メディアグランプリ

理想の暮らし


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:諸藤里香(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
家にいることが好きだ。
用事がなければ、外に出なくても良い。
『外に出かけたい、出かけなくちゃ』という欲求があまりない。
 
今の家は、自分の理想の住まいなのだ。
窓から見える景色もバルコニーで育てている植物も何もないリビングもすべてが自分の好きでできている。
たくさんのモデルルームを見て、いろいろ迷って悩んで決めた住まい。
 
引越をする時にたくさんのものを捨てた。
これは、自分の暮らしに必要ないなというものはどんどん切り捨てた。
食器も家電も本も服も、スペース的に無理なこともあり、多数のものとさよならした。
心も痛んだし、これがなくて暮らせるか? とも思ったけど、なければないで、生活できるのが人間なのだ。
代用できるものはいくらでもある。
 
新しい暮らしに合うように空間を整えた。
ひとつひとつ吟味して、本当に生活するために必要なのか、これはあの空間にあったらどうなのかを考えて購入した。
直感で買えるものもあったし、悩んで悩んで決めたものもあった。
悩んでいる間に誰かの手に渡ったら、それはそういうご縁だったんだと思えた。
 
家は、私たち家族のセレクトショップなのだ。
自分達の目で、自分達の暮らしに合う本当に好きなものを探す。
感覚を研ぎ澄ませる。
早急に必要なものでなければ、妥協はしない。
私達が心地良い暮らしができるように、気に入るものを探す。
私達の審美眼を信じる。
 
雑貨屋さんで見つけた鳥のライトは、灯りをともすと部屋の中に影がうつる。
日常的に過ごす空間ではない場所にと選んだ。
子供の頃に家にいた文鳥やインコを思い出す。
 
お気に入りの食器は、どんなお料理を盛り付けてもおいしそうに見える。
作家ものでもそうでなくても。
青菜のおひたしも天ぷらもシチューも海老チリも、何でも受け入れてくれる。
 
迷いに迷って買った急須は、ぽってりとした形で質感も美しい。
作家さんの個展のDMを見た時に『これ素敵ー』と思ったものをたくさんの作品の中から結果的に選んでいた。
出会った時に一度迷って家に帰った。
でも眠れない位気になって、翌日もう一度出向いた。
お店で、『あっいたいたー』と思った時の感激と言ったらない。
これで入れたお茶は、とてもおいしい。
 
毎日使うタオルは、フカフカで洗っても洗ってもくたっとせず、いつも気持ち良く使える。
干している時も棚に並んでいる時も美しい。
 
友達から引越祝いにいただいたお鍋は、何を作ってもおいしくできて、ごはんはこれで炊いている。
 
バルコニーで育てているバラは、カタログや本を見て慎重に決めた。
季節になるとたくさんの花を咲かせてくれて、それはそれは美しい。
祖母や父が育てていたバラのことを思い出す。
前の家から持ってきたユスラウメやモモも元気に成長している。
良い季節の時には、テーブルを出してブランチやお茶をするのも気持ち良い。
 
いただいたジャムの瓶やお菓子の箱や缶のパッケージがかわいいから花を飾ったり、お茶の缶が気に入ったので、中身が終わっても詰め替えて使ったり。
 
冷蔵庫の中には、お気に入りの調味料や家で漬けた梅干しや糠漬けがある。
 
お風呂で使う入浴剤は、気分に合わせていろいろ揃えてある。
 
お布団は、ふかふかでいつも疲れを取ってくれる。
シーツもいつもきれいで気持ち良い。
 
そんな風に自分達で選んだものの中で、暮らすことがとても楽しい。
休日には、ピザや肉まんやシュウマイを生地から作ったり、シフォンケーキやスコーンやパンを焼いたり、平日手の回らない家のあちこちを掃除したり、洗濯したり、アイロンをかけたり、本を読んだり、音楽を聞いたり、友達を呼んで、ゆっくり話をしたり、室礼を楽しんだり。
 
両親や祖父母も自分の好きなものを時間をかけて選び、大切に使う人たちだった。
父は抹茶茶碗を、母は花器を、祖父は帽子を、祖母は口当たりの良い薄いお茶碗を。
買い物に付き合うと、「今日は良いわ」と言っていることがよくあった。
あの人たちの暮らしは、凛としていた。
 
引越をしてから、外でお茶をすることがほとんどなくなった。
家には、旅先や近所で求めたおいしい中国茶も緑茶も紅茶もコーヒーもお茶請けもあって、外でお茶をする理由がなくなってしまった。
家族と買い物に出かけていても、「家帰ろうー」となる。
外には外のおいしさや楽しさがあるけど、やっぱり家が一番なのだ。
家でゆっくり過ごす時間が大切なのだ。
 
家の方がゆっくりできるしおいしいもの出すから、『うちに来ない?』といつも思っている。
もう少し涼しくなってバラが咲く頃、友達呼んで家でごはん食べよう。
 
 
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2017-09-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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