メディアグランプリ

将来の夢を聞かれるのがイヤだった5歳の私が七夕の短冊に書いたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:チオリ(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
子供の頃、七夕がキライだった。
なぜなら、短冊に「将来の夢」を書かされたから。
何になりたいのか、なんてよくわからない。仕事なんてそんなに知らないし。
 
あれは確か5歳の頃だった。保育園でその時はきた。
「この短冊に、将来、自分がなりたいものをかいてくださーい」
と先生に言われたが、何を書いていいのか全く浮かばない私は、周りの友達がなんて書いているのかを聞いてみた。
すると一人の女の子が言った。
「女はピアノの先生になるしかないんだよ」
なぜその子がそう思ったのかは知らないが、何も知らない私は「そんなものか」と思って一応それを書いてみた。そして先生が短冊を回収しにくるのを待った。
 
時間が経つにつれ、私はなんだかモヤモヤして落ち着かなくなった。
「本当にピアノの先生になったらどうしよう」と思ったのだ。
 
なりたいかどうかわからないのに、本当にそうなってしまったら取り返しがつかない。そんな気がして怖くなった。そして私は慌てて書き直した。
 
「魔法使い」と。
 
これなら将来なりたいものができた時に何にでもなれる。
自分の短冊が回収され、笹への飾り付けが進む様子を見ていて、「これだったら天に届いても大丈夫」と心底ほっとしたのをはっきりと覚えている。
 
その後も進学や就職活動などの自分の進む道を決めるとき、私は大いに迷った。
昔から飛びぬけて得意な科目などなかった。好奇心は旺盛なのでいろいろと興味は持つのだが、飽き性なので続かない。
 
そんな私の初めての仕事は企業調査の調査員。
会社の概要、取引先、資産内容、財務状態などの信用調査を行い、レポートを作成するという仕事だった。
これなら色々な会社が見られる。
つまり、これもある意味一つの方向に絞れなかった、とも言える。
ここで私はたくさんの個性豊かな会社、経営者に出会った。いろいろな道を究めている人たちを見るうちに、ムクムクとこんな気持ちが湧いてきた。
「私も何か一つの技術や知識をちゃんと深めたい」
 
そうして「一つの事」に絞りたい気持ちは高まったものの、「何が」というのが浮かばない。
よく就職活動では自分の棚卸し、というのをやるが、それをやっても「ああいう方向もあるかも、こういう方向もあるかも」みたいな感じでどうも決め手に欠ける。
その中でも比較的ずっと好きだったこと。そんなに上手くもないし、褒められたこともないけど、
何とか絞り出したのが「グラフィックデザイン」だった。
 
グラフィックデザインというと一見華やかな印象があるかもしれないが、プレゼンなどの一部の業務を除いて非常に地味な仕事だ。
依頼主の話を聞き、調べ物をし、案をたくさん作り、検討を重ねる。
グループでアイディアを出し合ったり、自分の作ったもの対する意見を言い合ったりするが、基本的には一人で机の前でうんうんうなっている時間がとても長い。
 
感覚だけでできる仕事でもない。理論だけでもない。極めてない私が言うのだからあまり説得力はないが、おそらくそういうものだ。
過去の素晴らしいデザインやアイディアなどをインプットし、組み合わせたり視点を変えて、新しいものを生み出す。
その時に単純に2倍になる人、それ以上に何倍にもぶわーっと良くなる人がいる。
(もちろんダメにしちゃう場合もある)
私は何倍にもぶわーなんてことは全然なく、結構しんどいなあと思いながらやっていた。
 
ある時、隣の席の若い男の子とおしゃべりをしながら仕事をしていた。
某、有名広告会社のすごい広告を見て
「どうしてこういうの出来るんだろう、すごいよね~、訳がわからない」
と私が言うと、その彼が
「あいつら、魔法使いだから」
と言った。
 
「魔法使い!」
 
そうか、とんでもない技術を持つって魔法使いなんだ。
私が小さいころになりたいと思っていた魔法使いは、もしこの道を究めてすごい力を付けたらなれたんだ。私が選んだ道はあながち間違ってなかった。力がつかなかっただけだったのだ。
 
そして魔法使いになれなかった私は今、転職という岐路にたち
一つの道を究めたい自分と、色々な世界をみたい気持ちに揺れている。
 
「魔法使い」
 
何か驚きを伴う価値というか、心からすごいと人を思わせるような事、それを魔法なのかなと思う。
そうして考えてみて、はっと気が付いた。
もしかしたら「ピアノの先生」であっても、魔法使いもいるかも知れない。いるに違いない。
 
ということは、どの道を選んだとしても魔法使いになれる可能性があるということだったのだ。
突拍子もない夢を書いた5歳の私は、結構絶妙なことを言っていたのだなあと思う。
 
子供の頃の想定とは違ったけれど、その頃の夢と今を考え合わせてみると、面白いかもしれない。
 
 
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2017-08-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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