メディアグランプリ

空回りしたっていいんじゃない?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森山寛昭(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
「ちょっと待ったあ!」
とんねるずの番組ではない。私の心の叫びだった。だがもう止まらない!
ズルッ! ガリガリガリガリッ!
私は思いっきり転倒して、左半身を道路に叩きつけた。

冬のある日、私は誘惑に勝てず出勤ギリギリまで寝て、愛用の自転車を飛ばす羽目になった。
その日は福岡には珍しい積雪で、道路は真っ白。
スリップするリスクは容易に予測できたのに慢心していた。
で、坂を下るときに案の定滑った。
しかも、ただのスリップではない。
チェーンが外れてまったく制御がきかず、アクシデントに見舞われたのだ。
幸い大怪我には至らなかった。オーストリッチのコートもなんとか無事だ。
だが、冬物スラックスは左膝から下が大きく裂けて、見るも無残。
膝にも青アザができている。
あまりの痛みと恥ずかしさで、もう声をあげて笑うしかなかった。人様が見ている前でだ。
人間、あんまり痛いとなぜか笑ってしまう。
見かねた通行人の女性が、
「大丈夫ですか?」
と声をかけてくれたのだが、私は、
「大丈夫です。わははは」
と応じたものだから、呆れられた。
膝を破いたまま職場に行った私は、上司の許しを得て、即自宅に着替えに帰った。
実は、今から5か月前の3月にも、これと同じようなことを私はやらかしたのだ。

そのときも予兆はあった。
相変わらず同じ自転車でチェーンは緩んでおり、これを締めてもらおうとしぶしぶ大手の自転車販売店に向かっている途中だった。
快調に自転車は走ってくれていると思っていた。
が、そんな私を翻弄するように、バキッ! と音がしてチェーンは外れた。
まずい!
なぜなら目の前の信号は黄色。
速度を上げてすり抜けることなど当然できず、減速しようと左のブレーキハンドルを握ると……。
忘れてた! 最近ブレーキのワイヤーが切れてたんだ。
このままだと車の往来が始まった車道に突っ込んでしまう。
私は即断して右のブレーキハンドルを握り、前輪が止まってウィリーしかかる自転車から飛び降り、車体を左に傾けて引っ張り倒した。
受け身なら慣れている(慣れるな!)
私はなんとも無様な格好で転がったのだが、このときも幸い、大怪我はなかった。
今回は、ジーパンがサンドウォッシュにかけたように味が出ただけで済んだが、その中身といえば、左膝から下が、まるで毛をむしりたての鶏手羽先のようだった。
やっぱりあの冬のように、猛烈な膝の痛みにケタケタ笑うしかなかった。遠巻きに見ている通行人のことなどどうでもよかった。

どちらの事故も原因は明らかだ。
普段から使い込んでいるならメンテナンスをしっかりしなければいけないのに、それをやらなかったからだ。愛用とは名ばかりで、ぼろ雑巾のように自転車を扱っていた。
油もささず、タイヤの空気も入れず、修理屋でチェーンを締めてもらうこともせず。

そんな愛用? の自転車と同じように、私は自分の身体を扱っていたのである。
仕事で精神的にくたびれても、これといった息抜きもせず、自分の手に余る大事なときには他人のアドバイスを求めようともしなかった。
それが少し前の自分。
そりゃあ、壊れる。
面倒をいとわず、自分の現状を把握していたらよかったのに、ただ闇雲になんとかしたいと焦る心ばかりがペダルをこがせた。
結果、心とは裏腹に身体はくたびれていて、上司の心ない扱いがとどめの一撃となり、私は神経障害をぶり返した。
さあ、どうする?
残念ながら、自転車なら買い替えればよい。でも、自分の身体は買い替えられないのだ。
だましだまし、使うしか方法はない。
幸い、うつ病などの大事には至っていない。つくづく、自分の悪運の強さは健在だ。
よし、直そう。
自分の身体をメンテナンスするために、私は身体を福岡天狼院に運んで行った。

デッキテーブルでコーヒーを飲みつつ向かいの公園を眺めていると、油を差したように冷静に物事が考えられるようになる。
読書会や部活に参加していると、潰れたタイヤに空気を注ぎ込むように、いろんな人の知恵や知識が入ってくる。
ライティングゼミの課題でたまったものを吐き出すと、厳しい添削結果が返ってきて、緩んでいたチェーンがギュッと締められたようになる。
環境を少し変えただけで、こんなに違うのか。面倒がらずに身体を持って行ってよかった。
私が自分自身を空回りさせていなかったら、こんなことにはならなかったけど。

でも今は、
「空回りしたっていいんじゃない?」
そう感じるのである。
将来のことやら対人関係のことで思い悩んで、変な義務感やら使命感で疲れて身体を壊したから、以前の自分が「空回りしていた」とわかったのだし、些細なきっかけで環境を変えられたおかげで、「空回りしていた」自分を次のステップに持っていこうとできているからである。
こうなると、以前の自分がかわいらしく思えてくる。昔も今も同じ自分の身体なのだけれど。
なんなら今だと、改造して変速ギアでもつけられそうな勢いである。

そうは言いつつ、40年以上だましてこき使った身体のメンテナンスは一朝一夕で直るものではない。
私は1週間のうち最低3日、福岡天狼院に通って自分のメンテに費やしている。
「もう来なくて大丈夫です!」
と書店の女性スタッフ陣に言われないようにはしたいものである。

そういえば、3月のあの日に購入した新品の自転車もそろそろメンテナンス時期だな。今度は大事にしなきゃ。自転車屋で定期メンテナンスに持っていったら、また寄ろう。

 
 
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2017-07-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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