負のスパイラルに嵌り、エネルギーロスをしている面があるのかもしれない。

飲んだ水、食べたものが、血や肉や骨となるように。
日々の生活の中で何気なく浴びている言葉、発している言葉が、人の心を形成するのだろう。

草花に水をやるように、人間には言葉のシャワーが必要だ。
Wさんの域に達するにはまだまだ全然だが、私も少しでも近づけるよう、自分が発する言葉を大切に、そして丁寧に扱える人でありたいと思う。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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